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185.新メンバー決定

本日2話目の更新です。

 すぐにその商会員希望者が、クラウスに連れられて入室してきた。

 すらりと背の高い青年で、身なりもかなりいい。歳は、クラウスよりひとつふたつ上かな? 確かどこかの商家の次男坊だとか、ヒューバルトさんが言ってたっけ。

 でもね……なんかこう、なんて言うのかこう、全体の雰囲気がね、チャラいんですけど。


 いやもう、この世界にもこういう、いかにもチャラそうな雰囲気の男子がいるんだ? って、逆に感動しちゃったかも。

 いやいや、そういうイメージを私が抱いちゃったってだけで、中身が本当にチャラいかどうかなんてわかんないけどね。でも、その、茶髪のウェービーなワンレンがね、襟足長めにして後ろでひとつにまとめてるのにわざと顔の横にちょっと髪を落としてるっぽい感じのトコとかね、なんかこう雰囲気がね? いやまあ、イケメンとしてカウントしてOKなルックスではあるんだけどね?


 それに、なんかすっごく緊張して入室してきたようすだったのに、正面の奥に座ってる私を見たとたん、思いっきり『えっ?』って顔してくれたしね。

 まあ、そりゃそうだろうとは思うけど。公爵さまだの伯爵さまだのがおいでだと聞いて、やっぱりちょっとビビりながら部屋に入ってみたら、上座のでっかい一人掛けソファにこんな地味な小娘がちんまりと座ってたんだから、ねえ?


「こちらが当商会への入会を希望しております、エーリッヒ・パリヴァーです」

 エグムンドさんが紹介する声に、そのチャラそうなエーリッヒくんはハッとしたようすで、すぐさまその場に片膝を突き、頭を垂れた。

「エーリッヒ・パリヴァーと申します。本日はゲルトルード商会頭取であらせられますクルゼライヒ伯爵家ご令嬢ゲルトルード・オルデベルグさまにお目通りお許しいただきましたこと、心より御礼申し上げます」

 あら、ずいぶんしっかりした口上だわ。

「クルゼライヒ伯爵家のゲルトルード・オルデベルグです」

 私もにこやかに応える。「では早速ですが、エーリッヒさんはどういう理由で、我が商会の商会員になることを希望されているのかしら?」

 と、とりあえず志望動機なんぞを訊いてみた。


 エーリッヒくん、うつむいてて見えないけど、なんかまた『えっ?』って顔をしたっぽい。もしかしてこっちの世界じゃそういうことって質問しないのかしらね?

 それでもエーリッヒくんはソツなく答えてくれた。

「はい、私はこのクラウスと同じく商業ギルドの宝飾品部門に所属しておりましたのですが、かねてよりゲルトルードお嬢さまのお噂はうかがっておりました。非常に斬新な発想力をお持ちで、新しい商品の開発も多々されておられるとのこと、そのゲルトルードお嬢さまが自ら商会を立ち上げられたと聞き及び、ぜひとも私も参加させていただきたいと存じまして」


 うん、ソツがなさすぎるわ。

 でもまあ、これだけすらすらと言えちゃうってことは、貴族への対応にも慣れてるってことではあるよね。それにこうして私に向かって話しているってことは、場の空気をさっと読んでその場で対応できてるってことでもあるし。まあ、通常なら一番身分が高い公爵さまに、お伺いしようとしちゃうだろうからね。


 でもさ、かねてよりお噂は、とか……商業ギルドで私の、どんな噂が流れてるっていうの?

 私はちらっとクラウスを見ちゃったんだけど、そのクラウスはにこやかに笑ってる。もークラウスってば私の個人情報漏らしたりしてないよね?


 って、あー……そうだ、貴族女性が宝飾品をオークションにかけられるよう、クラウスにはいろいろ商業ギルドに掛け合ってもらったんだっけ……そりゃ、間に入ってくれたクラウスが私の名前を出してないわけがないわ。

 それに、管理職だったエグムンドさんが……この見るからに有能そうで黒幕感たっぷりのエグムンドさんが、『ゲルトルード商会』の商会員になるために商業ギルドを辞めてるんだもん、ウワサになっちゃうのはもうしょうがないか……うーん、なんだかなあ、ではあるんだけど。


 なんかクラウスはにこにこしてるし、エグムンドさんもにこやかな顔をして私を見てる。

 とりあえずこのエーリッヒくん、見た目はチャラ男っぽくても中身は信用できるってことなのよね? てか、たぶんもうウチで雇うことはほぼ決定してるんだろうなあ。


「そうですか。わたくしは貴方が耳にしたという噂通りかどうかはわかりませんけれど、それでもよろしければ我が商会で働いてもらいましょう」

 やっぱりとりあえずにこやか~に私は応じて、それから公爵さまに顔を向けた。

「よろしいでしょうか、エクシュタイン公爵さま?」

「きみがよいと思うのであれば、私に異存はない」

 澄ました顔で公爵さまが答えてくれました。ほら、一応顧問だしね、確認はしとこうと。


「では、よろしくお願いしますね、エーリッヒさん」

 ひとつうなずいて、私は顔をエーリッヒくんに向けた。

 エーリッヒくんは下げていた頭をさらに深く下げる。

「お許しいただきありがとうございます、ゲルトルードお嬢さま、エクシュタイン公爵さま。このエーリッヒ・パリヴァー、ゲルトルード商会の商会員である誇りを胸に、精いっぱい勤めさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます」


 と、いうわけで、我が商会にメンバーが増えました。

 おーいエーリッヒくん、正面からは下がったとはいえまだ同じ室内にいるんだから、そんなにあからさまにホッとした顔しちゃうのはどうかと思うよ? まあ、見た目はチャラ男っぽくても、中身は素直な青年なのかもしんない。

 なんて思ってたら、両サイドから催促の視線が送られてまいりました。

 いやもう、公爵さまも伯爵さまもまだ食べたいのね? そんなに、なんちゃってモンブランとパウンドケーキが美味しかったのね?


