205.今日もやっぱり衝撃の事実
本日3話目の更新です。
だって、我が家の爵位も領地も、長女である私にしか継承できないって……リーナには譲ることができないって、そういう話じゃなかったっけ?
なのに、リーナに領地を譲れる方法があるの?
ちょっと本気の剣幕で私が問いかけちゃったもんだから、先生がたもちょっとびっくりしてる。
でも、リケ先生が答えてくれた。
「え、ええ、可能です。リーナさんをルーディさんの婚家の養子としてお迎えになればいいだけですから」
は、い?
「え、あの、リーナを養子に……あの、わたくしの婚家の養子ということは、姉であるわたくしが妹を養子に迎える、ということでしょうか?」
そんなことできるの?
って、私は本気で呆気にとられちゃったんだけど、リケ先生もファビー先生もむしろきょとんとうなずいてくれた。
「その通りですわ」
「ルーディさんが他家へ嫁がれれば、そこでリーナさんとはお家が分かれますから、別のお家のかたを養子としてお迎えすることになんの支障もございません」
そ、そういうもんなの?
えっと、つまり、私がヨソのお家に嫁いじゃったらもうオルデベルグ家とは別の所属になっちゃうから、別の家になっちゃったオルデベルグ家のアデルリーナを養子にしてもOKってこと?
そんでもって、その別のお家へ私が持っていった伯爵位は予備爵になってて、予備爵は養子だろうがなんだろうがその家の当主がOKって言いさえすれば継がせることができるので……リーナに伯爵位もクルゼライヒ領も譲ってあげられるってことー?
またとんでもない事実を知らされて驚愕しちゃってる私に、先生がたはやっぱりちょっと残念な子を見る目になっちゃってる気がしないでもないけど。
でも、ものすごーく重要なことだよね?
だってリーナに、私のかわいいかわいいかわいいかわいい妹に、我が家の爵位と領地を継がせてあげられる、その可能性があるだなんて!
「クルゼライヒ領のように歴史のあるご領地ですと、領主一族直系のリーナさんに継いでいただくほうが好ましいと思われますから、むしろリーナさんをルーディさんの婚家で養子にされて爵位も領地もお渡しになることを、国も推奨すると思いますわ」
「その場合、リーナさんが養子になられることでいったんオルデベルグ家のお名前は消えますが、リーナさんが爵位の継承権とご領地を受け継がれましたら、オルデベルグ家の再興が認められることはまず間違いありませんし」
ナニソレ、もうナニがどうなってんの? ではあるんだけど、でもホントに、ホンットに、リーナに爵位も領地も継がせてあげられるなら……。
いやもちろん、リーナ本人の意思は大事よ?
リーナ自身が爵位も領地もいらないっていうのなら、それはそれでいいの。
でももし、リーナが爵位や領地が欲しいって思ったとき、それを継がせてあげられる可能性があるのか、それともその可能性がゼロなのかって、めちゃくちゃ大きな違いじゃない?
今日もリケ先生とファビー先生にはたっくさん情報をいただいちゃって、正直脳内処理が追いつかないほどだけど、でも本日最大の収穫はコレよね。
アデルリーナに爵位と領地を継がせる方法がある。
ただ、そのためには、私が上位貴族家におヨメにいく必要がある、んだけど。
でもそれを思うと、私にとってリドさまって条件だけ考えれば……ホンットに条件だけで考えれば、めっちゃくちゃ優良物件ってこと?
リドさまって確かになんかこう、イロイロ思ってたのとは違う人だったけど、なんかこうちょっと曲者ではあるけど、別に悪い人じゃないよね? 私の持ってる伯爵位とクルゼライヒ領はリーナに継がせてほしいって言えば、ちゃんと聞いてくれるんじゃないかって思えるし。
それに、もし私の持ってる伯爵位をご自分の弟に継がせるとか言い出しても……その弟って、ハルトくんだからね?
いや、妹のジオちゃんっていう可能性だってあるけど、それでもジオちゃんやハルトくんなら、我が家の爵位や領地を継いでもらっても全然問題ない気がする。
おまけに、お姑さんになってくれちゃうのがレオさまだよ?
