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[04]

今日は天気が良かった。

冬空にしては温かい一日。


毎朝の儀式の様な初恋を終え、窓際で伸びをした。


『んー…朝ごはん食べよ』


部屋を出て階段を下り、リビングに向かった。

ママは朝ごはんの支度をしていてパパは朝早くから仕事に出て行った後だった。

『おはよ』

『あら、おはよ、良く寝れた?』

昨日の事はきっと一生忘れないだろう。

自分の体の事を知り、その病気が"死"に繋がる事も。

たった13歳の私に死を受け入れるのは耐えがたい真実だった。

でも、逃げる場所もない私には、どうにも出来ない事でもある。

『うん、何か寝過ぎて更に眠いかも』

と、笑いながら話し朝食を済ませた。


それからリビングでテレビを見ながら過ごしていた、ママは朝食の片付けをしていた時だった。

珍しく午前中に学校から電話が来た、ママはペコペコしながら話していた。


会話が終わり電話を切って台所に戻って行った。


『どうしたの?』

私は当たり前の様に聞いた。

『今日、学校が終わったら担任の先生とクラスの委員長さんが来てくれるって』

ママは笑顔で私に話してくれた。


『ふーん』と言って、またテレビに目を向けた。

ソファに横になりながらテレビのリモコンでチャンネルを変えていた。


―クラスの委員長―


誰だろう――

きっと女の子だろうな―

クラスの委員長だから、頭良くて堅物で眼鏡かけて敬語で…あぁ嫌だ嫌だ――


勝手にクラス委員長を想像で作り上げ毛嫌いしていた。

イメージするクラス委員長はどれも最悪で逆に面白かった。


そういえば…担任ってどんな人だっけ―

確か男で――

あぁ、どうせ午後に来るからいいや


曖昧な記憶から無理矢理人の顔を思い出すのは難しい。

結局、昼食を食べた後も午前中と変わらずソファに横になりながらテレビを見ていた。


私はいつか太るな―


そんな馬鹿な事を考えながら時計に目をやった。


13:53分か―

学校終わるのが、だいたい15時だから―あと1時間位で来るかな―


そう思った時に自分は未だにパジャマだった事に気付いた。


やばい―


急いで部屋に戻り着替えた。

ママはテーブルにお菓子を用意して階段目指して駆けて行った私を横目で見ていた。

『まったく』と笑っていたなんて私は知らない。


再びリビングに戻ってテレビを見てるとママが

『あら、着替えたの?パジャマはさすがに恥ずかしいんだ』と笑いながら言った。

『別にそういう訳じゃないけど…担任の前でパジャマは…』と苦笑いをしながらテレビを見ていた。

15時過ぎ、インターホンが鳴りママが玄関に向かった。

私は起き上がりソファに座った状態で待っていた。

『どうぞ』と母の声と共に担任とクラス委員長が入って来た。


あ――


ビックリしたのはクラス委員長が毎日7:30に家の前を通り過ぎる彼…"國分"だった事。


『こんにちは』担任が頭を下げながら挨拶をした。

彼は私を見て、軽く頭を下げた。


『こちら座って下さい』と母が手招きをした。

私と反対側に座り、私の隣に母が座り向き合う形になった。


『いやぁ…久しぶりだね、先生の事覚えてたかな?』

と担任はにこやかに話す。


年齢は――確か26歳前後、学校の女の子にはモテモテだった気がする――

それなりに顔も良いし、普通に良い先生って感じ。

私はタイプじゃないけどね


『いやぁ…』

『そうだよなぁ…最初の頃に会ってから、一度もあってなかったからなぁ』

と先生は寂しそうに口にした。

『で、今日はどうしたんですか?』と母が割って入った。

『あぁ…今日はクラス委員長が前期、後期で変わって、彼が後期のクラス委員長になったんです、それを期に心機一転、クラスと向き合おうと言う事で彼が挨拶をしたいと言いまして』

と先生は彼に目を向けた。

『わざわざ、ありがとうございます』と母が言うと。

『いえ、こちらこそ突然すみません』と彼が口にした。

私は視線を下向きにしたまま微妙な空気に挟まれていた。

『あ、紹介してなかったね、彼は國分 隼人くん』と先生が笑顔で紹介してくれた。


國分 はやと――

はやとってどんな漢字だっけ―

実は漢字が苦手な私。


『あ、そうだ』と彼はカバンをあさる

『これ…良かったら、多分暇だと思うし、学校の事を色々伝えたいから』と彼が携帯電話の番号とメルアドが書かれた紙を出された。


『あ、ありがとう』

コイツ意外とやるな――


『実は彼ね、意外と臆病な性格で、そんな彼が、まさかこんな事をするなんて意外なんだよ、ここに挨拶をしに行きたいと言ったのは彼からだし、本当にビックリしてるんだ』

と担任が言った。


正直担任の話より彼の連絡先の紙に書かれた文字達が気になって仕方がなかった。

どんなメルアドで、どんな字なのか…。


それから彼とは話さなかった。

担任と話して今後の事や、これから時々来る事を話し二人は帰って行った。


気付けば時間は17時になっていて、変に気疲れしていた。リビング奥にある窓から静かで寂しそうな月が私を、街を照らしていた。


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