142.初めましてのその2
本日3話目の更新です。
だって、だってだって、レオさまんチのお嬢ちゃまもお坊ちゃまも、めちゃくちゃかわいいんだもん!
特にお嬢ちゃま!
もう一目でレオさまの娘さんだってわかるくらいそっくり! ナニこの、ちびレオさま感は! レオさま譲りのボリュームたっぷりの黒髪に、はちみつ色の目は初めて会う私たちへの好奇心で輝いてるし。ホントにホントにリケ先生が言ってた通り、レオさまと同じように活発で明るい感じのお嬢さまだわ。
そしてお坊ちゃまもまた、とびきりかわいいんですけど!
こちらはなんていうか、ほわんとしたいかにもお育ちのいい僕ちゃんって感じなのよね。髪の色は黒ではなくリドフリートさまと同じような灰茶色。リドフリートさまよりちょっと色が濃いかな。目の色はレオさまと同じはちみつ色なんだけど。その目が、物おじもせずちょっと不思議そうな感じで、私たちを見上げてる。
そのとってもかわいいご姉弟が、私たちにご挨拶してくれた。
「初めまして、クルゼライヒ伯爵家のゲルトルードさま、コーデリアさま、アデルリーナさま」
ちょこんと片足を引いてカーテシーをしてくれるちびレオさまがもう、ホンットにかわいい!
「わたくしは、ガルシュタット公爵家の長女でジオラディーネと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「ぼくは次男のハルトヴィッヒです。よろしくおねがいします」
ハルトヴィッヒさまも右手を胸に当て、にっこり笑顔でご挨拶よ。
かーわーいいーーー!
ダメだ、もう思いっきり頬に力を込めてないと、デレデレに緩んじゃいそうなんですけど!
私はなんとか頑張って、ニヤついていない程度の笑顔を浮かべてみせる。
「ご挨拶ありがとう存じます、ジオラディーネさま、ハルトヴィッヒさま。クルゼライヒ伯爵家のゲルトルードでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます」
ジオラディーネさまとハルトヴィッヒさまに視線を合わせるよう、私も膝を深めに折ってのご挨拶で応じちゃう。
そしてお母さまと、アデルリーナもご挨拶。
アデルリーナがカーテシーをすると、ジオラディーネさまが待ってましたとばかりに口を開いた。
「アデルリーナさまは、わたくしと同じ10歳だとうかがっておりますわ。わたくし、アデルリーナさまとお友だちになれると、うれしいのですけれど」
言われたアデルリーナはちょっと目を見張り、さらにちょっとだけもじもじしてから、でもちゃんと自分で答えられた。
「はい、あの、わたくしも、ジオラディーネさまとお友だちになりたいです」
「よかったわ!」
ジオラディーネさまの顔がパッと輝く。「わたくしたち、とってもなかよしになれそうね!」
うわーん、かわいいですー!
かわいいが大渋滞を起こしてて、いや、こういうのってアレよ、尊いっていうのよね?
なんかもう、リーナもかわいくてかわいくてかわいくて、よく頑張って自分でお返事できたわねって思うんだけど、ジオラディーネさまも実はやっぱりちょっと緊張してたのかなっていう、その感じがね!
ああもう、ナニこの状況! 今日はもうこれだけで、私は来た甲斐があったっていうものよ!
