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[05]

月は、何もかもを知っているかの様に私を見つめている気がした。

ただ宇宙に存在している星なのに、どんな星よりも綺麗に見えて、どんな星よりも孤独に見えた。


担任と彼が帰った後に、ママと夕食を食べていた。

ママは笑顔で私に話しかけてきた


良い担任じゃん――とか

良いクラス委員長だね――とか


改めて、自分が中学生である事を実感した


学生らしくない学生だな――


と寂しい気持ちもあったが確かに自分が存在している事に少なからず喜びを感じていた。

食後に薬を飲み少しテレビを見て、19時過ぎにお風呂に入り、長い髪をドライヤーで乾かして、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し部屋に戻った。

ベッドの脇のコンセプトに繋がれた充電器と充電されている携帯。

視界に入った携帯を手に取った。


彼に…連絡――


机に置いておいたメモを便りに携帯にメルアドと電話番号を登録した。


メールボタンを押して"國分"を選択してメールを打った。


--------


今日はありがとうございました。

学校の事が気になっていたので、助かりました。

何か行事等があれば写真や國分さんの感想などが聞けたら嬉しいです。

先生にも宜しくお伝え下さい。

では、また。


藤沢 未歩


--------


送信ボタンを押して携帯をポケットに入れてリビングに戻ってテレビを見た。

最近はお笑いブームで沢山のお笑い番組を見てる、意外とブームに乗っている自分に優越感に浸っていた。


きっと――学校行ってたら、次の日に友達とテレビ番組の話やドラマ、お笑いの話をしたりするんだろうな――


何だか虚しくなった。

ソファの上でクッションを抱え体育座りをしてテレビを見ながら、少しだけ我に返っていた。


普通の子――

普通の子ってなんだろう――


自問自答を繰り返しながらも

確かに自分が自分であり、世間一般的な普通の子とは違う部分を微かながらに探してしまう自分に苛立ちを覚えていた。


自分は自分なのに――

でも、もし強かったら――


すると、ポケットに入れていた携帯が鳴り始めた。

携帯のサブ画面には"國分"と表示され、受信音が鳴り終わるとメールのマークが画面片隅に残った。

携帯を開きメールを確認する。


--------


メールありがとう。

お互い同じクラスだし、堅っ苦しいの嫌いだから敬語は止めよう。

それと暇な時はいつでも連絡して構わないよ、藤沢さんとクラスが少しでも繋がれば嬉しい事だから。

言われた通り、学校行事とかの写真とか、その日の流れとかをメールで送ったりするよ。


早く元気になって、学校で一緒に卒業出来るといいね。


國分 隼人


--------


はやとって"隼人"って書くんだ――

最初の感動はそこだった。

顔文字も絵文字も無い、質素なメールだったけど、彼と出会った事で学校と繋がれて、今以上に彼を知れる…。

たかがメールのやり取りだけど、ほんの1cmだけ距離が縮まった気がした。


彼は病院の事――覚えてるのかな――


先日の事を思い出した―


彼の横顔に彼の後ろ姿…


何考えてんだろう―

ふと我に返るとパパが帰って来た。


パパは所謂、親バカ。

誰かが勢い良く階段を駆け上がってきた。


ダダダダダ…


『未歩ー!』

パパの声が部屋の外から聞こえた、きっと廊下やリビングにまで響いてるだろう。

私はドアを開け苦笑いしながら『おかえり』と告げた。


『今日、学校の先生とクラス委員長が来たんだって?どうだった?パパも会いたかったな…』

パパは一度に幾つもの質問を重ねる合わせるから何から話せば良いか、たまにわからなくなる。


『で?クラス委員長はどんな子だったんだ?』

『普通の子…かな…てか部屋入れば?仕事終わりに立ち話は疲れるでしょ?』

ドアを大きく開け私は椅子に座った。

『い…いいのか? 最近の若者は部屋に親を入れるのを嫌がる思考があるらしいからな…ま、未歩が言うならお邪魔します。』

パパはにこやかに部屋に入りベッドに座った。


パパは外資系の仕事をしていて海外出張も少なくはない。

その分、家族サービスを忘れない。

外見は背は高いし、ルックスもバッチリ、眼鏡も似合うし自慢のパパ…親バカ以外は。


ひとまず今日一日の出来事を話した。

パパは『そっか…ちゃんと学校行けるまで、頑張らなきゃな』と一言告げ『お邪魔しました!おやすみ』と言って部屋を出て行った。


頑張る――頑張るって何を頑張れば良いんだろ―努力したって病気は治らない、それに頑張っても学校に行ける保証が無い――


また自分に問いかけ自分を責めていた。

問いかけ続け責め続け、最終的には溜め息をついて幕を下ろし、倒れる様にベッドに寝転がった。

手にした携帯を開き彼にメールを返して部屋の明かりを消して、月明かりだけを部屋に残して夢の扉を叩いた。


夢は覚えていない

覚えていても、たいした夢じゃない。

夢――私の夢ってなんだろ―


やがて白く綺麗な月が太陽を拒絶するかの様に沈み朝が来る。

夢の中でも私は私に問いかけていた。


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