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191.意外な人物の暗躍

みなさま新年あけましておめでとうございます。

って思いっきり出遅れて申し訳ございません!

またずいぶん間が空いてしまいましたが、本日4話更新します。

まず1話目です。

 いきなりとんでもない事実を突きつけられて、私は完全に脳内大絶叫状態だわよ。

 でも、私とはまた違った意味で衝撃を受けているヒトたちがいました。

「ま、まさか……お、王太子殿下……?」

「いや、でも、公爵閣下は叔父君であらせられるのだから……」

「本当にゲルトルードお嬢さまが、王太子殿下とお踊りになられると……?」

 ものすごく動揺しながらざわついてるツェルニック商会ご一行。

 そこに、公爵閣下が重々しく声をかけられました。

「そういうことだ。ツェルニック商会には、それにふさわしい衣装を用意してもらわねばならぬ」


「い、命に代えましてもー!」

 叫ぶように答えたロベルト兄以下、ツェルニック商会一行がいっせいにひれ伏す。

「我らツェルニック商会、命に代えましても必ずや、ご満足いただけるお衣裳をご用意させていただきます!」

 うわー、通常運転のはずのツェルニック商会が言ってることが、通常運転に聞こえないー。

 だって王太子殿下よ? 夜会で王太子殿下と踊るご令嬢の衣装を用意するって、そりゃもう命に代えましても、って冗談抜きでそういうレベルの話よね?

 って、その踊るご令嬢って、私のことなんだけどー!


「うむ、私の衣装も近日中に届けるので、そちらもよろしく頼む」

 満足げに公爵さまがうなずいて、ツェルニック商会一行はさらに深く頭を下げてる。

「これほどお早くご用意いただけるとは! ご配慮、心より感謝申し上げます!」

「公爵閣下のお衣裳も、我らの命に代えましても必ずやご満足いただけるものに仕上げさせていただきます!」

「閣下におかれましては、お衣裳の意匠に関しましてご要望などございましたら、ぜひお聞かせ願いたく存じます!」


 なんかもう、またもやすっかり遠い目になっちゃった私の前で、公爵さまとツェルニック商会一行がものすごく熱心にナニか話し合ってる。

 そう言えば、公爵さまの衣装についてお好みをうかがえればとか言ってたもんね。

 ふつうに考えて、ツェルニック商会みたいに若い頭取の商会が、最高位貴族である公爵さまの衣装を手掛けるなんてまずないだろうしねえ。だからもう、気合が入りまくっちゃうのはわかる。わかるんだけど。

 やっぱり私、公爵さまとおソロの衣装で踊るのか…………。


「……ルート嬢? ゲルトルード嬢?」

「えっ、あっ、はい!」

 いきなり公爵さまに至近距離から顔をのぞき込まれて、私は思わずのけぞっちゃった。

 いや、いきなりじゃなくて、すでに何回も呼ばれてたっぽい。私、だーいぶ遠い目になっちゃってたからね……。

「聞いていなかったのか? きみの靴を作る話だぞ?」

「えっ、あの、靴、ですか?」

 公爵さまの眉間のシワが深いです。


「そうだ、ダンス用の靴を早急に用意する必要があるだろう。早めに足を慣らしておかぬと、当日足を傷めてしまう恐れがある」

「は、はい……」

 あー、うん、靴擦れした足でさらに悲惨なダンスにはしたくないです。

 うなずく私に、公爵さまが続ける。

「ツェルニック商会が、知り合いの靴職人を紹介すると言ってくれている。きみの都合はどうだろうか?」

「あ、えっと、明日はアデルリーナの子どものお茶会があります。その後、呼び寄せた侍女が我が家に到着する予定ですので……」

「では、明後日以降だな」


 って、公爵さまとツェルニック商会でさくさくと予定を組んでくれちゃってます。

 なんだかなあ、学院が再開してもやっぱりなんだかんだ、予定がぎっしりな気が……試食会をしなくてよくなったのは本当に助かるんだけど、おとなり領地のご令嬢を招いてのお茶会を開催することになっちゃったし、ダンスの特訓も……あ、乗馬の練習もあった気がする。

 はあ……この状況で私、レシピ書いたり唐揚げ試作したりする時間なんて、捻出できるんでしょうか……。


 それに、ツェルニック商会もとんでもない状態になっちゃったんじゃない?

 それでなくてもコード刺繍の試作で大変だろうに、私の衣装のお直しもまだ何着もあるし、商会紋のデザインも丸投げしちゃったし、公爵さまの衣装でしょ? 私の夜会用ドレスにいたっては、王太子殿下と並んでも見劣りしないようなドレスにしなきゃいけないわけだし。

 いや、ドレスはね、見劣りしないようにって、そのドレスの中身については考えたくないんだけどね……。


 うーん、でも、こればっかりは絶対お受けするわけにはいかないわ。

 どう考えても無理だよ、私が王太子殿下と踊るなんて。それも、場合によってはものすごく早い順番で踊ることになるんじゃ……?

