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The Elasticity~最強の魔導士、最愛の家族と再会する~  作者: 桜 寧音
一章 デルファウスからの狼煙
12/74

2-2-2

本日二話目です。


 買った服は袋に入れてもらい、店を後にする。そのまま預かり屋に行くと、先にラフィアがついていた。もう食材も荷台に運び終えていた。


「腐りやすいものは買ってないだろうな?」


「魚を少し買いましたけど、それくらいです。お肉は香辛料をまぶしておきましたし」


「……どっちも狩りで採ればいいじゃねーか」


 今までもそうしてきたのだが、買ってしまったのであれば仕方がない。服もさっさと載せ、食材を確認する。野菜類に調味料に、先程言っていた肉類。四日分はありそうだ。

 この食材たちは魔導によって作られた冷蔵庫の中に入っている。魔導を用いたもので、こうして馬車でも用いることができる。中に魔力を含んだ鉱石、マナタイトが内蔵されており、三年ほどは用いれる。

 マナタイトは高級品だが、他の物を変える必要がないので資源的には優しい。ちなみにこのマナタイト、専用の鉱石があれば魔導士なら作成できる。

 ジーンはこっそり権力を用いてマナタイトを作成し、村の皆に売っているのはナイショのはなし。


「ほら、エレス。乗りな」


「うん」


 ジーンはエレスの手を取って御者台に乗せて、そこから荷台へ通す。荷台の中を見て、目を丸くしていた。


「すっごい豪華……!」


「そうか?ラフィアもさっさと乗れよ」


「はい」


 ラフィアも荷台に入り、馬車は進む。門も抜け、外に出てようやく御者台にエレスがやってきた。


「このお馬さんたちも、お兄ちゃんのお友達?」


「まあ、そうかな。八年前からずっと一緒だよ」


「そんな前から……」


 エレスは馬たちに手を伸ばそうとするが、ジーンが手首を掴んでそれを止める。


「今は走ってるから危ない。止まったらいくらでも触っていいから」


「うん」


 そのまま手を戻して、御者台に居座る。もう陽も落ち始めているので、風が冷たくなり始めている。それでも、エレスは荷台の中には戻らない。


「中の方が暖かいぞ?戻らないのか?」


「平気。外の景色見るの、久しぶりだから見てみたい。……夕日、綺麗だね」


「……綺麗、か」


 たしかに夕日が落ちる寸前というのは、絵にもなるほどなのだからきっと綺麗なのだろう。

 だが、世の中にある物で綺麗だと感じる物はジーンにはない。美というものを、感じ取れないのだ。暖かさは感じるのだが、美しさはわからないのだ。


「?綺麗だよ?」


「お前にはそういう気持ちが残ってるんだな。良かったよ」


「……お兄ちゃんには?」


「アース・ゼロの後からはきっと、そういうのがわからなくなった。お前の方が辛かっただろうに、情けないよ」


 世界中を回って、様々な物を見てきたが美しい・綺麗と思ったことはなかった。まず、人間の心に、表情に目が行ってしまい、そもそも目を向けていたのかすら怪しい。


「このお馬さんたちも、綺麗だよ?毛並みとかも整ってるし、尻尾とかも可愛いよ?」


「そっか。こいつらが綺麗か……。良かったな、お前ら」


 その言葉に馬たちはヒヒンと鼻息で回答した。こいつらは本当に人の言葉がわかる。そのことにエレスが感心していた。


「お利口さんなんですね。この子たち」


「言葉なら大体理解してるよ。それに色々勘が良いんだ」


「この子たちはジンお兄ちゃんの家族なんですね」


「お前ももう、家族だよ」


 そう言ってジーンはエレスの頭を撫でた。家族、というものは正直よくわからない。それでもこれからは、二人は家族だ。


「これからはエレス・ゴラッドを名乗れ。ちゃんとした戸籍は首都に着いたら作るから」


「それって……」


「書類上は、だけどな。今からエレスは俺の妹だ」


 これは契約。

 少女が大人になるまで、一人でも生きていけるまで保護をするという制約。それを交わしているだけだ。ただ、これは初めてのことである。今までだって魔導士の子どもは引き取ってきた。だが、家族になったことはない。

 全て孤児院に預けてきた。きっとエレスがただの魔導士であれば、同じようにしてきただろう。だが、エレスは違うのだ。


「兄妹に、なっていいんですか?」


「……嫌だったか?」


「嫌じゃない!嬉しいよ!」


「なら良かった」


 そう言って微笑みながら、更に頭を撫でてあげた。それにエヘヘという笑みをエレスは返す。

 そんな二人の様子を荷台から見ていたラフィアは、正直変な目で見ていた。


(あの、兄妹っていうより恋人っぽいんですけど……)


 あれが会って数時間の間柄なのか。むしろ何年も付き合っているカップルか、もうずっと一緒に暮らしている家族のようだ。


「……エレス、荷台の中に入れ。ラフィア、魔物だ」


 馬車が止まり、御者台に置いておいたトンファーを手に取ってジーンは降りる。ラフィアもすぐ降りてきて、戦闘態勢に入る。

 そんな二人の様子を見て、エレスはオロオロしていた。


「エレス。じっとしていてくれ。すぐ終わらせてくるから」


「わ、わたしは……」


「いいよ。待っててくれるだけで」



明日も九時に一話、十八時にもう一話投稿します。

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