 でもね、このさいだからもうちょっと待ってほしいの。だって今日はもう1人、初お目見えくんがいるのよね。

 私はまずリドさまに笑顔を向けた。

「リドさま、大変申し訳ございませんが、あと1人、面会が必要な者がおります。顔合わせだけで済みますので、先にお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

「ええ、それはもう。ルーディ嬢のよろしいように」

 ちょっと眉を上げちゃったリドさまも、にこやかに答えてくれた。


 それで私は、公爵さまにも告げる。

「公爵さま、当商会の下働きとして雇う子どもとの顔合わせをお願いしたいのですが」

「ああ、そのようなことを言っていたな」

「少しだけお時間をいただきますね」

 鷹揚にうなずく公爵さまにうなずき返し、私はクラウスに声をかけた。

「クラウス、ハンスとイェンスを呼んでもらえるかしら?」

「かしこまりました、ゲルトルードお嬢さま」


 すぐにまた、クラウスが2人をともなって戻ってきた。

 あーハンスってばもう、ガッチガチに緊張しちゃってる。公爵さまとはもう何回も会ってるんだけど、今日はリドさまもいるしね。

 そんでもって、このハンスよりちょっと小さい男の子がイェンスくんね?


 クラウスに促され、そのイェンスくんが私の正面に出てきた。

「クルゼライヒ伯爵家ご令嬢ゲルトルードさま、初めてお目にかかります。イェンス・グレッセンです。いつも姉のシエラと兄のハンスが、たいへんお世話になっております」

 こりゃまた、しっかりした子だわ。

 私は正直に驚いてた。カールと同じ12歳だって言ってたっけ? カールほどしっかりした12歳はちょっといないだろうと思ってたけど、このイェンスくんもかなりなもんだわ。

 本当にイェンスくんてば、はきはきとした口上だけでなく、右手を胸に当て左足を後ろに引いて腰を折るっていう、その礼のしかたもバッチリ板についてる。


「私がクルゼライヒ伯爵家のゲルトルードです」

 私はにこやかに答えた。「シエラもハンスも、我が家で本当によく働いてくれています。貴方にも期待していますよ、イェンス」

「ありがとうございます! いっしょうけんめい、がんばります!」

 一度頭を深く下げ、それからパッと顔を上げたイェンスくんの笑顔が、ホントに嬉しそうでかわいい。イェンスの髪の色はシエラやハンスと比べるとかなり濃い茶色で、目は逆にかなり明るい色なんだけど、顔立ちはやっぱりどこか似てるよね。ハンスと同じく、鼻の頭にちょっとそばかすが散ってるし。


 そう思いながら、私はちらっとハンスに目を遣った。そしたらガッチガチのハンスお兄ちゃん、なんと弟のイェンスにちょんっと肘を当てられてようやくハッとしたような顔をした。

「あっ、あの、ゲルトルードお嬢さま、本当にありがとうございます! 弟も雇っていただけて、家族みんな本当に喜んでいます! イェンスのことも、どうぞよろしくお願いします!」

 真っ赤な顔でハンスがガバッと腰を折ると、イェンスも一緒に頭を下げる。

 私は思わず笑いそうになっちゃった。なんか、ハンスお兄ちゃんよりイェンス弟のほうがしっかりしてるっぽいわ。


 挨拶を済ませたハンスとイェンス兄弟が、またクラウスに連れられて退出していく。

 この後、ハンスはお仕着せの上着をナリッサに預けて、歩いて我が家へ戻る予定だ。イェンスはこのままこの商会店舗に残る。

 でも、ハンスが帰る前にちょっとだけ、おやつを分けてあげることにしてるのよね。お勝手口のところで兄弟一緒にパウンドケーキを食べさせてあげるよう、ナリッサには伝えてある。さっきナリッサがクラウスに耳打ちしてたから、クラウスにも伝わってるはず。


 うん、これでまた商会のメンバーが増えました。

 と、私は一息つきそうになったんだけど、ええもう、とたんに両サイドからの圧がやってくる。

 ったくもう、公爵さまも伯爵さまもすでに1回食べてるでしょうが。

 とは言えないので、私はやっぱり笑顔で言い出すしかない。

「それでは次に、商会での販売を検討している新作おやつをみなさんに試食していただきますね」


せっかく書籍化のご案内ができたのに、肝心の続きが書けていないという(´;ω;`)

できるだけ早いうちに、続きを更新できるよう頑張ります!

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― 新着の感想 ―
公爵さま、反省してる?なんだかしてなさそうなのでやっぱりもやもやしちゃいますね…お貴族様たちは圧をちゃんと抑えろって言いたいです。貴族なんだからおすましをして欲しい
[一言] 密林で予約しました(^o^)
[一言] 凄ーい!! 書籍化おめでとうございます!! 新たなメンバーが増え ますます楽しくなってきました^ ^
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