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第3話 聖女らしい聖女とは



 わたしと彼女、フォルフィナファーナはテーブルを挟んで紅茶を飲んでいた。



「聖女、ねぇ」


「はい、伝承のとおりであれば、フサフキ様は聖女と呼ばれる存在だと思われます」


「理由を聞いても?」


「フサフキ様が降臨なされたとき、背後に光の門が見えました。すぐに消えてしまいましたが、あれはまさに伝え聞いていた現象で間違いないと思います」


 ちなみにわたしがタメ口なのは、そうして欲しいと言われたからだ。ついでに彼女のことは「フォルナ」と呼んで欲しいとも。


 長くて間違えそうな名前だったから、喜んで受け入れた。


「ああ、わたしのことはフミカでよろしく。三姉弟なので苗字? 家名で呼ばれるのはちょっと」


「畏まりました。以後はフミカ様とお呼びさせていただきます」


 ちなみにわたしは26歳。で、フォルナといえばまあハタチくらいだろうか。外人さんは大人びるのが早いというし、もしかしたらそれ以下かも。


 だからまあ、こっちの口調が許されるなら、それはそれで助かるってものだ。やたら高貴なオーラを放っているのがとても気になるけど。



 謎のバトルをかまして、一応ドローっぽい結果になった後、フォルナは急に丁寧になった。丁寧どころか、その口調はもう尊崇レベルになっている。


 んん? 口調?


「あ、あの、質問だけど、なんでわたしたち会話出来てるんだろう」


 相手はどう見ても日本人ではないし、生まれが日本で日本語ネイティブだったりだろうか。そもそもここどこだ?


 今更かもしれないけど、壮大なドッキリってやつか?


 でも、さっき戦った部屋からここまで来る間、廊下やら窓やら、いっそこの部屋の高級感はセットだとしたら、それはそれで凄いことになるぞ。


「わたくしはフィルト語で会話をしています。大陸西部での共通語になりますね」


「えっ? わたしは日本語で話しているんだけど、なんで通じるんだろ」


 と、驚いていたら、突然フォルナの目が潤み、涙を流し始めた。


 焦るわたし。格好良さを旨とする芳蕗三姉弟の長女としては、女の子の涙は見たくない。


「申し訳ありません、フミカ様。まさに伝承のとおりなのです。異なる世界から降臨されたにも係わらず会話ができるのも、そしてそれが『ニホン語』であるということも」


 てことは、その涙の意味は。


「フミカ様は『ニホン』という国からこられたのではないでしょうか?」


「え、ああ、うん」


 ちょっと気圧される。凄いなフォルナ、わたしが圧を感じるなんてそうそうないよ。


「300年程前の言い伝えです。口伝となりますが、隣国フォートラントは当時、暴君により苛政がなされていました。そんな中、圧政を打破しようと活動をしていた第五王子と第七王女のもとに、聖女様が現れたのです!」


 なんかいきなり語り始めた。ちょっと圧が強くなった気がする。てか、フォルナの口調が速くなってる。


「聖女サヤーカ様は、類稀なる美貌、圧倒的な武、明晰な知恵、そしてなにより人々の心を引き付ける弁舌をお持ちでした!」


 うん、凄いね、聖女。


「そして時の王国の状況を憂いた聖女様は、王子王女の手を取りました。対立する貴族たちを冷徹な利で説き伏せ、民々を扇動し、時には対抗する騎士たちをその力で叩き伏せてみせたのです!!」


 ところどころで物騒な単語が混じっていたような気がするけど、どうなるんだろう、この話。


「ついには、悪徳なる者たちを全て倒し、第五王子を新たな王とし、今現在のフォートラントの礎となしたのです」


 うん、クーデターを扇動して成功したってことか。



 フォルナはうっとりとした表情で私をいや、なんかどっかを見ている。涙はすっかりと消え、頬はうっすらと赤らんでいた。いっちゃってるなー、これ。


「そ、それでその、聖女様? サヤーカ様はどうなったの?」


「新王の求婚を断り、元の世界に戻ったと言われています。約束があるのだと」


「それが日本だってことかな?」


「はい」


 つまりは、その多分日本人のサヤカ様は、この世界? に来て、そして成し遂げて帰っていた、と。


 いやー、ベタといえばベタだけど、立派な英雄伝説だなあ、この場合、聖女伝説か。


 なんか、わたしの想像した聖女とは違う気がする。



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