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152.いろいろと食いつきが良すぎる

本日3話目の更新です。

この回も食テロでw

 おっ、どうやらハンバーガーに手を伸ばす人が多いようです。

 相変わらずレオさまは本当にためらいなく、真っ先にハンバーガーに手を伸ばしてちょっと不思議そうに蜜蝋布の感触を確かめてらっしゃいます。

 メルさまは少し考えてから、ハンバーガーを1個手に取りました。ユベールくんは、どうやらポテサラサンドと迷ったようなんだけど、結局ハンバーガーにしたみたい。


 リドフリートさまは興味深そうにひとつひとつをよく見たあと、まずはホットドッグに手を伸ばしました。アーティバルトさんもホットドッグだわ、何気に気に入ってるみたいね。

 お母さまはポテサラサンドをひとつ手に取って、すでに嬉しそうに頬張ってる。

 そんでもって公爵さまは、なんかこう、自分はどれも食べたことあるもんねーという余裕をかましたいのか、ちょっとどや顔でゆっくりとハンバーガーを手に取りました。


 お料理は順番にひとつずつお出ししようかとも思ったんだけど、何しろ量も種類も多いからね。お好きなのをご自由にどうぞ、ってことで軽食系とおやつ系にだけ分けて、それぞれまとめてお出しすることにしたんだよね。

 おかげで、最初に私がすべてに口をつけるっていう、ちょっとお行儀悪いかなって格好になっちゃったんだけど。


 まずは、リドフリートさまがホットドッグにかぶりついた。包んであるハンバーガーと違ってリールの皮をずらすだけで食べられるからね。

「これは……いや、美味しいですね。パンにソーセージがはさんであるだけなのに……味付けはトマトソースですか、それにこの粒辛子もいい味わいです」

 茜色の目を見張ったリドフリートさまが、もぐもぐとホットドッグを頬張ってる。

「これなら確かに行軍中でも片手で食べやすいですし、これだけ美味しくてしかもソーセージが丸ごと1本食べられるなら、兵も大歓迎でしょう」


「そうなのだよ、リド」

 公爵さまが蜜蝋布を開く手を止めて言い出した。「これならいちいち手甲を外す必要もない。手軽で、しかも食べ応えもある。いや、最初にゲルトルード嬢のところでこのホットドッグを試食させてもらったとき、私はすぐに携行食糧に使えると思ったのだ」

 うん、公爵さま、安定のどや顔です。


「えっ、どうしましょう、本当にすごく美味しいわ!」

 次に声をあげたのはレオさま。

 両手でハンバーガーをつかんで、ぱくっと勢いよくお口に入れられたようです。

「お肉が……これ、ふつうに切って焼いてあるのではないわよね? お口の中でほどけるというか、すごく食べやすいわ。お肉の味も濃く感じられるし。それにチーズも、お野菜との組み合わせもいいし、あの黄色いソースもすごくいい味わいになっているわね」


「このお肉は、ソーセージの中身を使用しています」

 私は笑顔で説明した。「腸に詰めるために挽いたお肉を、このパンの形に合わせて丸く成形して焼いています」

「そうなのね。挽いたお肉だなんて、ソーセージ以外にこうやって使っても本当に美味しいのね」

「この丸く成形した肉を作るとき、私も手伝ったのですよ、レオ姉上」

 うん、言い出すと思ったよ、公爵さま。


「ヴォルフ、貴方が手伝ったって……お料理を?」

 レオさまだけでなく、みなさん目を丸くしてらっしゃいます。

 だけどやっぱり公爵さまは、どや顔で言っちゃうんだよ。

「ええ、私はゲルトルード嬢の後見人で親族同等ですからね。クルゼライヒ伯爵家の厨房で料理をしているところを見学していたのですが……少し手伝うことがありまして。まあ、具体的に何をどう手伝ったのかは、レシピを公開するまでは黙っておきましょう」


