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183.やっぱり領主としては問題ありすぎ

本日3話目の更新です。

 私たちが乗った馬車が、我が家の門をくぐったところで、公爵さまがぼそりと言った。

「やはり、コーデリアどのに侍女が付いていないのはよくないな」

 そうだった、その話をしておかなければ。

「あの、公爵さま、先日公爵家の馬車をご手配いただきました、レットローク伯爵家から我が家に迎える侍女なのですが」

「ああ、私のところにもレットローク伯爵家当主から連絡がきている」

 私の言葉に、公爵さまはすぐにうなずいてくれた。

「近々、その侍女がこちらに到着することになっているのだろう?」


「そうです、明日の遅い時間に、我が家に到着する予定だと連絡がきました」

 私はちょっとホッとしながら答えた。「お話ししています通り、その侍女は以前、我が家で母に仕えておりましたので、また母に付いてもらおうと思っています」

「うむ。しかしそれでもまだ、侍女が足りぬのではないか?」

 うううう、その通りなんですぅー。

 でも侍女も足りないんだけど、さらに急ぎの案件があるのよね。

「おっしゃる通りです、公爵さま。それに、あの、御者も……」

「ああ、そうであったな……」

 公爵さま、やっぱり片手で頭を抱えちゃいました。

 そうなのよね、私の通学のためにすぐ御者が必要なの。


 咳ばらいをして、気を取り直したようすの公爵さまが言ってくれた。

「そうだな、当面は我が家の御者を貸し出そう。きみが通学する日は、毎日迎えに行かせよう」

「ありがとうございます、公爵さま。本当に助かります」

 えっと、毎日お迎えってことは、我が家の住み込みになるわけではないのね? 必要に応じて、公爵家から我が家にやってきてくれるわけか。あくまで『貸し出し』ってことよね。

 そうするとやっぱり、我が家の専属御者をちゃんと雇わないとダメだよね。


 と、私が考えていると、公爵さまがさらに言い出した。

「実は、クルゼライヒ領の家令から、私のところへ連絡がきているのだが」

「はい?」

「一度、きみと面会したいと言ってきている」

 え、面会って……あの、なんだっけ、七代目とかいう家令さん?

 いや、まあ、そうだよね、正式な当主ではないとはいえ、一応私がいまのクルゼライヒ伯爵家のトップなわけだから……どんな小娘なのか顔を見てみたいくらいは、思ってて当然だよね。

 でも、うーん、領地のことなんかまだ全然わかってないからな、私。面会しても、めっちゃ呆れられちゃいそうな気がするなあ……。


「どうだ、会ってみるか?」

「はあ……」

 あいまいな返事になっちゃうんだけど、会わないわけにはいかないよねえ。

 公爵さまは私のためらいがわかったようなんだけど、それでも言ってきた。

「一度会ってみなさい。なかなかしっかりした家令だと、私は感じている」

「そうですね……わかりました」

 ええ、もうしょうがないから会ってみます。

 なんか領主の心得とか、みっちり説かれちゃうかなあ。それとも、あのゲス野郎がめちゃくちゃにしちゃったっていう領地経営について、ビシビシと苦情言われちゃったりするとか。


 うなずいた私に、公爵さまはさらに言う。

「それでは家令と面会したときに、領地から侍女や御者、護衛や従者など、必要な人員を王都に寄こすよう話してみなさい。おそらく、すぐに手配してくれるはずだ」

「え、あの、いいのですか? その、もう少し領地が落ち着いてからという、お話だったような……」

 確かにあのとき……新居の下見に行ったとき公爵さまは、領主館に長らく仕えている使用人を呼び寄せるのが一番確実だとは言ってたけど、いまはまだ領地が落ち着いてないからとかなんとか……。


「もともと豊かな領地だからな、クルゼライヒ領は。立て直しも順調に進んでいるようだ。そういう状況で私がきみのことを、新たにクルゼライヒ伯爵家を率いることとなったゲルトルード嬢は非常に聡明で情も厚く、よい領主になるだろうと伝えたところ、ぜひ家令が面会したいと言ってきたのだ」

 公爵さまってば、さらっと言ってますが、なんてことしてくれちゃったんですか。なんでそんなに私のハードルを上げまくってくれちゃったんですか。

 それで実際に会ってみたらこんな右も左もわかっていない小娘で、七代目家令さんだってがっくりしちゃうでしょうが。

 今度は私が頭を抱えそうになっちゃったわよ。


 でも公爵さまは、そんな私のようすなんかこれっぽっちも気にしてないらしい。

「彼ら領主館の者たちは、可能な限り早く自らの新しいあるじの役に立ちたいと考えているようだ。だからきみが必要な人員を王都へ呼び寄せると言えば、むしろ大喜びするだろう」

