表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Elasticity~最強の魔導士、最愛の家族と再会する~  作者: 桜 寧音
一章 デルファウスからの狼煙
4/74

1-2-2

本日三話目です。


「二人だけで納得しないでください!護衛に納得してくれたのはありがたいですが、せめて普通の人としての接し方とか……」


「普通の接し方って?」


「村の皆と接してる風でいいんじゃないかしら?」


「それは無理だ。村の皆とこいつは違う」


「あー、確かに」


 それは特別な接し方だったとシーラスは思ったが口にしなかった。この村はジーンにとって「特別」なのだ。


「じゃあ、首都のお知り合いは?」


「なるほど?研究会の奴らと接するようにすればいいのか。つまり会話は右から左だな?」


「それ、さっきと変わってないですよ!」


「首都の知り合いなんて、基本会話成立しねーし、会話そのものをしねーけど?」


 それが首都での普通の接し方。

 極端なのだ。特別大事にするか、深く関わらない。その二極しかジーンの中には存在しなかった。


「な、何故?」


「価値がないから?」


「情報交換とか、研究員から得られるものもあるでしょう?」


「いや全く?だってあいつらが話す内容って大体知ってるし」


 例えばこういう法則を見つけたとか、こういう魔導の術を発見したとか、こういう魔物がどこ地方にいたとか、そういうのをほぼジーンは知っている。

 また、彼らが話す内容は、ジーンの研究内容とほぼ関係ない。魔導についてはほぼ全て理解している。むしろ知りたいことは神術だ。

 魔導と対をなす神術。対をなすからこそ、研究するべきなのだ。


「ということで、お前はいないものとして扱おう。シーラスさん、今日もご飯美味しかったよ」


「それは良かった。じゃあこれ、明日の朝ご飯ね」


 渡された袋に入っていたのは、銀ホイルに包まれたおにぎり。この村の郷土料理だ。炊いたお米を丸か三角の形に結んで、中に魚だったりお肉だったり、野菜の漬物を入れたりする。


「ありがとう。いつも助かる」


「お昼にはもう出発してるわよね?お昼ご飯は要らない?」


「そうですね。一応正式な依頼なので迅速に動かないと……。今はまだ魔導研究会から抜けるわけにはいかないので」


「そう。今日はもう休むの?」


「もう少し読書します。いくら時間があっても足りませんよ」


 そう言ってジーンはシーラスの家から出ていく。これだけお世話になっても、シーラスの家でお風呂に入るわけでもなく、一緒に寝るわけでもない。

 ましてやおやすみの挨拶もしない。それでも彼女はジーンにとって特別なのだ。


「騎士様は今日どちらに泊まられるのですか?」


「先輩方と同じ集会所を借りる予定でした。あと、騎士様はやめてください。私はまだ騎士になって日が浅いので。ラフィアとお呼びください。それにあなたの方が年上ですよね……?」


「そうですね。ではラフィアさんと。ちなみに私は二十五歳ですよ」


「私は二十二です。騎士になって二年目です」


 ラフィアの予想は当たっていた。騎士の自分よりも落ち着いた様子を見てそう判断したのだが、それにしても目の前のシーラスは大人っぽい。


「今日はこちらに泊まっていかれては?いくら騎士とはいえ、男の方しかいない所で寝られるのはどうかと……」


「特に気にしたことはないのですが」


「ダメです。いくら騎士とは言えども、あなたは女性なんです。そういう部分を捨てるべきではありません」


 もうシーラスの中では決定事項であった。それを覆せないと悟ったのか、ラフィアは諦めて小さく首肯した。


「わかりました。今夜はここでお世話になります。……シーラスさんは、そういった部分を捨てていないので?」


「それはもちろん。女性だからジーン君にあれだけできるのだと思いますよ?男友達、というのもいいでしょうけど」


「彼のこと、好きなんですか?」


 単純な問い。

 ここまで他人である異性に世話をやけるというのは、そういった感情があるからではないかと邪推した。そうでもないと納得できないのだ。

 その問いに気を悪くした様子も見られず、シーラスは目を伏せながら頷いた。


「ええ。好きですよ。まあ、どちらかというと弟として、でしょうけど」


「弟としてなんですか?」


「そうじゃない想いもあるのかもしれないけど、私では彼の隣に立てないから。一緒に並ぶこともできない。手を取ってあげることもできない」


「手を……?あっ」


 じっと自分の手を見ていたシーラスの表情を見て納得していた。シーラスは神術士で、ジーンは魔導士だ。

 この二つがどうあっても相いれないのはとある現象が原因である。


 エレスティ。


 魔導と神術の間で起こるエネルギー現象。これは双方を傷付ける、魔導よりも危険な力だ。少しでも二つの力が干渉すればすぐに発生する。

 魔導と神術そのものの激突でももちろん起こすが、魔導士と神術士が手を触れるだけでも発生する。これは身体そのものに魔導も神術も流れており、身体の周りに薄い膜を張っているかのように力が巡っているのだ。

 お互いを傷付けてしまうなら、そもそも近寄らなければいい。これが魔導士と神術士の暗黙の了解なのだ。

 全部理解した後、不躾な質問をしてしまったことを反省して、ラフィアは頭を下げていた。


「すみません……」


「いえいえ。ああは言いましたけど、ジーンは結構無茶しますので、目を離さないでくださいね?」


「はい、わかりました」


 その後二人は一度先輩騎士たちの様子を見に行った後、風呂に入りそのまま就寝した。




明日は九時に一話、十八時にもう一話投稿します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