3話
とりあえず、うちに連れて帰りました。
運んでいる間に気を失ってしまったので、ベットに寝かせときます。
はぁ、疲れた……。 どうしてこんな事に……。
もしかして……お母様の結界が弱くなっていた……!
いいえ、それはあり得ないわ。だってお母様が人の寄り付かないこの森に追っ手の追跡から目眩しする為に張ったこの世で二つと無い最強堅固な最高傑作の結界よ。
どんな武力も魔力も通さない、生身の人間では通れない事を前提に創られた陣は、お母様が生前自分の生命と引き換えに供給してきた世界一の守護武器。
魔女最強と謳われたお母様が地形把握をする為に数日歩き回って図案に描き起こし、綿密に調整したお母様の結界に偏りが出来る、ましてや破られる事など決してあり得ないわ!
けれど、何故あの人が入れたのか、その理由が説明出来ない。
何故あの人は入れたの……? どうして…?
………あああっ!ダメだわ!どうしても答えが見つからないっ!幾ら考えでも出ない答えは直接問題に解決して貰えばいいのよ!
よって今は今日の夕食を作ってしまわないと!
という訳で、あれから男性の目が覚めるまでは夕食とケーキ作りをしていました。
ケーキは何を作るか話しましたが、夕食はまだでしたね。
メニューは、シャキシャキ食感のレタスとミニトマトのサラダにレモンエッセンスが入った爽やかハーブドレッシング。 肉汁溢れるホロホロハンバーグ。 フワフワモチモチ白パンと、私の特に好きな物の他にお客様が出来ましたので料理を増やしました。
鶏肉のまろやかクリームシチューにミートソースがたっぷりかかったスパゲッティ、クリームシチューにマカロニを入れたものへチーズをのせた熱々グラタンとスパゲッティに使ったミートソースに野菜を足してこれにもチーズをのせてラザニアにしました。グラタンもラザニアもチーズが程よく焦げていて外はカリカリ、中はトロトロです!
はぁぁ……! 我ながらいい出来栄え。見ているだけでヨダレが出て来ちゃうっ!
男性はとっても大きな方でしたので、これだけ増やしたら十分でしょう。ちょっと食費に響いたのですが、まぁ、いいでしょう。野菜や果物は自家栽培しているので問題ありません。薬草も今採れるものがある程度あるのでお金も贅沢しなければ大丈夫です。
なんてたって、今日は私の誕生日です。今日ぐらい贅沢したって文句は言われないでしょう。行き倒れのあの人と遭遇したのも何かの縁かもしれません。
身の回りで起こった出来事は自分の人生において大切な可能性を秘めている事もあるから大事にしなさいってお母様にも言われましたしね。この出会いも大事にしましょう!
そういえば、あの人はどうされているのでしょうか。ちょっと様子を見に行った方がいいかもしれません。寝かせておいてから結構な時間が経っていました。もう夕食を食べて始めてもいい時間帯です。
もしかしたら、もう起きていらっしゃる頃かもしれません。
そう思い、アルミリヤが座っていた席から立ち上がった丁度その時扉が開かれた。
アルミリヤの背では男の腹しか見えない顔をそろそろと上げるととても美しい金の瞳が静かにこちらを見下ろしていた。