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140.ついに出発!

ついにというか、ようやくというか、栗拾いに出発です。

本日は3話更新します。まずは1話目です。

 今日はすっきり目が覚めた。

 昨日はちょっと余裕ができて、午後ゆっくりできたのがよかったんだと思う。

 いやーもう、栗拾いが決まってからこっち、昨日までですでに私も疲れ切ってたからね。それにやっぱ、誰かさんが試食させろって我が家に乗り込んでこなかった日は、気持ちの安らぎ具合が全然違ってたわ。


 お母さまもアデルリーナもちゃんと起き出していて、お出かけの支度に取りかかってる。支度に時間がかかるお母さまにナリッサとシエラが付いているので、私はアデルリーナの支度を始めた。


 顔を洗った妹の、ふわふわのプラチナブロンドにブラシを当ててあげてると、なんかもう姉としてこれほどの幸せはあるだろうかって気持ちになってきちゃうわ。

 だって、今日はお天気が良くてよかったわね、栗がたくさん拾えるといいわね、なんて楽しくおしゃべりしながらよ? 初めてのお出かけでちょっと緊張してるみたいだけど、それでも嬉しさを隠しきれてないアデルリーナのかわいいかわいいかわいいことと言ったら!

 はー、朝からかわいすぎる妹成分をたっぷり吸収させてもらっちゃったわー。


 でも、いま自分で思ってちょっと愕然としちゃったけど、アデルリーナにとって今日は本当に人生初の『お出かけ』なのよね。私の記憶にある限り、アデルリーナは生まれてから一度もこのタウンハウスを出たことがない。

 まあ私も似たようなもの、っていうかもっとひどくて、初めてこのタウンハウスの外に出たのは14歳のときだったからね。ナリッサが私の侍女になってくれて、そのナリッサの手引きでこっそり街へ出たのが、初めてのお出かけだったのよね。

 アレがなかったらたぶん間違いなく、私の初めての『お出かけ』は学院の入学式だっただろうな。


 なんか、こういうときに思い出してしまう我が家の異常性って、本当にズシンと来るわ。

 本当に本当にこれからアデルリーナには、この国の貴族令嬢として生まれたなら当然与えられるべきものを、全部与えてあげたい。それは、アデルリーナが属しているこの貴族社会の中で生きていく上で、絶対に必要なものなのだから。その必要性については、私自身が日々痛感してるからねえ。

 まずはいい家庭教師の先生が見つかったことだし、続いて今日は子どもの社交開始よ。

 お相手はガルシュタット公爵家のご令嬢っていう超大物だけど、あのレオさまのお嬢さまなんだし、何よりこんなにかわいくて素直でかわいくてかわいくてかわいいアデルリーナと仲良くなれないお嬢さまなんて、いないと思うからね!


 お母さまの支度が終わって、ナリッサとシエラが私たちの部屋へ来てくれた。

 支度の済んだお母さまは、今日も360度どこから見ても完璧な美人さんだ。

 でも、なんかやっぱりちょっと目が赤い気がする。ナリッサによると、お母さまは連日夜更かしをして書きものをされているようなのよね。お母さまが書きものって、本当に何だろう?

 それでもお母さま、元気は元気なのよ。

 今日は特に、仲良しのレオさまメルさまにまた会えるっていうのもあるんだろうけど。


 とりあえず、寝不足っぽいのにイキイキしちゃってるお母さまの心配ばかりもしていられないので、私はアデルリーナをシエラに任せ、ナリッサに手伝ってもらって自分の支度をする。

 昨日届いたばかりの濃緑色のドレスに着替え、髪を整えてもらうんだけどね。

 いや、でも、実はナリッサって結構不器用なんだよねえ。


 ものすごくナリッサが頑張ってくれてるのは私もよくわかってるんだけど、ドレスの着付けにしても髪を結うにしても、シエラのほうが断然上手い。むしろ、ナリッサは自分の不得手を補ってくれることを期待して、シエラを我が家の侍女に推したんじゃないかなって思うわ。

 だって、私の支度の仕上げも、ナリッサはシエラにちゃんと頼むからね。私のドレスの背中の編み上げリボンも、髪を結うのも、最終的にはシエラがやってくれる。それで2人が納得して役割分担してくれてるなら、それがいちばんいいよね。


 支度を終えたところで、3人そろって今日は朝食室へ。

 さすがに一張羅を着てる状態で、なし崩しの厨房朝ごはんは止めておいたほうがいいだろうということで。


 朝ごはんは、マルゴが作り置きしておいてくれたお野菜たっぷりスープと、とろけたチーズを載せたパン。

 いやもう、使えるモノは全部使っちゃおうってことで、朝ごはんメニューも食器に盛り付けた状態で時を止める収納魔道具に入れちゃってたから、魔道具から出してテーブルに並べるだけでOKという手軽さよ。

 それでいてアツアツのできたて状態、ホントにいまチーズをとろとろにしましたーって状態で並べられるんだから。

 ああもうホンットに、時を止める収納魔道具を取り返したい!


