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127.さらに増えた

今日は1話だけ更新です。

 うむ、それではパティを作ろうではないか。

 パン粉もたっぷり手に入ったことだし。

 私は大きめのボウルに作ったばかりのパン粉を入れ、牛乳を注いでふやかした。そこに赤身のひき肉を投入。塩と胡椒も振り入れた。

 うん、脂が少ないから、氷水で冷やすほどでもないかな。

 水に漬けてちょっと冷やした大きなスプーンでひき肉をざっくりと混ぜ、それから私は両手を水に漬け、ちょっと冷やしてからひき肉を捏ね始めた。


「手の温かさでお肉がダレちゃうから、冷やした手で手早く捏ねるのがコツよ」

 私の傍で、かぶりつきでマルゴが見ている。

 この辺はもうホントに好みの問題だけど、私は粘り気が出るほどまでは捏ねない。食べたとき、口の中でお肉がほどけるくらいが好きなんだよね。

 それに、そんなにしっかり捏ね回さなくても、サッと焼けるくらいの成形はできる。

 ざっくり捏ねただけのひき肉をひとつかみ取り出し、私はバンズの大きさに合わせて丸く成形する。そんでもって、右手から左手へパンパンパンと3回落として空気を抜いた。

「こうやって空気を抜いておくと、焼いたとき割れにくくなるの」


 真剣な顔でふんふんとうなずいていたマルゴが、言い出した。

「ゲルトルードお嬢さま、あたしにもひとつ作らせていただけませんか」

「ええ、いいわよ。やってみて」

 ホンットにマルゴは飲みこみが早い。

 私が作ってるのを1回横で見ていただけで、もうちゃんとできるようになるんだから。

「そうそう、はさむパンの大きさに合わせて……中央の部分が気持ち薄めになるくらいの感じでいいわよ」

 ハンバーグほどの厚みはないから、中央をくぼませておく必要はない。

 丸くて平らなパティが、次々と成形されていく。


「じゃあ、これを鉄鍋で焼きましょう」

 私は指示を出した。「このお肉のほかに、野菜も一緒にはさむのよ。レタスは手でちぎって……そうね、玉ねぎとトマトを粗みじんに刻んでおいてくれる?」

 こちらの世界というかこの国には、バンズと同じサイズに輪切りにできるような大きなトマトはないらしい。トマトは加熱して食べるのがメインらしくて、日本でいうミディサイズくらいで楕円形をしてる。


 パティはモリスが焼くことになった。

 大きな鉄鍋、要するにフライパンなんだけど、熱したところでさっと油を引いてパティを並べていく。

「中火で両面を焼いたら、ふたをして蒸し焼きね。お水は入れなくていいから、焦げないように気を付けて」

「わかりました」

 神妙にモリスはうなずいて、それでも結構慣れた手つきでパティを焼き始めた。


 マルゴが玉ねぎとトマトを刻んでいる横で、ロッタがレタスをちぎってる。

「ロッタ、レタスはもうちょっと大きめでもいいわ」

「は、はい! かしこまりました!」

「大丈夫よ、今日は試食だから。すぐに慣れるわ」

 ロッタはまだ緊張してるっぽい。

 まあ、初日で、しかも公爵さままでいるもんねえ。

 私はロッタに微笑みかけてから、カールを呼ぶ。

「カールも手伝ってちょうだい。焼いたお肉の上でチーズをとろけさせたいので、チーズを削ってくれる?」

「はい、ゲルトルードお嬢さま!」


 私は私で、バンズの準備だ。

 丸いバンズにパン切り包丁を水平に入れ、上下に切り分けていく。そんでもって、空いてる焜炉に鉄鍋を置き、熱したところでバンズを並べていった。切った面にちょっと焼き目が付くくらいでいいので、ホントに軽く空焼きする感じ。

 味付けは……うーん、チーズも使うことにしたから、マヨネーズと粒辛子でいいかな? 粒辛子、要するに粒マスタードって和辛子ほども辛くないから、アデルリーナみたいな子どもでも食べられるのよね。


 パティの第一弾が焼きあがったので、パティの上にカールが削ったチーズをたっぷり乗せ、火を切った状態でふたをしてチーズをとろけさせるよう、モリスに指示する。

 私は焼き目を付けたバンズのうち、下側になるバンズに薄く粒辛子を塗って、準備万端だ。

 モリスが呼んでくれる。

「ゲルトルードお嬢さま、チーズはこんな感じでよろしいでしょうか?」

「ええ、とってもいい感じよ」


 ああもう、お肉の焼けたいい匂いに、チーズのとろけた匂いまで重なって、めっちゃお腹が鳴りそう。

「じゃあ、その焼けたお肉をこのパンの上に載せてちょうだい」

 バンズの上にとろけたチーズの乗ったパティ、その上に刻んだ玉ねぎとトマト、さらにその上にちぎったレタスを重ね、レタスの上にマヨネーズを落としてバンズでふたをする。

 よし、ハンバーガー完成!