 なんて、すっごく満足そうに言ってらっしゃるんですけど。


 いや確かに公爵さまはあのとき、たとえ私が5歳の幼児であっても、代々我が家に仕えてきてくれた領主館の使用人たちは喜んで膝を折るだろうって言ってくださいましたけどね、本当に5歳なら右も左もわかってなくても許されるの。

 でも私、すでに16歳なの。成人まであと2年しかないの。ちゃんと学院にも通ってるの。それで、領地経営なんて右も左もわかりません、なんていうのはやっぱり問題ありまくりでしょ。

 それにね、前任者があのゲス野郎だと思うと、家令さんたちのハードルもかなり下がってるんじゃないかなーと……私としてはちょっとだけ期待してたのよ? それなのに、なんでわざわざ公爵さまがそのハードルを上げてくれちゃうのかな、っていうね。


「まあ、とにかく一度面会してみなさい。もちろん、私も同席しよう」

 私からなんかこう、恨みがましい光線がもれちゃったのか、公爵さまも取り繕うように言ってはくれたけど。

「わかりました。では、家令は領地から王都へと来てくれるのですね?」

「もちろんだ。私が連絡を送っておくので、到着の日がわかればすぐにきみに知らせる」

 ええ、さすがに一族のトップに対して、学院を休んで領地まで来いとは言わないよね。

「それではよろしくお願いいたします」

 うーん、なんかまたちょっと厄介そうな案件が増えちゃったよー。


「それで、当面はどうするつもりなのだろうか? 御者は我が家から必要に応じて貸し出すが……ほかにも男手が必要ではないのか?」

 公爵さまの問いかけに、私は慌てて返事をした。

「あ、はい、あの、明日到着予定の侍女の配偶者が、庭師として一緒に来てくれます」

「そういえば、そのようなことを言っていたな」

 うなずく公爵さまに、私のほうからも問いかけてみる。

「ほかに男手を領地から呼び寄せるとしたら、御者のほかは、やはりまず護衛でしょうか?」

「そうだな。現在のタウンハウスであればそれほど気にする必要はないだろうが……新居への引越しにさいしては必ず護衛を呼び寄せなさい。あの新居では、防御が弱すぎる」


 防御?

 えっと、あの、屋敷を取り囲んでいる塀がちょっと低いって話はされてたけど、そういう意味?

 なんかきょとんとしちゃった私のようすに、公爵さまが『あー……』という顔をしてくれちゃった。

「そうか……きみは気づいてない、というか、知らされていないのだな」

「何を、でしょうか?」

「現在きみたちが暮らしているあのタウンハウスには、強力な防御の魔法陣が敷かれている」


 は、い?

 防御の魔法陣? って、なんですかソレ?

 ますますワケがわからない私に、公爵さまが説明してくれた。

「あのクルゼライヒ伯爵家のタウンハウスは、敷地に大規模な防御の魔法陣を施し、その魔法陣の上に建設されているのだ」

 ま、まじっすか!

 そんな話、初耳なんですけど!

「クルゼライヒ伯爵家のタウンハウスといえば、最強の防御陣で有名なのだが……そうか、きみは知らなかったのか……」

 公爵さま、そんなくたびれた顔で、驚愕してる私を見てくれなくても!

 だって公爵さまはもうご存じでしょ、私がどれだけ特殊な環境で育っちゃったのかを。


 でも、だからなのね、いますぐ護衛を雇えとは言わなかったのは。

 確かにあのバカでかいタウンハウスはやたら高い頑丈な壁で敷地全体が囲まれていて、侵入者をがっつり防いでくれているのは誰の目にも明らかなんだけど……そうか、そんな、なんていうか、セ〇ムとかア〇ソックみたいなシステムが、敷地に設置されていることを公爵さまは知ってたからなのね。


またもやルーディちゃんの知らないナニかがあったようですw

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 御者も護衛も貴族の一般常識の知識も、後見人の公爵様の手配が遅すぎると思っていたけど、色々優先順位を付けてたんだね。説明もなしに。順位の先頭はお菓子があるみたいだけど。 一般常識について…
[一言] 防御陣!じゃあほんとに門さえ閉めとけばあの男が入り込めなかったのね。 成人間近で右も左も分からなくてもこの世界では大丈夫じゃないかな?だって女性だから。知らなくても不思議じゃないって思って…
[一言] 更新を楽しみにしてます
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