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120.新作を投入せねばならぬ

本日は1話だけの更新です。

 それでも、やっぱりまかり間違ってお料理が足りないという事態になることだけは避けたいので、ここはもう30名分をめどに用意することにした。

 残ったら残ったで、皆さんにおみやげに持って帰ってもらってもいいもんね。公爵さまなんか、喜んで持って帰るって言ってくれそう。特にプリンとかプリンとかプリンとか。

 いや、おみやげにしなくても、我が家に持って帰ってきてクラウスやエグムンドさんに差し入れしてもいいかもしれない。ええ、特にプリンとかプリンとかプリンとか。

 そうよ、これはフラグじゃなくて、単なるおみやげと差し入れ、おみやげと差し入れだから!


「では、メニューを整理しましょう」

 私は厨房の石板に書き始めた。「果実とクリームのサンドイッチ、細長いパンのサンドイッチ、ロールパンにお芋のサラダのサンドイッチ、それにプリンとメレンゲクッキー。あとは、どうしましょうね?」

 すぐにマルゴが答えてくれた。

「先日、ゲルトルードお嬢さまからご提案いただいたおやつは、材料を用意してありますので今日すぐにでもお試しいただけますです」

「あら、じゃあ今日試作してみましょう。材料さえそろえておけば簡単に作れるでしょうから、メニューに加えてもいいわよね」

「新しいおやつですか。それは楽しみです」

 うん、ヒューバルトさんも試食する気満々だよね。


 そんでもって、ヒューバルトさんってばおやつの試食に飽き足らず、勝手なことを言い出しちゃうんだ。

「軽食のほうも、何か新作はございませんか? もちろん、ロールパンに芋のサラダの『さんどいっち』も目新しくて非常によいと思いますが」


 新作ってね、簡単に言わないで欲しい。

 だって、今日を含めて3日しかないのよ?

 それにこの量じゃ、たぶん前日からフル回転でお料理に取りかからないと間に合わないと思う。試作する時間なんて、今日と明日しかないんだから。

 なのに、今日はこれから厨房でメルさまんチの料理人さんの講習会でしょ、明日はお昼ごろから家庭教師の先生3名と面接。いったいいつ試作しろと?


 そりゃ、時間があるなら唐揚げとかポテチとか試作してみたかったけど、どう考えても無理でしょ。

 せめてポテチだけでもなんとかならないかと考えてみたけど、大量の油とお鍋を用意して、しかも油切りの方法や道具も考えて用意しないと、厨房が大変なことになっちゃうだろうからね。やっぱ残念ながら今回は封印よ。


 と、新作はおやつ1品だけに決めた私に、ヒューバルトさんはにんまりと笑って言った。

「時を止める収納魔道具ですが、できるだけ早くお借りしたほうがよろしいかと。なにしろ、食材も大量に買い出して保管する必要がおありでしょうから。時を止める収納魔道具があれば、卵でも肉でも、野菜や牛乳、バターやクリームでも何でも、冷却箱に入れておく必要もありませんし、パンは焼き立てのまま、大量に保存できますよ」


 そ、それは確かに! めちゃくちゃ便利やん!

 ホンットにそうだよね、時を止めて保存できちゃうんだもん、パンは焼き立てのままだし、お肉や卵や野菜が冷却箱に入りきらないかもなんて懸念もなくなる。とにかく、必要な食材を思いついたまま買い出してきて、どんどん魔道具に放り込んでおくだけでOKなんだわ。

 まさにチートなファンタジーアイテムじゃん!


 思わず反応しちゃった私に、ヒューバルトさんはさらににんまりと笑ってくれちゃう。

「そうですね、おやつの新作はあるようですが、もしさらに軽食の新作もあるのでしたら、おそらく公爵さまはすぐにでも収納魔道具をお貸しくださると思いますよ?」

 うっ!

 そ、それは……!

 ど、どうしよう。

 でも、いまから新作を投入するとしたら……あっ、アレならできるかも?

 もうホンットに、はさむシリーズになっちゃうけど。

 私、なんでもはさむ子ちゃんって呼ばれちゃいそうだけど。でも、次にはさむんなら、まず間違いなくアレよね?