ジオラディーネさまは本当に嬉しそうに、アデルリーナにもっと話しかけようとした。
でもそこで、リドフリートさまがそっと声をかけた。
「ジオ、アデルリーナ嬢とお話しするのは後にしなさい。まだご紹介が終わっておられないかたがいらっしゃるからね」
あっ、という顔をして振り返ったジオラディーネさまが慌てて脇へ寄り、ちょこんとカーテシーをした。
「失礼いたしました、ホーフェンベルツ侯爵さま」
ジオラディーネさまの視線の先には……おおう、美少年キターーー! ですわ。
「まあ、リドフリートさまもジオラディーネさまも、お気遣いありがとう存じます」
そう言って、にこやかに応えたのはメルさま。
そしてメルさまの横で、同じようににこやかな笑みを浮かべてるそのかたは、どこからどう見てもメルさまの息子さん。こちらもまたメルさまにそっくりです。
ええもう、キュートでビスクドールのようなおかわいらしいルックスのメルさまにそっくりなんだから、これまた絵に描いたような美少年なのよ。整った顔立ちはもちろん、小柄で子どもの線の細さを残したこの世代の男の子特有のきゃしゃな体型で、もう冗談抜きで宗教画に描かれてる天使みたいな美少年っぷり。
「ええ、本当に。お気遣い感謝申し上げます」
だけどメルさまに続いてそう応えた声はちょっとびっくりするくらい落ち着いていて、うん、このルックスでちゃんと声変わりしてるっていうのも、結構なギャップ萌えかも。
その宗教画の天使のような美少年が、私の前で右手を自分の胸に当てる。
「初めまして、クルゼライヒ伯爵家ご令嬢のゲルトルードさま。未亡人コーデリアさま、ご令嬢アデルリーナさま。ホーフェンベルツ侯爵家当主のユベールハイスと申します。母からみなさまのことをお聞きし、お会いできることを楽しみにしておりました」
いやもう、その顔に浮かぶのは文字通り天使のほほ笑み。そんでもって、このご挨拶のソツなさよ。
私もにこやかな笑みを返した。
「ご挨拶いただきありがとう存じます、ホーフェンベルツ侯爵さま。クルゼライヒ伯爵家のゲルトルードでございます。こちらこそ、母君のメルグレーテさまからお話をお伺いし、お会いできることを楽しみにしておりました」
続いてお母さまとアデルリーナもご挨拶する。
ユベールハイスさまはにこやかにうなずいて言った。
「母は、コーデリアさまとレオポルディーネさまのことを話すとき、本当に楽しそうなのです。母と仲良くしてくださって、ありがとうございます」
「とんでもないことですわ、ホーフェンベルツ侯爵さま」
お母さまもちょっと嬉しそうだ。「こちらこそ、メルグレーテさまには本当に仲良くしていただいて感謝しております」
そこで、天使な美少年はその顔を私に向ける。
「僕はずっと領地で育ってきたため、王都には同世代の知り合いがまったくいないのです。春から学院へ進学しますが、やはり少しばかり不安で……ゲルトルードさまには今後、仲良くしていただけると本当に嬉しいのですが」
うーん、その小首をかしげての上目遣い、あざといです。
しかも一人称は『僕』ですか。
一応ね、学院に進学するような年齢になると、男子は自分のことを『私』って言うようになるの。『僕』っていう言い方は、ちょっと幼い印象なのよね。
でも、年下の未成年で仮の爵位であるとはいえ、侯爵家のご当主にそう言われてしまって、私に断るなんてことができるわけないでしょう。
「もちろんですわ、ホーフェンベルツ侯爵さま。わたくしも仲良くしていただけると嬉しいです」
笑顔で答えてから、私はちょっと申し訳なさげに付け加えちゃう。「でもわたくし、ホーフェンベルツ侯爵さまより一学年上ですので……残念ながら学院では、お話しできる機会も多くはないかもしれません」
そりゃーもう、こんな天使な美少年と連れ立って学院内をうろうろしたりなんかしちゃったら、私ゃご令嬢がたの視線の集中砲火を浴びまくっちゃうこと間違いナシよ。
そもそも私は、貴族のご令嬢がたとお茶会のお付き合いすらふつうにできないレベルなのよ? その私が、そんな集中砲火を上手くいなせると思う?
それでなくてもすでに、爵位持ち娘になっちゃったことで私は不本意ながら注目を集めることになっちゃったみたいだし。もうこれ以上、変な形で学院内の人間関係のハードルを上げられちゃうのは本気で困るのよ。
本当に申し訳ないけど、私はなんとしても平穏な学生生活を維持したいの。
「ええ、それはもう、ゲルトルードさまのご負担のない範囲で構いません」
ユベールハイスさまが笑顔でうなずく。
そんでもってこの天使な美少年ってば、またちょっと小首をかしげ、上目遣いで言い出しちゃうんだ。
「でも、できれば僕のことは、ユベールと呼んでいただけると嬉しいです」
うわ、そうきたか。
ええ、ええ、私がお断りできる立場にないことは、ご存じの上でおっしゃってますよね? てかもう、私ができるお返事がひとつしかないことも、わかっているのに『お願い』してくれちゃってますよね?
「それでは、ユベールさまと呼ばせていただきます。わたくしのことも、よろしければルーディとお呼びくださいませ」
って、言うしかないじゃんねー?
私の返事に、ユベールくんは輝くような笑顔を浮かべてくれちゃった。
「ありがとうございます、ルーディお姉さま!」
って、待って!
お姉さまってナニ? そこまで許可してない!
てか、なんでこの美少年はここまで私にグイグイ来ちゃうのよー?
連休中はカレンダー通りに休めますので、ちょっとがんばって更新しようと思います。
でもカレンダー通りだから明日月曜は出勤……(´・ω・`)