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私は窓から彼を眺めるのが毎朝の日課だった。
生まれつき病弱だった私は中学校に入学してから、ほとんど学校には行ってない。
制服を着たのも片手で数えられるくらいしかないし、ましてや友達なんて一人もいない。
毎日毎日家の二階から通学する子達を見て、毎日毎日同じ一日を繰り返していた。
もうすぐで2年生なのに私は中学を入学してから小学生の生活となんら変わりはない生活を過ごしていた。
でも唯一の楽しみは
いつも朝7:30頃に家の前を通り過ぎる彼を眺めるのが好きだった。
名前も知らない、相手は私を知らない。
そんな淡い感情を胸にしまっていた。
毎日彼が家の前を通り過ぎて、背中を向けた時に小声で『行ってらっしゃい』と二階の自室の窓から小さく手を振る。
これが私なりの精一杯の初恋だった。
自転車で走り抜ける彼はやがて見えなくなってしまうけど、それでも私は毎日彼が家の前を通り過ぎるのを待っていた。
昨日も今日も明日も
きっと卒業まで繰り返すだろう。
でも土日は嫌い、学校は休みだし彼は部活に所属してないのか休日は学校に行かない。
でも2日なんてあっという間に過ぎてしまう。
また月曜日が始まって彼を見送る。
初恋らしくない初恋を
私は毎日感じていた
『未歩、そろそろ準備しなさい』
一階からママの声が聞こえた。
ママの声が耳に届くと同時に毎朝の儀式の様な初恋を終わらせる。
また明日と…。