 はーい、そこ! そんな期待を込めまくった目で身を乗り出してこなくても、あとでちゃんと食べさせてあげますから!

 って、公爵さまだけじゃなく、お母さまもちゃっかり席に着いちゃってるし、いつの間にかアデルリーナまで、シエラに連れてきてもらったのかお母さまの横にお行儀よく並んで座ってるし。

 うん、お母さまとリーナはいいの。あとで一緒にたっぷり食べましょうねー。


 とか、私が思ってる間に、次々とハンバーガーができあがっていく。

 私の手順を見ていたマルゴが、焼き上がったパティを使ってどんどん作っていってくれちゃったの。

「ゲルトルードお嬢さま、次のお肉を焼きますですか?」

「そうね、とりあえず10個、作っちゃいましょうか」

 1回に5枚ずつパティを焼いてるので、2回焼いてちょうど10個。


 しかし10個で足りるかしらね? 公爵さまと近侍さんと、それにヒューバルトさんは絶対丸ごと1個寄こせって言うわよね?

 私やお母さま、それにアデルリーナは半分もあれば十分、っていうか、ここで丸ごと1個ハンバーガー食べちゃったら、晩ごはんが入らなくなるよ。もうひとつ、おやつの試食もあるしね。晩ごはん、ハンバーグを焼くつもりなんだけど……。


 うーん、モリスもロッタもいるし、それにクラウスにも食べさせてあげたい。

 やっぱ10個じゃ足りなさそう。

「マルゴ、あと5個、追加しておきましょう」

「かしこまりました、ゲルトルードお嬢さま」

 そうよ、余ったら時を止める収納魔道具に入れておけばいいんだし。作りたての状態でずっと保存しておけるんだから、ピクニック当日に出す分に回してもいい。


 だけどホンットに便利だわ、時を止める収納魔道具って。

 コレ、いくらくらいするんだろう? てか、ふつうに売ってるようなモノなの?

 こんなに容量はなくてもいいから、我が家にも1個、常備できないかな?

 だってコレがあれば、いまはマルゴが前日に作り置きしておいてくれる朝ごはんも、できたての状態で食べられるじゃないね?

 おやつの作り置きだってし放題になるから、マルゴに余裕があるときにいろいろ作ってもらっておけば、急なお客さまがあったときにも慌てなくて済むし。

 てか、ホンット、我が家は現在、毎日毎日急なお客さまだらけの状態だからね!


 なんてことを思ったせいなのかどうなのか、また増えちゃったよ……。


 次のハンバーガー製作を進めていたところ、厨房のドアがノックされた。

 見るからに申し訳なさそうなヨーゼフが、扉を開けて告げる。

「ベゼルバッハさまがご来邸になりました。なんでも、契約の件と意匠登録の件で、どうしても厨房に入る必要があるとおっしゃっておられます」

 ヨーゼフの後ろには、にんまり笑顔のエグムンドさんと、しょんぼり肩を落としちゃったクラウスが立っていた。


 そうね、クラウスがエグムンドさんのところへお使いにいった時点で、予想しておくべきだったわ。うん、クラウス、きみは悪くないよ。

 だって、このエグムンドさんが眼鏡キラーンしちゃって『ほほう、新作料理の試作が行われているのですか』なんて言ってくれちゃったら、クラウスには止めようがないもの。もう、その姿が目に浮かんじゃうわよ。


 しかしホンットーーーに、みんな、なんでそろいもそろって、こんなに食いしん坊なの?

 しかも毎日毎日、なんですぐ、我が家にやって来れちゃうの? みんなヒマなの?

 あーーもーーーーハンバーガー増量しといたのは正解だったけど!


年度末で仕事が詰まっていてへばってます(´;ω;`)

低気圧に追い打ちをかけられちゃってるし(気圧病)明日の更新も厳しいかも……週明けに少しでも更新できればと思っていますので、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
最初は美味しいご飯にはみんな釣られるよね〜と笑っていられたけど、誰も彼も先触れもなく押しかけて図々しく食事を要求するからうっとうしくなってきた… いろいろ助けてもらってるとはいえ、今後ヒロインはこんな…
[一言] ハンバーグに関しての言い訳としたら 小さい頃にお腹がすいて厨房にあった端肉や硬い屑肉や筋を、刻んで丸めて焼いたのが始まり てとこでしょうか?
[一言] えっと~、食いしん坊万歳(ガクッ↓)っていうダ○イングメッセージが残されそうな。まぁ半分くらい自業自得感ありますけど。
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