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The Elasticity~最強の魔導士、最愛の家族と再会する~  作者: 桜 寧音
一章 デルファウスからの狼煙
25/74

3-4-1

すみません。

昨日遠縁の親戚が倒れて投稿できませんでした。

その方、独り身だったので保証人が必要で。

今日からは予定通り上げます。


 4



 えっと、お兄ちゃんが言ってたようにやるとしたら、ただ力を出すんじゃなくて、周りの力を受け入れるようにただ歩け、だっけ?

 そう日中に言われたわたしは、ただ歩きます。さっきお兄ちゃんが使った魔導の余波もないから、エレスティは発生しません。同じ神術同士、反発するものはないはずなんです。

 歩いて近寄って彼の顔を見て、あと大人三人分くらいの身長程度まで近寄ったら白い壁が見えました。ここまで近付かないとその壁があったことには気付きませんでした。たぶん、これが最後の壁。

 何も力を使わず、手を伸ばします。弾かれることはありませんでしたが、とても堅く壊せそうにありません。

 なので呼びかけてみます。


「えっと、レイルさん?わたしの声が届いていますか?」


 反応がありません。顔とか表情とか一切動きません。もしかしたらわたしがここまで来ていることにも気付いていないのかもしれません。

 さて、どうしましょう?声が届かないなら、届くようにこの壁に介入するしかないと思います。


 お兄ちゃんから色々な術を教わりましたが、結界を破壊するような術は教わっていません。そういう術もあるとは思うけど、必要ないとお兄ちゃんは考えたのでしょうか。それとも順番的にまだ早いのでしょうか。

 とりあえず、力を使ってみます。破壊するわけじゃなく、融かしていくイメージです。そんな術教わっていませんし、できるかわかりませんが続けてみます。


 すると、手を当てていた部分がグニャリと歪みました。上手くいっているみたいです。ちょっと力業ですが。

 あとはマナ?を放出して、同じ作業の繰り返しです。どんどん結界を融かしていって、ひとまずは声をかけられるようにしないと。

 意外と壁は厚いです。わたしの手と手首がすっぽり入るほど結界に手を伸ばしているのですが、まだ貫通しません。

 ……どこからこんな膨大な力が出てくるんでしょう?


 聞いていた話によると、一か月以上この人はこのまま力を出し続けています。それにさっきまで、この世界で一番の魔導士のお兄ちゃんから攻撃を受け続けてそれでも最後の層は守り切りました。

 それこそ、アスナーシャ教会の導師以上の力を持っているんじゃないでしょうか?会ったこともないので、どの程度の人かわかりません。ただ、お兄ちゃんが負けないと信じているだけです。


 そのお兄ちゃんが、苦戦していました。レイルさんを助けるために手加減していたからって、それだけの力を使えるなら実力は本物だと思います。

 そんな人がただの人間だと思われていたというのが不思議でたまりません。

 そうやって考え事をしながら作業を続けていると、手首が軽くなりました。どうやら貫通したようです。


「レイルさん、聞こえますか?返事してください」


「ッ⁉だ、誰だ⁉」


「エレス・ゴラッドと申します。世界で一番のお兄ちゃんを持った果報者です」


「……お兄ちゃん?」


 気になるところはそこなのでしょうか。声を聞く限り元気そうです。


「そのお兄ちゃんのお願いで、できたら自分でこの結界外してくれませんか?」


「……俺には、できないよ。自分の中から溢れる力をどうにもできないんだ。その結界だってどう作ったのかすらわからない。どうしようもないんだ。魔導士のお嬢ちゃん、悪いことは言わないから離れなさい」


 何か勘違いしているようです。訂正しましょう。間違ったままというのはいけないことだとお兄ちゃんも言っていました。


「私、力の分類としては神術士ですよ?」


「神術士⁉いけない、すぐに離れるんだ!エレスティが起こる!」


「……?えっと、レイルさん。あなたの力も神術です。同じ力同士でエレスティは起こりませんよ?」


 何で自分の力を誤解しているのでしょうか。エレスティが起こっていないのも一目瞭然なのに。


「いや、俺は悪魔(ドラキュラ)なんだ!そうじゃないと病が発生した説明がつかない!いますぐ、離れろ!」


「えっと、街の皆さんが体調を悪くしたのは、神術の多量接種らしいです。たしか、人体が受け取れる限界量?が超えちゃったとか……」


 わたしも詳しくはわかりません。お兄ちゃんが言っていたことをそのまま鵜呑みにしているだけです。だから原理とかはわかりません。

 街の中に神術の力が蔓延しているのはわかります。ただそれだけです。これぐらいの力なら全然苦しくはなりませんけど。


「そんな出鱈目が……。神術が人を傷付けるわけない」


「む。それは違います。神術だって人は傷付きますよ?エレスティが起こるので魔導士の方は傷付けてしまいますし、治癒術をかけてあげることはできません。治してあげられないんです。それはたぶん、心も痛めてしまいます」


「ハハッ……。優しいお嬢さんだねえ。魔導士を人間扱いなんて、ほとんどの人がしないよ。アスナーシャ教会や魔導研究会の目がある所では表立って言えないけど、皆魔導士は毛嫌いしてる。あれは何かを傷付けることに特化したバケモノだ」


「聞き捨てなりません。訂正してくださいッ!」


 今の電化製品のほとんどは魔導士の方が作るマナタイトが動力になっていると聞きました。生活に密接しているのに、それを提供してくれている方々をバケモノと呼ぶなんておかしいです。ただ強い力を持っているだけではないですか。

 それに、お兄ちゃんをバケモノ扱いは許しません。わたしの命の恩人です。バケモノだって蔑まれていたわたしを助けてくれたのは、紛れもなくお兄ちゃんなのです。

 バケモノを助けてくれた方のことをなんて言うのでしょう?神様?