ジオちゃんハルトくんと親戚になるならリーナが大喜びするに違いないけど、レオさまも親戚、それも私のお姑さんなんてことになったら、お母さまも大喜びしてくれると思う。
私はお婿さんをもらうことしか考えてなかったけど……自分がおヨメにいくことを考えたら、リドさまって条件からしたらホンットにとんでもない優良物件だったんだ……。
それにユベールくんだって……いやもう、あんな腹黒美少年なんて面倒くさいとは思うけど、条件的にはリドさまと同じくらい良いよね?
侯爵家なんだから、私が持ってる伯爵位を予備爵にしてリーナに継がせることも可能だし、それにお姑さんがメルさまっていうのも、めちゃくちゃ心強い。お母さまもやっぱり大喜びしてくれるだろうし。
あー、うん、私としてはホントに、上位貴族家の嫡男ですでに爵位持ちのリドさまもユベールくんも、お婿さん候補にはならないからって、これっぽっちも意識してなかったんだけど……だからリケ先生もファビー先生も、私のことを残念な子を見る目で見てたのか……。
いやーでも、リドさまもユベールくんも、私にとって条件的にはとんでもなくいいお相手だって理解はできても、やっぱりそういう意識を向けるっていうのは、私にはだいぶハードルが高い気が……えーっと、どうすればいいの、コレ?
なんかもう、情報量のあまりの多さに、とりあえず一通りの理解を追いつかせるだけで私ゃいっぱいいっぱいです。
実感もナニも、まったく追いついてこないんですけど。
なのに、そうやってすっかり途方に暮れかかってた私に、先生がたは最後の爆弾を投げこんできちゃった。
「でもルーディさんにその気がお有りであれば、嫁ぎ先としてこれ以上ないというお相手がいらっしゃいますよね」
「えっ?」
あの、リドさまとユベールくんのほかに?
きょとんとしちゃった私の前で、リケ先生とファビー先生が目配せしてる。
「ええもう、ホーフェンベルツ侯爵さまはもとより、ヴェントリー伯爵さまでも太刀打ちできないお相手が」
誰、ソレ? そんな人、いる?
私は頭の上にクエスチョンマークを飛ばしてるのに、先生お2人はなんかもう本当に楽しそうに言い合ってるんですけど?
「お歳は少々離れておられますけれど、レオポルディーネさまと宰相閣下も14歳差でいらっしゃいますでしょう?」
ん?
「それにルーディさんであれば、国王陛下も王妃殿下もご反対はなさらないはずですわ」
んん?
「それどころか、ルーディさんが閣下のお相手なら、とてもお喜びになられるのでは?」
「ねえ?」
んんんんんー?
ねえ、って……ねえ、ってそんな、お2人でやたら嬉しそうに声をそろえておっしゃってますけど……あの、えっと、それってもしかして……?
「まさかここへきて、あの『不落の公爵閣下』を陥落させたご令嬢が現れるとは、陛下も妃殿下もお考えにはなかったことでしょうから」
「これまでずっと、閣下ご本人がすべてのご縁談をはねつけていらっしゃったのでしょう? 社交の上では、どのご令嬢にもそつなくご対応しておられましたけれどね」
「ええもう、公爵閣下が、特定のご令嬢にこれほど肩入れされるというのは、本当に初めてのことですもの」
「噂では、跡継ぎに甥御さまのハルトさんかギュスタリーク王子殿下をご養子にお迎えになり、ご自身はもうご結婚されることがないのだろうと言われておりましたけれど」
「本当に、まさかの急展開ですこと!」
ち、ちょ、ちょま、ちょっと待ってー!
いや、確かに、あのおっさん、じゃなくて、エクシュタイン公爵さまも独身だけど!
だけどホンットに、本気で、マジで、先生がたはあの公爵さまを攻略対象、じゃなくて、私のお婿さん候補、でもなくて、えっと、私の嫁ぎ先候補だと、思ってらっしゃるの?
あの、ホントに?
だって公爵さまだよ?
いやもう、そんなこと夢にも思ってなかったわよ!
そりゃ確かに、私はお婿さんをもらうしかないって思い込んでたから……すでに公爵家の当主になってる人はその対象にはならないって判断しちゃうの、当然だよね?
てか、そんなこと以前に、あの公爵さまがそういう対象になるってこと自体、私にとっては青天の霹靂状態なんですけど?
それが、まさかの急展開? 『不落の公爵閣下』を陥落させた?
いったい何の話でしょうかああああー!





