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新生魔王軍  作者: 神田川一
3/4

魔王

 リアとともに新生魔王軍を立ち上げてから、二ヶ月後。

「ここまで、上手く行くとはね」

「勝てる戦い以外はしていないんだから、当然の結果だろう」

 小高い丘の上。敗走する人間軍を眺めながら、リアとオレは呟いた。

 ――オレたちの軍は、各地で連戦連勝していた。

 神出鬼没、撃っては逃げるオレたちに対し、敵は効果的に反撃する術を持たなかった。

「そうは言ってもさ。よく毎回上手に、敵を誘き出せるものね。あんたの手腕には感心するわ」

「略奪を許可してもらってるからな」

 肩を竦めて見せる。

「略奪が行われれば、そこへ敵の救援隊が向かうのは必然。待ち伏せなんて簡単だ」

 オークやゴブリンを扇動して敵を誘き寄せ、タイミングを見計らって背後から襲う。それがオレたちの、基本的な戦術だった。

 それを幾度も繰り返し、勝ちを続けたオレたちの軍は旧魔王軍の大半を吸収し、すでに当初の十倍を超える規模に膨れ上がっていた。

「リアの軍につけば勝てる、が魔界の定説になりつつあるな。加速度的に、味方が増えている」

 最近では勝ち続けてきたことによって、リアにも新しい魔王としてふさわしい、貫禄が身に付いてきたようにさえ感じる。

 一方、オレのほうはオレのほうで。新生魔王軍の有能な参謀として、不動の地位を築きつつあった。

「いつまでも騎士だの勇者だのと、プライドが高すぎるのも、人間の弱点だよな。だからなかなか、戦い方を変えられない。柔軟性に欠ける」

 魔族の戦い方のほうが洗練されているなどとは、認められない余計なプライド。魔界のモンスターは低脳だと侮る心持ち。

「おまけに、地の利までもがこちらにある。負けるわけがない」

 とはいえ。そろそろ規模が膨れ上がった新生魔王軍の、再編などをしなければならないか。

 人間軍もいつまでも、こちらを侮ってはいないだろうし。

 って、ん? 何だあの敵の部隊は――。

 オレは手をかざして、目を凝らす。

「やるな、あの敵の部隊」

「そうね」

 リアも、目に留めていたらしい。

「きっちり、殿しんがりの役目を果たしてるわね」

 オレたちの視線の先では、敵の最後尾の部隊が善戦していた。

 余計な反撃はせず、全員が大きめの盾で矢を防ぐことに徹している。しかも、魔法で守備力を上げているようだ。

 ――剣や槍で矢を打ち払う。弓の有効射程内において、そんな真似は到底不可能である。矢を防ぐには、盾が最も有効だ。

 リアが言ったとおり、彼らはきちんと殿の役割を理解している。指揮官が有能なのだろう。上級騎士だろうか。

「ああいう部隊は、ここで潰しておきたいわね」

 リアは愛用の複材合成弓コンポジットボウを手にした。やれやれ、血気盛んな魔王様だ。

「ここからじゃ、間に合わないだろ」

 オレは首を振る。

「そんなのはやってみなきゃ、分かんないでしょ」

 リアはウインクして見せた。

「まあいいけど」

 ため息をついて見せる。

「深追いはしないでくれよ、総大将なんだから」

「分かってるって」

 リアは直属の精鋭部隊を率いて、風のように森へと消えていった。さすが森の住人、ダークエルフ。

 死んだな、敵の殿。

 ――誤解している者も多いようだが。 武器格闘戦において、一騎当千の歩兵なぞ存在しない。しかし、一騎当千の弓兵は存在する。

 そして、リアは魔界で随一の射手。誇張ではなく、矢玉の補給が整ってさえいれば、リアは一日で千人を殺す。容姿に似合わず、その非情さと戦闘力は正に魔王だ。

「一応、オレも行っとくか」

 万が一、ということもある。オレはリアを追い、直属の部隊を率いて森に向かった。

批評、感想お待ちしています(^^/

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