 レオさま、それにメルさまもリドさまもユベールくんも、そんな信じられないモノを見る目で私を見ないでください。

 そりゃそうでしょ、公爵さまがお料理をするなんて、ちょっと信じられないもんね。てか、そもそも公爵さまが親族同等だろうがなんだろうがヨソんチの厨房にまで乗り込んできてる時点で、完全におかしいんだから。

 なんかもう、私は目で訴えちゃう。

 レオさま、お願いです、お宅の弟さんが我が家の厨房にまで乗り込んできてもりもりもりもり食べまくるのを、ビシッと叱ってやってください。


 だけどレオさまは、深々と息を吐きだした。

「ヴォルフ、貴方……」

 うわーん、レオさま、呆れちゃう気持ちは大変よくわかります、でもここはビシッと! ビシッとお姉さまの威厳で叱ってください!

「ルーディちゃん、本当にごめんなさい。弟が迷惑をかけてるわね……」

 って、そんな、はいともいいえとも答えられないこと言わないで、レオさまー!

 ホンット、私はあいまいな笑みを浮かべてるしかないでしょ?


「それにしても美味しいわ」

 メルさまが、サクッと話題を戻してくれました。

「パンとお肉とお野菜を、こうやって重ねて食べるというだけで、こんなに美味しいのね。先日ルーディちゃんに食べさせてもらった、卵やベーコンの『さんどいっち』も本当に美味しかったのだけれど」

 にこやかにメルさまは、自分のとなりに座っている息子のユベールくんにも言ってあげちゃう。

「ユベール、貴方もこれなら食べやすいでしょう?」


「はい、母上」

 ユベールくん、真顔です。真顔でもぐもぐとハンバーガーを食べています。笑顔を振りまくことも忘れて食べてくれているようです。

「この丸い形に焼いたお肉……これだけでも何枚でも食べられます」

 美少年侯爵さま、結構肉食? いやまあ、15歳なんて中学生男子な年齢だもん、見た目はどうあれ肉肉肉肉食いたいと思ってても当然っちゃあ当然よね。


 だから私は、笑顔で言ってあげた。

「このソーセージの中身にするために挽いたお肉は、小さく丸めてスープに入れても美味しいですし、少し味付けを変えて大きく成形したものを焼いて、何かソースをかけて食べても美味しいですよ」

 ハンバーグも当然作るつもりだけど、揚げ物の試作ができたらミートボールも作ってもいいかも。

 それにひき肉っていったら絶対アレよね、餃子。うん、餃子もそのうち作ろう。焼き餃子もいいし、水餃子もいいなー。でも焼き餃子のタレはどうしようかな?


 などと思いつつ、私がにこにこしてたら、ユベールくんはさらに真顔になってた。

「大きく成形? このお肉をもっと大きくして食べるということですか?」

「そうです、これくらいの大きさがいいのでは、と」

 私が手でサイズを示すと、ユベールくんますます真剣な顔になっちゃった。

「そのお料理のレシピはあるのですか? ぜひ、レシピを購入したいのですが」

「ゲルトルード嬢、私もその料理について詳しく伺いたい」

 あう、私が答える前に、公爵さまが割って入ってきちゃったよ。


 私はユベールくんに向けてた笑顔を、公爵さまに向けた。

「まだ試作の段階なのです」

 そんでもって私はまたユベールくんに向き直る。「ですから、まだレシピはございません。小さく丸めてスープに入れるお料理は、家族にも好評でしたのですけれど、こちらもまだレシピは書けておりませんし」

 お母さまヘルプ!

