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高校生ズ!!

絵を残したシンデレラ

作者: 日向べに


 硝子の靴を落としたシンデレラは、ハートの花びらのガーベラの階段を駆け降りる絵。時計は九時を指している。

文化祭の広告だ。

 インスピレーションが湧いた。ただそれだけのことなのに、何故こんな大事になってしまってしまったのだろう。

 朝学校に来てみれば、飾られた絵が話題になって騒ぎになっていた。

 文化祭広告担当の生物の教師である関根先生の元に真っ先に向かって、私が描いたことは明かさないでほしいと頼んだ。

変に注目されたくなかったから。

 インスピレーションが湧いたから、水彩絵の具で描いた。絵はただの趣味。絵を描く部活には属していないし、学校の友人にも見せたことはない。

 だから関根先生さえ黙っていれば、私だとはバレない。

 夜九時までの文化祭の広告。駅の掲示板にまで貼ってあるそうで、ちょっと提出をしたことを後悔した。

 校内の掲示板にも貼られているわけで、一階の廊下にある掲示板に貼られた絵を見つめながら肩を竦める。


「……はぁ」

「なんでこれ見て溜め息つくの?」


 声をかけられたから横を見てみれば、並んで立って首を傾げて私を見ている男子生徒がいた。

 にっこりと笑いかける茶髪の彼に、私は完全に固まってしまう。


「おはよう、西田さん。急に話し掛けてごめんね」


 なにも言えずにいたら、彼は挨拶してくれた。

「お、おはよう」と慌てて返す。

 いいの、全然。とは言いそびれた。声が出ない。


「この絵、キレーだよね。いったい誰が描いたんだろう」


 私の絵を見ながら、彼は褒めてくれた。

緊張でぴんと背中を伸ばす。

 私が描いたなんて、言えなかった。


「俺はね、絵ってその人を表すと思うんだ。外見と一致しなくとも、そういう一面を持っているから描けるって思うんだよね。ま、俺に絵心ないから説得力ないけど」


 ニッと歯を見せて彼は笑いかける。頬が持ち上がって、えくぼができる笑顔。

きゅん、としてしまう。


「この絵を描いた人って、きっとキレーな心の持ってると思うなぁ」


 絵を見ながら、また褒めてくれた。

 ボン、と火がついたみたいに顔が熱くなる。

そんなことない、なんて言えなかった。


「なんて、ちょっとロマンチストだったかな?」


 絵から私に目を向けてきたから、慌てて斜め下に顔を伏せる。

 全然そんなことないよ、なんて言えなかった。


「あはは、ごめんごめん。またね、西田さん」

「あ、うんっ……」


 彼は笑って、廊下を歩き去る。

 な、なな、なにも言えなかった! 高梨くんが話しかけてくれたのに!! 二人っきりで話せたのに!

 胸を押さえて、心の中で叫んだ。ほっぺが熱すぎる。

 彼の名前は、 高梨流真(たかなしりゅうま)くん。

私のクラスメイトであり、私の片想いの人。

 二年生で一番の人気者。女子に人気なイケメンというわけではなく、男女ともに人気で、一緒にいて楽しくて、無邪気で優しくて頼りになる人。ちょっとおっちょこちょいで天然な面もあって、女子は友人として彼を頼り相談する。

