[01]
一階に下りて洗面所に向かい歯を磨き、顔を洗い、鏡を見つめながらブラシで髪をとかす。
結構伸びたなぁ――
前髪は頬辺りまで伸び、後ろ髪は肩より少し下辺りまで伸びていた。
前髪をピンで止め腕時計を横目で見た。
そろそろ出なくちゃ――
今日は通院日。
外は寒いから重ね着して、マフラーを巻いてマスクをしてママと一緒に家を出た。
ママは最近のファッションに気を使って若者向けのファッション雑誌を読んで私の服を買ってくる。
部屋の中で時間が止まっていても服だけは時間に規則正しかった。
病院は家の近くの公園の横道にあるバス停からバスに乗ってテニスコートやコンビニ、少し高めのビルを通り過ぎ駅手前のバス停で下り、歩いてだいたい10分の所にある総合病院だ。
受け付けを済ませて検査をした。
ママは先生と話している、私はロビーに置かれている椅子に座り母を待つ、これが病院に来た時の当たり前のルールだった。
ただ、今日は一つ違った、ロビーに彼が居た。
毎朝窓際から見送る彼が。
ふと自然に座った隣に彼が居た。
制服だ、名札つけてる―
名前は――えっと――
"國分"
やっと苗字がわかった
嬉しかった、嬉しさあまらに顔がにやけていた気がする。
こんな気持ちは初めてだった、恋には鈍感だし、ましてや男の子の隣なんて…
バスでは隣はママだし病院では隣はおじいちゃんかおばあちゃん、それか子供。
心臓が今までにないくらい早い速度で体を揺らしていた。
少し胸痛がした。
でも、ほんの少しの間だけでも、隣に居たい。
出来るなら、話してみたい。
でも、どうして病院に?
病気?怪我?お見舞い?そんな訳のわからない事を考えていた、すると…
『あの…』彼が私を見て、私に話しかけてきた。
『えっ、あ、はい…』
ビックリして挙動不審な行動と声が出た。
恥ずかしい―
『トイレって、何処にあります?』
なんだ―
トイレかよ―
『そこの廊下の突き当たりの右を曲がって奥の方にありますよ』
『ありがとう』
いえいえ―
軽く頭を下げて彼はトイレのある方向へ歩き出した。
背、私より高いな―
後ろ姿に小さく手を振る。
背は高くて髪はセミロングの黒、顔立ちは整ってて瞳が綺麗で性格は、暗め…。
そんな彼との時間はあっという間で時に残酷で時に儚い。
彼が戻ってくる間にママが戻ってきて、受け付けでの支払いを済ませ帰宅した。
病院を出る時に彼が戻ってきた、
彼は私が居なくなった椅子に再び座って順番を待っていた。
またね―
心の中で彼に別れを告げて病院をあとにした。