「ねえ、マルゴ。お肉屋さんで、腸詰めにする前のひき肉を購入することってできるのかしら?」

 私の問いかけに、マルゴは首をかしげた。

「腸詰めにする前のひき肉、でございますか? 頼めば譲ってくれると思いますが」

「じゃあ、もうひとつ、フリッツたちのお店で、またちょっと新しい形のパンをお願いしたいんだけど」

「はいはい、それはもう、喜んで承りますです」


「何か新作があるんですね?」

 もうワクワクしたようすで覗き込んでくるヒューバルトさんは置いといて、私はパンの形を描いてマルゴに説明した。

「こういう丸い形のパンを、水平に切り分けて、間に具をはさもうと思うの」

「その、はさむ具を、腸詰めにする前のひき肉で作るのでございますね?」

 さすがマルゴは理解が早い。

「ええ、そのひき肉で作る具のほかに、レタスと玉ねぎと、ピクルスもあるといいかしら。薄切りのチーズや、薄切りのトマトなんかを入れてもいいのだけれど。ソースはマヨネーズとトマトソース、それに粒辛子を少し混ぜるつもりよ」


「本日、試作できそうですか?」

 ヒューバルトさんってば、こっちも試食する気満々だわね?

「材料がそろえば、今日試作しましょう。ひき肉を調理するのだけちょっと手間がかかるけれど、後はまた本当にはさむだけだから」

 私はそう言ってマルゴに指示する。「多めに試作して、今夜の我が家の夕食にしてもらえばいいわ。ひき肉を調理するさい、少し手を加えるだけで十分主菜にもできるし」

「かしこまりました。ではまず、新しい形のパンを息子たちに焼くよう伝えなければ、でございますね」

「そうね。それに、腸詰めする前のひき肉も、お肉屋さんに分けてもらわないと」


 そんでもって、私はヒューバルトさんに向き直る。

「ヒューバルトさん、新作を投入しますから、時を止める収納魔道具を公爵さまからできるだけ早くお借りできるよう、交渉してきてもらえますか?」

「ええもう、喜んで」

 ヒューバルトさんはとってもイイ笑顔でうなずいて付け加えた。「ただし、本日新作料理の試作があるとお伝えすると、まず間違いなく公爵さまも来邸されると思いますので、それだけはご了承を」


 うがーーーー!

 ソレがあったかーーーー!

 絶対来るよ、公爵さま! もう食べる気満々で、客間どころか厨房へ乗り込んで来るよ!

 って、公爵さまってそんなにヒマなの?

 そんなに毎日毎日毎日毎日、我が家にやってきてて大丈夫なの?


 だいたい、公爵さまと近侍さんの分まで用意するとしたら、ヒューバルトさんにクラウスでしょ、我が家は今日からモリスとロッタも増えたし、全員に1個ずつ配るとしたら15個くらい作らなきゃダメじゃない?

 それってもう、試作とかいわないんじゃないのー?


 ああもう、とにかく時を止める収納魔道具さえすぐに借りられれば、必要な食材も片っ端から買ってきてOKだし、試作でもなんでも作った料理もそのまんまできたてで保存しておけるから、それで作り溜めていくしかないわ。

 公爵さまが食べに来ても対応できるよう、すべて多めに作ってしまおう!


 ちょうど、お使いに出てたカールも戻って来たし、お母さまのレオさまに届けるお返事も書きあがったし、私はみんなにしてもらうことを割り振った。

 ヒューバルトさんにはレオさまのところにお返事を届けてから、公爵さまのところで魔道具の貸し出し交渉をしてもらうように依頼。

 カールとクラウスには、フリッツたちのお店でパンを注文し、お肉屋さんでひき肉を買って、さらに市場で本日必要な食材を調達してくるよう頼む。


「食材は、明日、明後日には大量に買い出すことになるわ。いつも購入させてもらっているお店には、そのように伝えてちょうだい」

「わかりました、ゲルトルードお嬢さま!」

 いつも買い出しを担当してくれてるカールなら、しっかり必要な食材を買い集めてきてくれるだろう。今日はクラウスも一緒だし、2人で手分けして買い回りしてくれると思う。

「それでは行ってまいります」

 カールとクラウス、それにヒューバルトさんが出かけていく。

 そんでもって、ぴったり入れ替わるように、メルさまんチの料理人さんが到着した。

 ホントに慌ただしいことこの上ないわー。


キャラ一覧表、まだ登場していない主要キャラ(っていうのが何人もいるw)まで、この時点で掲載してしまうかどうか、思案しております。

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― 新着の感想 ―
[一言]  ヒューバルトがだいぶ厚かましい…ルーディが社畜になってしまう。
[気になる点]  ヒューバルトのクレクレ根性がひどい。公爵もそこら辺押しが強くて厨房に押しかけてきて厄介だけれど、公爵以上に厄介かも。また主人公がいいように使われる展開なのかな。
[一言] なんかヒューバルトが、こちらの事情につけ込んでくる寄生虫みたいで嫌だなあ。 今のところ、彼以外はまともなんだよねぇ。 他人への思いやりも無く、自分の要求を押し付けるだけの人々だけど、身分的に…
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