0 とある教会にて
0 とある教会にて
目の前にいる化け物どもを凝視して、少年――柘植夕貴は呟く。
「あいつら全員、『吸血憑き』かよ……」
その呟きに対する返答が、夕貴の頭の中から返ってくる。
《そうだ。哀れ、吸血鬼に噛まれてしまって、その吸血鬼の魂の一部を流し込まれた、謂わば『生きている死体』だ》
頭の中に響く説明を聞いている間に、一体の『吸血憑き』が、夕貴に襲い掛かってくる。
「うわあぁぁぁっ!」
慌てて、その場から離れる夕貴。なんとかかわすことは出来たが、思うように動くことはできない。
なぜなら、彼は背中に傷ついた少女を背負っているからだ。
「ゆ、夕貴くん……わ、私のことはいいから……」
少女は夕貴のことを心配して、そんなことを言うが、怪我人の女の子を見捨てるなんてことは、夕貴には出来ない。ましてや、この娘は、夕貴にとって、大切な人だ。なおさら、見捨てられるわけがない。
なんとか逃げ切ろうと、夕貴は教会の裏口へ向かおうとする。
しかし、状況は絶体絶命のものとなってしまった。
「うっ……!!」
夕貴の目の前には、この『吸血憑き』たちの親玉が立ちはだかっていた。
すなわち、吸血鬼である
「もう、諦めたまえ……運が悪かったのだよ。君の中に、彼が入ってしまったことがね」
吸血鬼は諭すように話しかけ、手を夕貴のほうにかざした。
その手に、なにやら恐ろしいエネルギーが集まっていくのが分かる。
これが、魔力……と、夕貴は理解してしまった。
「ちくしょう……」
今までの人生の記憶が、次々と思い出される。
走馬灯、というものだ。
そして、走馬灯はすぐに、今日というこの日の記憶も映し出した。
懐かしい夢を見た、あの朝から――
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