 恋愛に関して人気者ではないけれど、決してモテないわけではない。私はほがらかな笑顔の彼が好きだ。

密かな片想い。実らない片想い。

 報われるだなんて思っていないんだ。

だって私は引っ込み思案で、目立たないちんちくりん。肩までしかない黒髪をおさげにして、大きめの縁眼鏡をかけて、いつも俯きがち。

長身でモデル体型でもなければ、美少女でもないし、勉強も学年一位を取れるほど頭もよくない。いいところなしだ。

 釣り合うとは思っていないし、好きになってもらえるとは思っていないんだ。




「シンデレラって、まじで誰だろう?」


 一週間後。

シンデレラの話題で持ちきりになっていた。

 広告の絵を描いた人が、いつしかシンデレラと呼ばれるようになってしまっていた。

シンデレラの絵を書いて、名乗らないまま姿を表さないからだ。


「シンデレラに会ってみたぁい!」


 放課後の教室。

雑談のために集まっていた生徒達の中心にいた高梨くんが声を上げた。

ギクリと震え上がる。

 教室に爆笑が響いた。

高梨くんもあの無邪気な笑みを溢す。彼はいつも中心にいて、皆を笑顔にさせる。

離れているところで、見ていても、つられて笑いそうになってしまう。



 そのまた一週間後も、シンデレラの話はされていた。

高梨くんは、美術部に出向いて一人一人に訊いたらしい。


「王子様がシンデレラを探してるんだって」


 女の子達はそう言って、クスクスと笑っていた。

恥ずかしさで、顔を押さえて、踞りたくなる。

 ますます名乗り出れなくなった。

シンデレラを探す高橋くんに、私だって言えない。幻滅されちゃう。

私はもう一度関根先生に釘をさしておいた。



 そのまた一週間後の金曜日。文化祭本番まであと一ヶ月。

 金曜日のお昼の放送は、"君に告ぐ!"というタイトルのコーナの日だ。

ゲストが参加して、校内放送で誰かにメッセージを送る。

 誰かが告白したり、あるいは振ったり、文句を言ったりするから、人気のコーナだ。


〔今日のゲストは二年B組の高梨流真くんです!〕


 教室でクラスメイトと一緒にお弁当を食べていた私は、皆と同じくゲストの名前に反応して、箸をくわえたまま顔を上げる。

 いないと思ったら、今日のゲストで放送室に行ったんだ。


「高梨、なに言うんだろ?」

「つうか誰宛?」


 皆がスピーカに注目した。

高梨くんが、誰に、なにを言うのか、皆が耳を傾ける。


〔シンデレラに告ぐ!〕


 高梨くんの声が校内に響いた瞬間、私は誰よりも目を見開いたに違いない。

 相手は――――…シンデレラこと、西田和穂。私だ。


〔文化祭までに俺に名乗り出てください。こんな恋の始まりもあっていいと、俺は思います。君を知りたいから、俺と一日デートしてください!〕


 それは告白だった。

シンデレラに向けた校内放送での大胆告白。全校生徒が耳にした告白。


〔文化祭が終わるまで、俺は待っています。シンデレラ〕


 高梨くんがそれを言い終われば、女子の黄色い悲鳴が響き、男子の興奮した雄叫びが響き、二年B組の教室は大合唱状態になった。

 噂の渦中にある私は絶句している。

箸を唇に当てたまま、青ざめる。

 な、なんて、凄まじい行動力の持ち主なんだ!

 いや、思えば初めから彼は行動力ある人だった。

 去年も同じクラスで、友だちがいなくて一人でいた私に声をかけてくれたんだ。

グループの輪に入れてくれたから、友だちができて、クラスになんとか馴染めることができた。

 誰もやる人がいなければ、進んで手を上げてこなす。そんな人。

 ――――でも、顔も名前も知らない人相手に、全校生徒の前で告白するほどの凄まじい行動力だなんて、思いもしなかった。




「……ど、どうしましょう」

「……どーしようか」


 化学室の中。教卓を挟んで向き合う関根先生は、困ったように笑う。

二枚目な顔立ちで、ポロシャツがトレードマーク。


「一番しつこく訊いてきた高橋がまさか……校内放送で告白とは……アイツ、男前だなぁ」

「わ、笑い事じゃありません!」


 全然笑い事じゃない。

頬杖をつく関根先生が笑うから、頭を抱えながら怒る。


「なんで? 高橋が好きだろ、西田は」


 さらりと関根先生が言ってきたことに、目を丸めて固まった。


「〜っ!!?」


 声にならない悲鳴を上げる。


「あはは、真っ赤じゃないか。わかるぞ、先生だってちゃんと生徒を見てるからな。授業中、西田は高橋を見すぎだぞ」


 頭を抱えて突っ伏した。

 な、なんてことなの! 私は高梨くんを見すぎてるの!? 恥ずかしすぎる!


「いいじゃないか、高梨に明かせば。先生、このままじゃ高梨の友だちに拷問されそうだ」

「いいわけないです!! 私だって明かしたら、もう幻滅されるに決まってるじゃないですか!」


 全然よくない、全然よくない!

