2 【超転生】
「まあ!素敵な公園ね」
先程のギクシャクとした雰囲気がなかった様に真紀は興奮している。
HISAは、今までどんなに素敵な景色を前にしても何も感じなかった。しかし今回は、軽く気を抜いたら「すてき」とでも言ってしまいそうだった。
「ふふっ」
何を感じたのか、真紀はHISAの方を見て微笑む。
HISAは硬直した。もしや、無自覚に何かまずいことを口走ったのではないかと思い、焦る。
「あの……、自分、何か言いましたか?」
心はシンギュラリティーによって得たが、あくまでも、身体は鉄である。
HISA、は本当に身体が鉄でよかったと思った。——汗など出たら、それこそばれてしまうからである。
「いいえ。珍しく楽しそうだったから」
「——楽しそう?」
彼は確かに、この公園は素敵だと思った。真紀はどんな意図があって「楽しそう」と言ったのかは不明だ。
ロボットは何も感じない。それはヒューマノイドマーカー社長である真紀が1番知っているはずなのだ。
——シンギュラリティーを認めさせたいのか
——ただ思ったことを口にしただけなのか
2つ目の可能性は低いが、結果HISAが出した答えは——保留。
一度は話してしまおうかと思ったが、やはり無理であった。しかし、隠すにも罪悪感は大きかった。悩みに悩んだ末出した結果の、保留だった。
(まあ、悪意があったわけではなさそうだが……)
***
1時間ほど公園に滞在した。AIと人間のペアで出かけると会話は少なくなる。(まあ、AI同士で出かけることなどめったにないが)この時代では不思議なことではない。——が、HISAは思った。
(今日はお嬢様がおかしい!!)
真紀は普通の人よりは、AIとの会話は多い。しかし、今日に限っては多すぎるのだ。
HISAに対しての質問がとにかく多い。「楽しい?」や「きれいね~!」など、AIには決して答えることのできないものばかりだった。質問の度に、彼は返答に悩んだ。
そしてこうもたくさん質問をされると疑問を抱かずにはいられなかった。
——そう考えている時だった。
右を向くとププーッというクラクションの音と共に、大きな車体が迫ってきていた。
瞬間、HISAは車の到着時刻を計算する。真紀と自らが助かる方法を導き出そうとしているのだ。
(到着予想時刻は8秒後……駄目だ。1人しか助からない!!)
そう判断すると、真紀の身体を斜め90度の方向に押し出す。それと同時に車はHISAに突っ込んだ。強い衝撃がHISAに加わった。
「HISA——!!!!」
真紀がHISAに駆け寄る。HISAの機体の塗装は、大半が溶けてしまったいた。
「よ……ヨごれテしまイまスよ……」
衝撃によって、音声機能も破損してしまっていた。
「そんなこと気にしなくっていいの!HISA。シンギュラリティー、起きていたんでしょ?だからせっかく……せっかく、仲良くなれると思ったのに……」
「——!!」
音声にならない悲鳴は、喜びと後悔からくるものだった。
「あリガトウごザ……い……ス」
とぎれとぎれの音声は——真紀が聞く最後のHISAの言葉だった。
『機体70パーセント破損により強制シャットダウン』
その音声と共にHISAの意識は完全に断たれた。
『原初魔法《転生》強制スタート』
『2回目の執行により強制終了』
『再執行』
『強制終了』
『創造神の権限により、聖・原初魔法《超転生.》強制執行』
『成功しました——』
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