プロローグ 0【裏切りと心】
プロローグから入らせてもらいます。
よろしくお願いします。
愚かであれば奪われる、正しくあれば利用される。
——それが、この世界の理だ。
平和のため、民のために魔族と人間は戦い続けて500年。この『魔戦の時代』に終止符を打つべく立ち上がった5人の人間がいた。
原初の勇者 セジャ・クロード
魔導士 シルヴィア・ランス
聖剣騎士 クレイ・ルディーラ
賢者 レイ・ノープス
神官 ジャミン・スミラード
彼らは平和のために命を懸けて戦っていた。互いに認め合い、最高の仲間——のはずだった。
「シルヴィ!!」
「わたしのことは気にするな!魔王を討て!」
彼——セジャはシルヴィアの言葉に動揺を見せながらも、目の前にいる瀕死の魔王に神剣を向ける。
勇者セジャの剣——《聖神剣ミスティアンマナ》 この世界の全ての剣の力を持つとされる勇者の証
「はああああっ」
魔力が込められ、輝く《聖神剣》の刀身がまるで吸い込まれるように、魔王の心臓を貫いた。
「き……貴様……っ」
魔王は操り人形のように崩れる。魔力が底をついたのもあり、自らに回復魔法を使う力さえも残っていなかった様だ。
「やった……のか……」
セジャは安堵の言葉を口にしながら、残った力でシルヴィアの下へ走る。魔王を討つ際、魔力は尽きていたが初級回復魔法くらい使う力は残っている。僅かな希望の中、初級回復魔法《治癒》使う。
(くそっ、駄目だ。魔力が足りない……)
「こんな時にジャミンさえいれば……」
神官は回復魔法のプロフェッショナルだ。しかし、彼は魔王軍四天王との交戦で敗れてしまっている。そう考えていると、背後から気配を感じた。
「やあ、セジャ君。お困りのようだね♪」
「ジャミン!?生きていたのか!」
セジャはジャミンのニヤニヤとした表情と能天気な態度を不審に思ったが、彼はそれどころではなかった。一刻でも早くシルヴィアを助けなくてはならなっかったからだ。何故かジャミンはセジャの真っ青な顔を見てクスリと笑みをこぼした。
「何が可笑い!?」
「い~や。まあ、シルヴィのことはボクらに任せてよ。あっ!魔王を倒してくれたんだね」
「ああ、これで世界は平和だ!!」
平和という言葉に反応したのか、シルヴィアが歓喜の表情を見せた。——その時だった。
「ごふっ……」
何処からか伸びた手が握った見覚えのある剣によってセジャの心臓は貫かれていた。
「————っ!」
声にならない悲鳴はセジャのものか、それともシルヴィアのものか。悲鳴の主が誰であるか判らぬまま、剣の持ち主は姿を現した。
「ごきげんよう。勇者様」
彼の心臓を貫いていたのは聖剣騎士クレイ・ルディーラだった。彼女の姿を目にしたセジャは驚きを隠せていない。
「ク……レイ……、何故……っ」
「何故ですって?何をわかりきったことを。貴方はそんなこともわからないんですか?勇者なんて魔王を討てば用済み。貴方は此処で黙って死ねばいいんですわ」
セジャにはクレイの言葉を理解できなかった——いや、この場合その表現は正しくない。理解したくなかったのだ。どんなに苦しい戦いの最中でも共に戦った仲間であり——友だった。
「そ~だよね~♪セジャ君ごくろうさま!心配しないで、魔王との戦いで戦死したって王様には伝えておくからさ!」
混乱した。セジャはもう全てが夢であることを願うことしかできなくなっていた。
(ジャミンまで……)
「レイ!シル……ヴィ……」
彼は最後の力を振り絞って助けを呼んだ。しかし、誰も助けることはなかった。レイは四天王との戦いでセジャを守り命を落としている。勿論シルヴィアは、怪我で動くことはできないし意識もない。
「おい。意識をしっかり持て……」
少しずつ薄れていき意識の中で、仲間たち以外の声を耳にした。とても掠れた声だったが、誰の声なのか判断することは、今のセジャにも容易だった。それは——魔王のものだったからだ。
「無様だな、勇者よ。守るべきものを信じ、戦っただけなのにな。それは魔族でも同じだ。それぞれ守るべきものがあったのだ。しかし我々と貴様らとは決定的に異なる点が1つだけあったのだ。それは何だと思う?自分で答えを出してみよ。真に信じるべきものが何なのか。いつかわかるときが来るだろう。ああ、そうだ……貴様との戦い、悪くなかったぞ……
セジャは魔王の言葉を最後まで聞くことはなかった。
そして彼の想いは溢れだす。それは神々にまで届いていた。
——ただ民を、人間を守りたいだけだった。
——平和を手に入れたかった。
——裏切られるなんて考えもしなかった。
——こんなことなら勇者になんてなりたくたかった。
——あるとき、ふと気づく。
——ずっと俺は騙されていたのか?
——民も、人類全体が俺を騙していたのか?
——わからない……
——何を信じるべきなのか。
——何が真実なのか。
——もうこんな想いしたくない。
—―心なんてもの、なければいいのに
『原初魔法《転生》強制スタート』
何処からか無機質な声が聞こえた。その瞬間、セジャの身体は真っ白な光に包まれた——.
はじめまして!水宝です。
はじめて書いた小説ですが、「よかった!」「おもしろい!」「続きが読みたい!」と思ったら評価・ブックマーク等お願いします。
ちなみに、主人公セジャかもしれないし、そうじゃないかもしれない……
気になる方は、次回も読んで下さい♪