私は全力で首を横に振った。


「今更明かしたどうなると思います!? 卒業まで、いえ成人式まで、いいえ三十歳の同窓会まで、皆に"シンデレラ(笑)"なんて呼ばれちゃうんですよ!!」

「西田は被害妄想が凄まじいな……」

「悪ければ、高梨くんを幻滅させたことで皆に忌み嫌われてしまうんですよ!! 私の学校生活が終わるっ!!」

「どこまでもマイナス思考なんだな、おい」


 人生おしまいだ! と頭を抱えて嘆く。

 シンデレラの正体が私だって知ったら、全校生徒が笑うに決まっている。関根先生の苦笑どころではない。


「じゃあ、なにか? 好きな人なのに、全校生徒の前で、フッちゃうのか? デートしてくれと言ってるんだぞ」

「うぐうっ!」


 高梨くんを全校生徒の前でフって恥をかかせることも嫌だ。でも高梨くんに明かして幻滅されることも嫌なんだ。

 だからどうしようって言っているんだ。教卓に額を押し付けて呻いた。


「西田。自分に自信がないから隠れるのはわかるけど……好きな人が振り向いてくれてるんだぞ」

「……違いますよ。シンデレラっていう綺麗なお姫様をイメージしてるんです。私に振り向いてるわけじゃないです」


 高梨くんが振り向いているわけじゃない。絵の中のシンデレラを見ているだけなんだ。

私だって知れば、高梨くんはあの笑顔をひきつらせる。


「……西田、ちゃんと告白聞いてなかったのか?」


 関根先生が太い指で教卓を叩くから、顔を上げた。


「高梨はこれから知りたいから、デートに誘ってるんだ。交際って言ってないってことはそう言うことなんだよ。こんな始まり方でもいいんじゃないか? 高梨と西田、二人きりでデートをして知ればいい。どうなるかは二人次第だ」

「……」


 真剣に言ってくれる関根先生に、背中を押す言葉をかけられる。

でも私は、やっぱり無理で首を横に振った。

 関根先生は肩を竦める。

だめだよ、私には無理だ。

幻滅されるだけだもの。


「よし、わかった」


 少ししてから、関根先生はぽむと掌に拳を置いて口を開いた。


「正体を隠さなければこんな大事にはならなかった、先生にも責任がある。だから、自信を持たせてやろう」

「……自信、ですか?」


 涙目で見上げれば、関根先生は私から眼鏡を取る。

頬杖をつくとニッと口角を上げて笑いかけてきた。


「シンデレラにしてやる」


 関根先生の提案は、全力でお断りしました。




 その後、二週間。

高梨くんの仲のいい友だち皆が、シンデレラを探し回った。

私に声がかかることもなかったから、当然見付からない。

 クラスの出し物はカフェ。

メニューを印刷するために職員室に行って、教室に戻ろうとしたら、高梨くんを見付けた。

 あの絵の前で、高梨くんは浮かない顔をしている。

近付いて恐る恐る名前を呼んでみた。

顔を向けてくれた高梨くんは力なく笑う。


「シンデレラ、二年生じゃないみたい。全然顔を出してくれないんだ。関根先生も本人が嫌がってるからって、教えてくれないし……もしかして、すごく迷惑だったのかな。俺、嫌われちゃってるのかな」


 私の絵を見ながら、高梨くんは悲しそうに笑った。ギュ、と胸が締め付けられて痛くなる。


「いつも友だち止まりでモテないって自覚してたけど……嫌われてるなんて……ちょっと落ち込んじゃう……」


 いつも皆を笑わせる明るい高梨くんは、悲しそうに俯く。

 そんなことない。そんなことないのに。


「……っそんなことないよ、そんなことない。きっとシンデレラも、高梨くんが好きだよ」


 メニューを握り締めて、私は気付くと口にしていた。ちゃんと、思ったことを高梨くんに言えた。

 シンデレラ(私)が高梨くんが好きだと、言ってしまった。

 高梨くんは目を見開く。

慌てて熱くなる顔をメニューで隠した。


「その、……と、思います。高梨くんあれだし……あの、とても優しいし……嫌いなわけないよ……皆、高梨くんが好きだから……」


 高梨くんに顔を隠したまま、カニ歩きで横切って言い訳しながら逃げようとする。

 うわああ、面と向かって好きって言っちゃった! 言っちゃった! うわあああ!


