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129.今日もまた試食会

本日2話目の更新です。

「では、ゲルトルードお嬢さま、私たちも客間へと移動させていただきます」

 エグムンドさんがクックッと笑いながら言った。「クラウス、契約のことは頼んだよ。きみはこちらの厨房で、弟と一緒にゆっくり試食させてもらうといい」

「はい、ありがとうございます」

 クラウスも正直にホッとした顔で応えてる。


 って、クラウスに配慮してあげてるっぽいけど、エグムンドさんも客間で一緒に試食する気満々だってことだよね?

 まあ、それでもクラウスは厨房でカールたちと一緒に食べるほうが、ハンバーガーもより美味しく落ち着いて味わえるのは間違いないと思うけどね。


 そんでもって、当然のごとくヒューバルトさんも客間へと、エグムンドさんと連れだって厨房を出ていった。

 まったく、みんななんでこう、そろいもそろって食いしん坊なんだろうね。おまけにそろいもそろって、試食させてもらって当然と思ってるのはナゼなんだろうねー?


 そんでもまあ、ここまできて食べさせてあげないわけにはいかない。

 私はナリッサとマルゴに指示を出して、お茶の準備をしてもらう。客間の支度に行っていたシエラも戻って来たので、お茶のセットと、作ったばかりのハンバーガーやらバタークリームサンドやらをどしどしワゴンに積み込ませた。


「それでは行ってきますね」

 私の言葉に、厨房の一同がさらにホッとした表情を浮かべちゃってる。

 ホント、みんなよく頑張ってくれたわよ。

「マルゴ、今日作ったお料理の試食も、全員でしてちょうだい。ああ、今日はクラウスも参加ね。それからカールは後でハンスと交代してあげてね」

「ありがとうございます、ゲルトルードお嬢さま」

「はい、後でハンスと交代します、ゲルトルードお嬢さま!」

 クラウスが頭を下げ、カールが元気よく答えてくれる。ハンスは、今日は門番として門に詰めてくれてるのよね。


 ようやく私も、おやつをいっぱい詰め込んだワゴンを押すナリッサとシエラを連れて、客間へと向かった。


「みなさま、お待たせいたしました」

 私が客間に入っていくと、なんかもう期待の目が集中してくれちゃう。

 ヨーゼフだけでなく、アーティバルトさんもすぐにワゴンのところへやってきて、速攻給仕態勢だ。私は彼らに任せ、自分の席に着いた。

 席に着いたとたん、公爵さまが私に話しかけてきた。

「今日の『さんどいっち』は丸いパンを縦に重ねた形なのだな。『さんどいっち』といっても、ずいぶんと種類があるものだ」

「そうですね、基本はパンに何かをはさむだけですから、パンの形や食材などでいろいろな組み合わせが考えられると思います」


 私たちが話しているうちに、お茶が配られていく。

 そして、蜜蝋布で包まれたハンバーガーが入ったかごも、それぞれに配られた。でもバタークリームサンドとメレンゲクッキーが載ったお皿は、後で配られるらしい。

 私はお母さまに言った。

「お母さま、今日の試食はかなり量が多いです。全部召し上がっていただくと、お夕食が入らなくなってしまうと思うのですが」

「そうねえ……」

 お母さまは小首をかしげ、でもすぐに言ってくれちゃった。「ではその分、お夕食の量を減らしましょう。マルゴには、そう伝えておけばいいのではないかしら」


 はい、わかりました、お母さまも晩ごはんより目の前のハンバーガーですね。

 まあさすがに、アデルリーナのハンバーガーは半分に切っておいたんだけどね。


 と、いうことで、まずは私とお母さまでお茶を一口飲み、そしてハンバーガーにぱくっとかぶりついた。

 うわー、肉肉しいパティの美味しいこと! モリスってば、焼き加減も絶妙よ! とろけたチーズとの相性もバッチリ。このお肉の味を堪能するために、粒辛子とマヨネーズだけの味付けにしたのは正解だったわ。

 私はいつも通り、笑顔で言っちゃう。

「では、みなさんもお召し上がりくださいませ」


 お茶を一口飲んだお客さんたちの手が、いっせいにハンバーガーへと伸びる。

 みんなもう、我が家の試食になんのちゅうちょもないようで、そろってすぐさまハンバーガーにかぶりついてくれちゃった。

「これもまた、とんでもなく美味しいですね。調理しているときから、本当にいい匂いがしていましたけれど」

 アーティバルトさんが嬉しそうに言い、公爵さまもうなずいている。

「まったくだ。ソーセージの中身だと言っていたが、こういう形で焼いても実に美味いものだな」


「しかし、この黄色いソースは本当に万能ですね」

 しゃくしゃくとレタスを噛んでいたヒューバルトさんが、口の中のものを飲みこんで言った。

「野菜はもちろん、こういう肉の料理にもすごく合うじゃないですか」

「なるほど、これにもあの黄色いソースが使われているのですね。実に美味しいです」

 エグムンドさんも納得顔でもぐもぐと食べている。


 そこでヒューバルトさんが、ちょっとどや顔で言い出した。

「この黄色いソースを使って、蒸かした芋を和えたサラダも本当に美味しいですよ。先ほど試食させていただいたのですが、クリームチーズを使うより口当たりがなめらかで、酸味があるぶんさっぱりしていて」

