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The Elasticity~最強の魔導士、最愛の家族と再会する~  作者: 桜 寧音
一章 デルファウスからの狼煙
1/74

プロローグ ~十年前~

新連載です。


他の作品の評価なども見て、連載続けていくか決めます。

 プロローグ~十年前~



 ()(どう)神術(しんじゅつ)。その異なる力はお互いを反発し合う。何ものでも傷付ける魔導。全てを癒し、人々に神の祝福を与える神術。正反対の力は大自然の力すらその手に掴み、時に暴走し、大災をもたらす。


 これはそんな大災をもたらした、十年前のある記録。


 それは首都にほど近い、とある研究所で行われた実験の記憶。

 そこで一人の女性と小さな黒い渦が対になるように広い実験室で壁に拘束されていた。その上で起きている現象は魔導と神術の反発。それも大規模なものだ。これほどまでに魔導と神術を極めた人間は世界にいないと思われるほどだ。

 黒い渦の方が魔導、女の人の方が神術を発動させていた。その力をぶつけ合わせていて、どこまで反発するのか。それを調べる実験だった。

 この反発する力が世界中に広がった場合、何が起こるのか。それを知るための実験だった。

 勢いとしては魔導の方が強いか。女の人も必死に合わせようとしていたが、彼女はこれ以上の力は出せなかった。


「もっと、もっと力を抑えつけなさい!その子は暴走しているわ!」


 黒い渦は言葉にならない声で叫び続けていた。その声は悲鳴であり、慟哭であり、懺悔であった。

 その黒い渦の力を渦とはまた違う黒い影が抑えつけていた。それが人間だとは思えない。だが、実際に幾ばくか魔導の力を抑えつけていた。

 それでも、その黒い影は完全に抑えられず、黒い渦の力は増すばかりだった。


「―これ以上は無理だ!オレの力を超えている!」

「なら、私に力を貸しなさい!アスナーシャ!」


 アスナーシャ。

それは神術における神そのものの名前。このアスナーシャから力を借りる者が神術士。神術を預かる者。

 女の人の呼び声に呼応するように、アスナーシャと思われる存在は現れた。その存在は白い光に包まれた女性のシルエットをした神であった。


「―力を貸すのはやぶさかじゃないわ。でも、そうするとこの反発はさらに勢いを増す。……簡単に言いましょうか?世界が滅ぶわよ」

「ならどうしろと⁉」

「―セニス。その子と一緒に死ぬことはできる?」


 それが神の下した決断。それが唯一、今の状況をまだましにする手段。



 彼女はどう答えたか。そこまでの記録は残されていない。

 そもそもこの実験は、本当に反発がどこまで起こるものかを実験するためのものだったのか。

 それもわからないが、客観的な事実を述べよう。

 この研究所を中心として、大きな爆発が起きた。そしてその爆発の後、二つの力、魔導と神術の力が混ざった波が世界を覆い、その力の波の影響を受け耐えられなかった者が死にゆき、魔導と神術を使う者の力は増幅した。

 この事件はアース・ゼロと呼ばれ、今までも魔導を使う魔導士はその力の凶暴さゆえに虐げられてきたが、その様は増大し、さらに忌み嫌われるようになった。

 この記録は、贖罪でも何でもない。ただ、記すべきだからこそここに記そう。

 どうか、この記録を読む者は。

 アスナーシャと対をなす、魔導の祖プルート・ヴェルバーの意志を継ぐ者であるように。



                     ~古びた黒色の手記より~



この後十八時にもう一話投稿します。

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