 朝食を終えて客間に移動し、一息ついたところでリケ先生が到着。

 リケ先生、白いブラウスに紺色のスカートを合わせグレーのショートジャケットをはおるっていう、とっても家庭教師っぽい装いです。


 しかしリケ先生って、ホントに、マジで、冗談抜きでモデル体型なのよね。

 スラっとした長身で頭が小さい見事な八頭身。腰の位置がすごく高いから、脚もすんごい長いものと思われる。しかも、姿勢がめちゃくちゃいいの。常にすっと背筋が伸びていて、所作もすごくきれいなんだよね。本人は堅苦しくてイヤだって言ってたけど、そこはやっぱり宮廷伯のご令嬢、さすがの王宮育ちって感じだわ。

 いやもう、リケ先生なら一流デザイナーのコレクションで、堂々とランウェイを歩けると思う。


 でもって、その容姿で食いしん坊さんなんだよねえ、リケ先生って。ポテサラサンド3個をペロリだもんねえ。

 まあ、そこがこのリケ先生のいいところと言えばそうなのかも。飾り気も屈託もなくて、ホントに明るいお嬢さんなんだもの。


 今日もリケ先生はにこにこしてて、アデルリーナの緊張をほぐすように話しかけてくれてる。

「ガルシュタット公爵家のジオラディーネさまは、とても活発で明るいご性格のお嬢さまです。リーナさんもきっと仲良くなれると思いますよ」

「そうね、リーナはどちらかというとおっとりした性格だから、むしろそういう活発なお嬢さまのほうが仲良くなれると思うわ」

 お母さまもそう言って、少し不安そうなリーナの手を握ってあげてるし。


 それに、リケ先生ってばシエラにまで気を遣ってくれちゃうの。

「シエラさん、お子さまがただけのお席ですから、あまり堅苦しいことは考えなくて大丈夫ですよ。ジオラディーネさま付きの侍女さんも家庭教師さんも、それにハルトヴィッヒさまの侍従さんも、わたくしよく存じておりますが、みなさん気さくなかたですからね」

「ありがとうございます、リケ先生。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます」

 シエラはもう、深々とリケ先生に頭を下げちゃってる。


 そりゃもうシエラにしてみれば、侍女になってまだ日が浅いのにいきなり公爵家のご令嬢とご令息を交えてのお茶会、それも指導役のナリッサ抜きで、だもんね。子どもだけの席だとはいっても、今日いちばん緊張してるのはシエラかもしれない。

 シエラのためにも、リケ先生が一緒に行ってくれるのは本当にありがたいわ。

 ええもうリケ先生、ハンバーガーもホットドッグもフルーツサンドもプリンもプリンも、がっつりと召し上がってくださいませ。


 そうこうしているうちに、公爵さまのご登場である。

 公爵さまもさすがにというか、今日は眉間のシワもかなり浅めな感じだわ。

「ゲルトルード嬢、本日は天気もよく屋外での散策も十分に楽しめそうだな」

「さようにございますね、公爵さま」

 なーんて挨拶を交わしちゃってるけど、散策もナニも公爵さま、今日もがっつり食べる気満々なんだと思うんだけど。


 で、公爵さまにリケ先生を紹介しようとしたら、すでにご面識がお有りだとか。

 まあ、そうだろうね、リケ先生はレオさまとも懇意にされてるっぽい感じだもん。それに、公爵さまによるとリケ先生のお父上であるキッテンバウム宮廷伯さまとは、王宮でも仕事上よくお会いになってるらしい。

 って、公爵さまってば我が家で試食ばっかしてるんじゃなくてちゃんとお仕事もしてるのね、と思ってしまったのはナイショだ。


 そして私は、公爵さまにエスコートしてもらって馬車に乗り込む。

 そう言えば今日は近侍さんを見てないなと思ってたら、公爵さまが教えてくれた。

「アーティバルトは先に現地へ行っている」

 あ、設営スタッフね。

 アーティバルトさんとヒューバルトさん、イケメン兄弟が一緒に現地で出迎えてくれることになりそう。イケメン圧、高そう。


 我が家の馬車の御者台には、公爵家の御者さんが座ってくれる。

 そんでもって、お母さまとアデルリーナ、それにリケ先生とシエラも乗り込んだ。あ、ナリッサは私と一緒に公爵家の馬車ね。

 全員馬車に乗り込んで、忘れ物はないわね?

 って、全部収納魔道具に入ってるから大丈夫なはず。

 ホントにホントに便利すぎるよ、収納魔道具!


 と、いうことで、栗拾いピクニックへ、ついに出発です!


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― 新着の感想 ―
あれ?妹ちゃんにはシエラがついて、ヒロインにはナリッサがついてるけど、お母さまには誰がついてましたっけ?まさか専属侍女なし…?
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