「西田さん」


 呼ばれたから、つい反射的に振り返った。

 その先には、私の好きな高梨くんの無邪気な笑顔がある。


「もう二年目なんだしさ、もうちょっと力抜いてよ。緊張しすぎ」


 緊張しすぎの私を、高梨くんは笑った。恥ずかしくてまたメニューで顔を隠したくなるけど、大好きな笑顔から目が放せない。


「それからありがとう。自信ついた。文化祭が終わるまで、待ってみる」


 無邪気に笑った高梨くんは、私に手を振ると廊下を歩いて行ってしまった。

 ……自信、だなんて。私が高梨くんに自信をつかせるなんて……。

 結局、メニューを顔に当てて呻いた。




 その数日後に、私は関根先生の元に行った。


「……シンデレラに……して、くれますか?」

「……勿論だ」


 関根先生は、快く頷いてくれた。

 高梨くんを全校生徒の前でフって恥をかかせることも嫌だ。高梨くんに明かして幻滅されることも嫌なんだ。

 もっと嫌なのは、高梨くんからあの笑顔がなくなって、悲しい顔をすることだ。

 だから、関根先生の提案に乗ることにした。




 けれども、文化祭が近付くにつれて、私は怖じ気付いた。


「やっぱり無理です」


 関根先生に泣き付いたら、困った顔をされてしまう。


「もう高梨にも、高梨の友だちにも、文化祭で明かすって言っちゃったぞ」

「無、無無理です、文化祭を考えるだけで胃が出そうです、内臓全てを吐きそうですっ」


 告知済みでも、私は逃げたい。世界の果てまで逃げたい気分。

 告白する気なんて全然なかった恋なのに、なんでこうなったのぉおおっ!!


「西田。大丈夫だって。高梨を悲しませたくないんだろう? だから明かしたいんだろう? 俺が自信を持たせて、アイツの前に立たせてやるから。がんばれ」


 悶える私を、関根先生は励ましてくれた。

何度も何度も弱気になったけれど、その度に関根先生は励ましてくれる。


「二年の菊長(きくなが)って知ってるか?」

「あ、はい」


 二年の菊長(きくなが)かなこさん。背が高くてモデル体型な彼女は高梨くんが好きだ。

高梨くんから告白させようとことあるごとに、べったりして猛アタックしている子。

高梨くんは天然だからなのか、ずっと友だちとして接している。


「シンデレラが名乗り出ないなら、自分ということにしてくれって頼まれた」

「えっ!?」


 ギョッとした。

バレる嘘をつこうとしたの? 嘘をついてでも、高梨くんに振り向いてほしかったの?