 私は最初に、保護者である公爵さまと踊るんだよね? それもワルツ? その後すぐ、王太子殿下と踊れ、なんて恐ろしい事態にはならないよ、ね? いや、でも……。


 どうやって王太子殿下とのダンスを回避すればいいのか、私が必死に考えている間に、公爵さまはツェルニック商会の仕事の進行具合を確認してる。

 抱え込み過ぎて手が回らなくなってるんじゃないかって懸念は、やっぱり公爵さまも感じていたようなんだけど、ロベルト兄が笑顔で答えた。

「はい、ありがたいことにエグムンドさんが、新たな工房をご準備くださっているのです」

 顔を向けられたエグムンドさんも、にこやかに答えてるし。

「この商会店舗の近くにいい出物があったものですから、すぐに押さえました。ツェルニック商会さんの工房として使用してもらうには、手ごろな物件だと存じます。それに、必要な予算につきましても潤沢に組ませていただいておりますので」

「そうか。それは重畳」

 公爵さまも満足そうだ。「では、針子の増員も至急必要だな」


「ありがとうございます。針子に関しましても、順調にございます」

 すぐに答えたロベルト兄が、針子頭のベルタお母さんを促す。

 ベルタお母さんも笑顔で答えた。

「さようにございます、公爵さま。本当にありがたいことに、クルゼライヒ伯爵家の侍女でいらっしゃいますシエラさんから、何人もお針子をご紹介いただいておりまして」


 シエラ!

 えええええ、シエラってばいつの間に!


「すでに4人、採用いたしました。みな本当に腕のいいお針子で、まだコード刺繍のことは伏せておりますが、間違いなく即戦力になってくれると存じます」

 ベルタ母の言葉を受けて、エグムンドさんも言い出した。

「お針子たちには、ツェルニック商会さんの新しい工房に住み込んでもらいます。もちろん、口外法度の魔術式契約を結んでもらいますので」

「はい、それについてもお針子たちに説明しております。みな、納得の上で我が商会に入会してくれました」


 なんかもう、着々と準備は進んでるっぽい。

 でもシエラってば、本当にいつの間にそんな暗躍を!

 そりゃシエラは元お針子なんだから、横のつながりもあってお針子仲間に声をかけやすかったんだろうとは思うけど。


 なんて思ってたら、なんかまたベルタ母が言い出した。

「それに新しく採用したお針子たちは、シエラさんからゲルトルードお嬢さまがどれほど素晴らしいおかたであるのか詳しく聞いていると言っておりまして。みな、ゲルトルードお嬢さまのもとで仕事ができることを本当に喜んでおります」

 うぉーい!

 なんですか、ソレは? シエラってば、ホントにいったいどんな暗躍してるのよ!


 ロベルト兄もリヒャルト弟も、満面の笑みだ。

「我らツェルニック商会、ゲルトルード商会専属として、ゲルトルードお嬢さまが考案される品々が世を席巻するその一端を担わせていただけることを、心から誇りに思っております。新しいお針子たちにも、その気持ちはすでに伝わっていると存じます」

 いや、だから! 世を席巻するとか! そんなことあり得ないから!

 なんでこう、私の実像とツェルニック商会の通常運転がこんなにかけ離れちゃってるの?


 って、私がすごく焦ってるのに、エグムンドさんまでとってもイイ笑顔で言ってくれちゃう。

「そうですか、新しいお針子さんたちの士気も高いということですね。本当に期待できそうです。魔術式契約書は大至急ご用意しますので、1日も早くコード刺繍に取り組んでもらいましょう」

「はい、よろしくお願い申し上げます!」

 そうして、ツェルニック商会一行はなんだか意気揚々という感じで退出していったのでした。

 ホントになんであんなにパワーあるんだろ、あのヒトたち……。


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― 新着の感想 ―
人の分類の仕方は色々あるけど、その一つに、課題や困難に直面した場合、それをどう解決するか?と考えるタイプと、それをやらずに済ますにはどうるか?と言い訳を考えるタイプ。
[一言] 王子様とのダンスを回避したら絶対に面倒な事になるから、無難に事を納めたいなら踊るべきよね。 踊らなかったら、王家との隔意があるとか不敬とか嫌われてるとかで変な噂を立てられたり侮られたり付け…
[一言]  もう、父親の名前は『クズマ』とか『ゲスハルト』とか『カスデゥス』でいい。ルーディたちが苦労しているのは全て奴のせいなんだから。<教育放棄
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