「芋のサラダだと?」

 案の定、公爵さまが眉間にシワを寄せて言い出した。「この黄色いソースはそのような使い方もできるのか?」


 ええもうヒューバルトさん、いちいち公爵さまを煽らないでください。

 私はもう面倒くさいので、シエラに指示を出してポテサラサンドを4つ、追加で作ってくれるようマルゴへ頼みに行ってもらった。

 ホント、マルゴが大量にポテサラを作っておいてくれてよかったわ。ロールパンもまだあったはず。このおっさん、げふんげふん、公爵さまってば、下手したらポテサラ食べるまで帰らないとか言い出しそうだし。


 幸いなことに、ポテサラサンドは可及的速やかに客間へ届けられた。

 ありがとうマルゴ、もうお手当めっちゃはずむよ。栗拾いが終わったらボーナスをドカンと出させていただきます。


 しっかし、みなさん、よく食いますね。

 公爵さまもアーティバルトさんもヒューバルトさんも、それに四十路のエグムンドさんまで、ハンバーガーとロールパンのポテサラサンドをペロリだよ。

 私は、ハンバーガー1個はやめといたほうがよかったかも、なんてすでに思ってるっていうのに。いや、お母さまはハンバーガー1個ペロリといっちゃったけどね。


「この芋のサラダをはさんだ『さんどいっち』も本当に美味しいですね」

「ゆで卵が入っているから食べ応えもありますしね」

 イケメン兄弟がイケメンな顔で感想を述べあってる。

 エグムンドさんも、なんか妙に納得した顔で言ってくれちゃうし。

「この芋のサラダは本当にいいですね。こうやってパンにはさんで食べてもいいですし、芋のサラダだけで食べても十分美味しいおかずになるでしょう」


 そんでもって、公爵さまはナプキンで口元を拭い、優雅に足を組み替えて、おもむろに言い出した。

「では、お茶のお代わりを頼もうか」

 はいはい、まだ食うんですね?

 さっさと次の、バタークリームサンドを出せとおっしゃってるワケですね?

 私はもう無駄な抵抗も思考も放棄して、ヨーゼフに笑顔を送っちゃう。

「ではヨーゼフ、お代わりをお願いね」


 お茶のお代わりとともに、バタークリームサンドとメレンゲクッキーが盛り付けられたお皿が粛々と配られた。

 うーん、やっぱりおやつというか、甘いものは別腹だわ。

 マルゴが焼いてくれたクッキー生地はさくさくで、バタークリームは濃厚。お酒のシロップに漬けてあった干し葡萄も、とってもいいアクセントになってる。

 私が一口食べてご案内すると、お客さんたちもいっせいにバタークリームサンドを口にした。


「これはまた、濃厚なクリームだな」

 公爵さまが眉を上げちゃってる。

 私は笑顔で答えちゃった。

「はい、通常の生クリームを使うのではなく、バターをクリーム状にしてあるのです」

「ふむ、それだからこれほど濃厚なのか」

 うなずいている公爵さまの横で、アーティバルトさんも感心したように言う。

「けれど、くどくないというか、しつこくない味わいですね。甘すぎなくて、酒の香りもいいですし……それにこれは、少し塩気もあるのかな?」


 はい、正解です。

 無塩バターを使ってるんだけど、マルゴがクッキー生地に少し塩を入れてくれたんだよね。ほんのりした塩気が、濃厚なバタークリームとすごくよく合ってるの。ホンットにこういうところ、マルゴは天才だと思っちゃうのよねえ。

 もう、言うまでもなく、バタークリームサンドも大好評ですわ~。


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― 新着の感想 ―
ジャンクフードの料理無双はそろそろお腹いっぱいです。 高貴な方々と言ってるのにかぶりつかせる食べ物しか作らないのもどうかと思います。
貴族がお料理にかぶりつくような品のない食事の仕方をするのだろうか、と疑問に思う。
[気になる点] 主人公の料理ってこの世界のいままでの料理に比べてかなりカロリーや脂質等が高そうで…男性陣はまだしもお母様とか結構モリモリ食べてるのでしばらくすると体型が変わってきそうなのが少し心配w …
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