「魔導士の方々が、私たちに何か危害を加えましたか?わたしは、魔導士のお兄ちゃんに助けられました。山賊になったりする魔導士の方もいらっしゃるみたいですが、全員が悪い人じゃないはずです」


「アース・ゼロを起こした奴が悪い奴じゃないと?」


「それで全体を見ないでください。それはアース・ゼロを起こした人が悪い人だったのかもしれないだけです」


「……世界を混沌に陥れただけで、充分その力は悪さ。世界を変えちまったんだからな」


 そもそもわたし、アース・ゼロなんてまともに知りません。十年も前の話です。知っているはずがありません。お兄ちゃんやラフィアさんの話によると原因は不明で、おそらく魔導士が関わっているくらいしかわかっていないんです。

 それでどうしろっていうんですか。


「わたし、バカなので難しいことはわかりません。でも、事実があります。わたしは神術士だから虐められていました。助けてくれたのは魔導士のお兄ちゃんです。だから、神術士とか魔導士とかで一括りにしないでください」


「神術士なのに、虐められていた……?」


「そうです。どんな傷でも塞いでしまうから、えっと……アンデットとか呼ばれてました。たぶんレイルさんも力が強すぎるから悪魔(ドラキュラ)なんて呼ばれちゃってるんです。だってこの防御術式?防壁術式?とにかくこの壁、人間も神術士も通れないんですもん」


 これはそういうもの、たぶん拒絶の結界。どうしてそんなものを作ってしまったのか。それはきっと、人間からバケモノへの周りの目線の変化。

 わたしの時と一緒です。それが、力として暴走してしまっただけ。


「レイルさん。周りの人が何と言おうと、わたしもあなたもただの人間です。バケモノなんかじゃありません。お兄ちゃんが言っていましたけど、バケモノは心を持っていないみたいです。お兄ちゃんと一緒にいるだけで幸せなわたしや、怖いって思ってるレイルさんはバケモノじゃないですよ?」


「こんな……人を苦しめてる俺が?」


「どういうことがあってこうなったかはわかりません。でも、今話している様子からレイルさんはそんなにひどい人だと思えません。魔導士に偏見を持っているみたいですが、それなのにわたしが近付いて来たら離れろって言ってくれたじゃないですか。それだけであなたにはまだ心が残っていると思います」


 心配してくれた。それだけで充分だと思います。それ以上の証拠はいらないのではないでしょうか。


「レイルさん。たぶんアスナーシャ教会の人たちが、力の制御の仕方を教えてくれると思います。だから、まずはご飯を食べませんか?一か月以上ご飯食べていないのは神術のおかげで平気だとしても寂しいと思います」


「俺が悪魔になったから平気なんじゃないのか……?」


「だから、わたしはバカなので詳しいことはわかりません。頭の良い人に聞いてください。わたし、神術ちゃんと使い始めたのはつい最近なので。理論とか勉強中の身なのでよくわかんないです」


 頬に空気を集めて膨らます。

 どうしてこの人はわたしに意見を求めてくるのでしょう?ほとんど答えられないのに。わたしだってお兄ちゃんに聞くばかりで、教わる側なのに。


「わたし、ちょっと怒ってます。お兄ちゃんはあなたを助けるために傷付きました。火傷の痕とか、痛々しかったです。もうお兄ちゃんが傷付くのは見たくありません。色々疑問があると思いますが、わたしには答えられないので後で誰かに聞いてください。あなたが折れてくれないと、またお兄ちゃんが傷付くかもしれません。それは許せません」


「……折れてって、言われても」


「なんかぶわーってなってるのをポイって捨てちゃえばいいんですよ!色々考えてるのをどこかに放り投げちゃってください!考えるだけ無駄です!だって、わたしにもレイルさんにも解決できませんもん!」


 説明が雑になっちゃいましたが、そんな感じなのがわたしが神術を使う時のイメージです。お兄ちゃんに言っても、「人それぞれだから」と言われたのでそのままです。それで使えたり、力のオンオフができるんですから、問題ありません。

 それにわたしたちには解決できないのも事実です。だってお兄ちゃんにも原因はわかっていないんです。レイルさんの状況も見ずに暴走し始めた状況も聞いていなくてわかるはずがありません。

 そういう調査を行うためにも邪魔な壁は破壊してほしいものです。



この後十八時にもう一話投稿します。

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