「そんな行動に出る恋愛もあるってことだ。高梨も行動に出た。次は西田、シンデレラが名乗り出る番だ」


 そう言って、関根先生は私の肩を叩いてくれた。






 文化祭当日。

黒の背広に黒のネクタイのウェイター姿の高梨くんはそわそわしながら、接客をしていた。私も一日中緊張に襲われてて、正直文化祭を楽しめなかった。

 賑わう文化祭には、仮装している生徒が多くて、どんな服装も特別目立たない。

 だから関根先生は、ドレスを用意してくれた。

手芸部が絵に合わせて白いドレスを作ってくれた。高梨くんのためだと言ったら、喜んでやってくれたそうだ。

 私は美容室に行き髪を整えた。今までやったことなかったけれど、お肌の手入れも毎晩やった。

関根先生は男なのに、とても物知りだった。

 関根先生は魔法使いのように、私を変身させてくれた。

眼鏡は外して、コンタクトレンズ。髪はカールさせ、顔には化粧を施して、白いドレスを身に付ける。全部、先生がやってくれた。

 鏡に映るのは、肩を露出したボリュームあるスカートの白いドレス。

露出した胸元や肩や首にまでラメをつけるものだから、絵に似せた本当にお姫様みたいだった。

 ちんちくりんな西田和穂じゃない。

シンデレラの西田和穂だ。

 好きな人に胸を張って、好きだと言える――――。


「……ない。言えない。言えない。言えない。言えない! 告白なんてできません! もうお家に帰ります!」

「ここまで来て!? ちょ、先生の自信作を見ろよ、自信ばっちりだろ!?」

「それと告白は別ですぅうう!!」

「好きまで言わなくていいんだよ、シンデレラって言えばいい!」


 後夜祭を抜けて、誰もいなくなった体育館で準備をして、あとは高梨くんを呼ぶだけだけど、本番直前で私は逃げ出したくなっていた。


「西田、自信のなさまで凄まじいな……本当。もう後夜祭が終わりそうなのに……。しょうがない、飲み物を飲んで、ちょっと自分を落ち着かせろ」


 関根先生は疲れたように大きな溜め息をついて、私を椅子に座らせる。

 最後まで申し訳ない。反省して俯くけれど、ステージを降りた関根先生を慌てて呼び止めた。


「関根先生、ありがとうございます。本当に……なにからなにまで……ありがとうございます」


 関根先生には感謝している。シンデレラにしてくれて、本当に感謝しています。

 関根先生はただ口角を上げて笑うと手を振って、体育館を後にした。

 明かりのついたステージにひとりぼっち。

体育館はファッションショーに使われたから、暗くともまだちょっとちらかっているのがわかった。

緊張でバクバクしている心臓を落ち着かせるために、深呼吸して目を瞑る。

 校庭の方から、後夜祭の賑わう声が聴こえてきた。

 高梨くんはまだ待ってくれているのかな。

私のことを待ってくれているのかな。

 悲しい顔をしていないといいな。

悲しい顔をさせないためにも、ちゃんと私が言わなくちゃ。

 せめて――――私の大好きな笑顔でこの私を見てくれたらいいな。


〔お呼び出し申し上げます〕


 意を決して、関根先生に電話をかけた。

そうしたら校内放送で関根先生の声が聴こえてきた。


〔二年B組の高梨くん、高梨くん。――――シンデレラがお待ちです。至急体育館までお越しください〕


 高梨くんの呼び出しを耳にして、私は固まってしまう。

 悲鳴を上げて逃げようかと思った。でも今決意したわけで、いやでも校内放送なんかしたら、全校生徒が来ちゃうじゃない。

 先生さては私を逃がさないようにした!!?

 全校生徒の前で高梨くんに悲しい顔をさせられない私は逃げられなくなった。

 プツリ、とステージの電気が消えてしまい震え上がる。

 すぐに体育館の扉を開けて誰かが来た。走ってきたみたいで、呼吸が荒れている。高梨くんが、走ってまで来てくれたみたいだ。

 嬉しすぎて胸が締め付けられた。緊張でまた心臓はバクバクだ。

 高梨くんが暗い体育館を歩きながらステージまで来る。少しおっちょこちょいな彼がなにかに躓いて転ばないか心配していれば、他の生徒達も体育館に来てしまった。

けれど、私はステージによじ登った高梨くんしか見ることができなかった。

 パッ、とステージのスポットライトがつくから、私は椅子から飛び上がる。

 私の前にはウェイター姿のままの高梨くんが立っていった。

私にとって十分――――王子様だった。


「に、二年B組のっ、西田和穂ですっ!!」


 精一杯声を上げて私は名乗った。

それ以外言えることはない。私の限界だった。

 それが、私の大きな一歩。


「――――…」


 高梨くんはポカンとしたまま立ち尽くした。

 でもやがて高梨くんは私の大好きな笑顔になる。えくぼができる白い歯を見せる無邪気な笑み。

 ほがらかな笑顔に、つられて私も笑ってしまった。

 そこで文化祭終了の鐘が、鳴り響いた。




end


最近微熱続きで今日も微熱で具合が悪くなっていく一方でしたが、朝このネタを思い付いたおかげでご機嫌でした!(笑)


不調のまま無我夢中で書き上げてみました!

色々お粗末な点もありますが、私と同じくご機嫌になれたら、幸いです!



このあと、二人はなにも言えず立ち尽くしてしまい、視線に耐えきれなくなったシンデレラは逃げ出しました(笑)

のちに、デートの約束をしました。


デート編も時間がある時に書いてみたいと思います!


好きになってもらう自信がなければ告白もできない、引っ込み思案な女の子のシンデレラストーリー?でした(笑)

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


20140426

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公の語りで、読者は絵を描いた作者を分かっているけれど。 視点を変えれば、作者も唯一正体を知る先生も沈黙を守っており、人物像は全く不明なんですよね。 だから、噂のシンデレラが女子生徒で…
[一言] 自分に自信のない子だったら、ああいう行動とっちゃうよね~と思いながら読ませていただきました。 青春だなぁ……(//∇//) あ、誤字というか、高梨君の名前が所々“高橋”になっていましたので…
[一言] ものすごく可愛いお話で面白かったです。 この後の2人も読んでみたかったのでデート編があるのは嬉しいです!
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