 と、今度はお母さまに顔を向けると、お母さまはにっこりと笑ってくれた。

「ええ、あのトマト味のスープね? 丸いお肉と、大きめに切ったお野菜がごろごろと入っていて、とっても美味しかったわ」


「それもまた、聞くだけで美味しそうね」

 レオさまのはちみつ色の目がらんらんと、いや、きらきらと輝いてます。

 メルさまも言い出してくれちゃいました。

「本当、ルーディちゃんってどうしてそんなに美味しいお料理を考えつけるのかしら?」

 あの、それは私に前世の記憶があるからです、とは絶対言えないので、どうしたものかと一瞬焦ったんだけど、メルさまはすぐに言葉を続けてくれた。

「我が家の料理人も、クルゼライヒ伯爵家の厨房におじゃまして本当に勉強になったと、ずっと言っているのよ」


「メルさまの料理人さんにそう言っていただけているのなら、本当によかったです」

 私は安心して笑顔で言った。「我が家の料理人は、本当に料理に対する意欲が高く、研究熱心なのです。わたくしが思い付きで言ったことを真剣に検討して、料理人自身が持っている知識や技術を使って、本当に美味しいお料理に仕上げてくれるのです」

 ウソは言ってないよ、ウソは。

 だって本当に、マルゴがいてくれなければ、こんなにいろいろいっぱい美味しいおやつやごはんなんて、絶対作れなかったもの。


「そうなのね」

 なんだか、レオさまの目がさらにらんらんと、いや、きらきらとしてきました。

「それはぜひ、我が家の料理人もご当家の厨房へおじゃまさせていただきたいわ。この『はんばーがー』だったかしら? こちらのお料理のレシピも購入させていただきたいし」

「それについては、我が家もだな」

公爵さまも言い出しちゃった。「特に我が家は、『新年の夜会』で祝儀の軽食を提供する予定であることだし、やはり我が家の料理人もご当家の厨房で、実際の手順を見せてもらったほうがいいだろう」


 うーん、そう言っていただけるのはありがたいんだけど、マルゴの負担が、ねえ?

 昨日までだって、かなりの無茶ぶりをお願いして今日のお弁当を準備してもらったんだし。そりゃあもう、プリンなんて鬼気迫る勢いで大量生産してくれたもん。

 まあ、最初に私が実際に手順を、なんて言っちゃったから、レオさまんチと公爵さまんチくらいはしかたないかなとは思うんだけど、でもこれからどんどんレシピが増えていって、そのたびに我が家の厨房へって言われてしまうと、やっぱり困る。


 と、私がちょっと頭を悩ませてたら、さくっとメルさまが言い出してくれちゃった。

「そうね、わたくしは最初、ルーディちゃんから実際の手順を見せると言われたときは、正直に驚いたの。けれどそうしてもらって、本当によかったと思っているわ」

 メルさまはさらに言ってくれちゃう。「料理人たちには本当に刺激になったようで、教えていただいた『まよねーず』もいろいろなお料理に試してみたいと、実際に新しいお料理にも取り組んでくれているの。もちろん、『まよねーず』を使った『さんどいっち』もとても美味しく作ってくれていて、我が家の食事が充実してきたわ」


 ね? と、ばかりにメルさまが、となりに座っている息子のユベールくんに顔を向けると、ユベールくんも真剣な顔でうなずいてくれちゃった。

「本当にそうです。新しいレシピを購入したと母上から言われたとき、正直あまり期待していなかったのですが……食べてみたら本当に美味しくて。この『はんばーがー』にも『まよねーず』が使ってありますよね? このソース、お肉にも合うのですね」

 そんでもって、ユベールくんはやっぱり真剣な顔で私に言った。

「この『はんばーがー』のレシピも、ぜひお願いします。それに、先ほどルーディお姉さまが言われていた、挽いたお肉を大きく成形して焼くというお料理もぜひ」


 あ、うん、そうですね、どうやらこの美少年侯爵さま、私にロックオンしてる理由は、やっぱりソレのようです。

 よっぽど美味しかったんだね、マヨネーズが。


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― 新着の感想 ―
[一言] >ちょっとどや顔でゆっくりとハンバーガーを手に取りました。 公爵様かわいい
[一言] 肉が食べたい中学生なんてマヨネーズチューブから吸っても食べたいもんな… 食べたい!!気持ちが溢れてしまうのは、まぁ、仕方ないですよね。
[一言] 更新とまってしまって心配です お待ちしております
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