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執事失格です

「チャーリー、私に手紙は来てませんか?」


いつものようにクレイン様からの手紙が来るのを待っていると、チャーリーの返事もいつも通りだった。


「来てませんね。いつも通りです」


今日は玄関まで出てきたのに、やはりクレイン様からの手紙はない。


「元子爵令嬢ごときにウィルクス公爵様におなりになったクレイン様から便りが来るわけないでしょう」


何て物言いでしょう!


「チャーリー、あなたは執事失格です。

この邸の運営費は私が出していると伝えたはずですよ」

「たかが元子爵令嬢に金があるわけないでしょう!みっともない!」


チャーリーは、フンッ、と鼻をならしいつも通りツカツカと早足でブレンダ様のところに行った。



この時もまさかレーヴィ様が隠れて見ているなんて思いもよらなかった。



今日の昼にはジャンは来なかったけど、夜には来てくれ、ジャンにチャーリーのことを話した。


「チャーリーを解雇ですか…」

「そのつもりよ。ダメかしら?」


ジャンは即答で賛成してくれると思ったけど、少し顎に手を当て考えていた。


「クレイン様の留学が近いうちに終わりますので、それまでは…」

「…帰って来るのかしら?」

「必ず帰ります!」


必ず帰りますからお待ち下さい!というように、ジャンは拳を握って力いっぱい言った。

クレイン様が当主だから、それまで解雇は待てということだろうか。


でも、帰って来るなら早く会いたい。

婚約破棄をするにしても、一度でいいからまたお会いしたい。


頭に浮かぶクレイン様はいかにも貴公子らしく誰が見ても見目麗しい姿だ。


「…クレイン様にお会いしたいわ…」

「クレイン様も同じ思いですよ…」

「…違うかもしれないわ…」


ジャンは膝を突いて、私の目の高さで優しく言ってくれるけど、クレイン様から便りはない。


日に日に淋しさは募るだけだ。



そして、ジャンはウィルクス公爵邸に帰ってしまう。


「ウィルクス公爵邸の改装が忙しいの?」

「そうですね。やはり業者とはいえ、他人が入りますから…」


やはり、ジャンは無理して私のところに来ているんだろう。


「迷惑をかけてごめんなさい」

「迷惑だと思ったことはありませんよ。お嬢様」


そう謝ると、ジャンは柔らかい笑顔で言ってくれた。


「では、帰りますね」

「ご友人のレーヴィ様にはお会いしないの?」

「また今度にします」


変な二人ね。と思いながら、ジャンはウィルクス公爵邸に帰って行った。



ジャンを玄関まで見送り部屋に戻ろうとすると、今度はおかしなことに気付いた。

二階の廊下を歩いていると、主寝室から何か声がする。


主寝室はまだ誰も使ってないはず。

本当ならクレイン様の寝室で続き部屋は私の部屋になるはずだが、まだ結婚してないし、クレイン様もいないから主寝室に誰かがいることはない。

私の部屋になるはずの続き部屋も今はまだ、私は使っていないし。


泥棒にしてはおかしい。

泥棒の定石はこっそりだと思う。

あの変な笑い声と、時折聞こえる女性の甲高い声は何でしょうか?


主寝室を覗こうと、恐る恐るドアノブに手を伸ばそうとすると、後ろから口を塞がれ伸ばした手を掴まれた。


「…ッ!?」


血の気が引くと同時に、後ろを見上げるように振り向くと、レーヴィ様が私を掴まえている。


「エステル様…開けない方がよろしいかと…」


シィーッと言いながら、レーヴィ様は小さな声で静かに言った。


咄嗟に、レーヴィ様を突き飛ばすように離れた。

レーヴィ様も本気で掴まえる気はなかったのだろう。

すぐに離れた。


「…中にいる方を知っているんですか?」

「…エステル様が見るものではありません」


まさか、クレイン様が帰って来ているの!?

ここはクレイン様の寝室になるはずの部屋ですよね!?


「…クレイン様が中に?」

「違います!」

「では誰が?」

「……………」


レーヴィ様は目は笑ってないのに、口角を下弦の月のように上げ無言の圧力で私を見ていた。


「…レーヴィ様…開けます!!」


この状況に主寝室の中を確認せずにはいられなかった。


レーヴィ様が止めようと私はお構い無しに主寝室のドアを勢いよくバンッと開けた。





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