「I want to go to school by bicycle!!」
「くっそーまだ恥ずかしいぞっ」
ふと口に出てしまう心境。
先ほどまで完全に入学式が今日だと思ってたからね。
まぁ、今日はてきとうに高校の付近でも探索しようかな。
これから3年間お世話になる土地だし色々どこにあるか知っといて損はないだろう。
そうと決まれば、行くか。
俺はロードバイクに乗りゆうゆうとペダルを漕いだ。
うーん風が気持ちいい!!少し肌寒いけど…
これからは毎日、自転車で学校に通うんだな〜長年思い続けた夢がまた一つ叶ったな。
高校は家からざっと10kmくらいの距離。小、中学校時代の友達らはだいたい近所の高校に通うらしいから
俺が通う高校に知り合いはほとんどいないといってもいい。たしか…同じ中学の子は3〜4人くらいしかいなかった気がする。
俺がわざわざ少し遠い高校を選んだ理由は単純。
ただ自転車通学がしたかっただけ。
電車やバスで通学もいいけど俺は身体を動かすことが好きだし、自転車通学の方が絶対に似合っていると思う。
まぁ、自分で思ってるだけだけどね。
今乗ってるロードバイクは昨年、コツコツ貯めてきたお小遣いでやっと買った念願のバイク。これに乗って、俺はもっともっと遠くへ行きたいんだ!!
この志望理由を聞いた友達達、みんなに可笑しいって笑われました…
先生方なんか最後まで止めてきたし。
わかってる…我ながらふざけてた理由だってことくらい。普通の人は近い方がいいらしいが。俺は違うんだ。
昔から俺はバス通学や電車通学に憧れていたのだが俺の家は小学校と中学校があまりにも近すぎた。なんと徒歩、7分で着く。
家から500m先くらいに二つともある。
ちなみに友人達が通う高校は家から徒歩12分…近すぎるだろ!!
数少ない同じ中学、略して「オナ中」(少し卑猥にきこえるが)の一人に幼馴染がいる。
頭はいいはずなのに、上の高校を選ばず、なんでか俺と同じ高校を選んだ。中学でも成績はトップの方に属していたのに。
まぁ、俺が考えても仕方がないことだな。俺も仲のいい子が一人でもいるっていうのがせめてもの心の救いになるし。
正直、不安でいっぱいだけど、だが後悔はない。
やっぱり学校は家からちょっと遠い方が通うのも楽しそうでしょ。自分の中の地図の範囲が増えた感じがするし、いつか登校や下校中に素敵な出会いがあるかもしれない。
というか、
それが本当の理由だったりして。
電車やバスで通学もいいけど俺は身体を動かすことが好きだし、自転車通学の方が絶対に似合っていると思う。まぁ、自分で思ってるだけだけどね。
ふぅ〜やっと高校に着いた、ゆっくり漕いでも、30分もかからなかったな。
さすが俺に選ばれしロードバイクだ。やっぱチャリ通は最高だぜ!!
公立河ノ浦高校。これが明日から俺の通う学校だ。
進学校だが、知名度と学生の平均学力共に高い方ではなく、かといってレベルが低いのかと言うと、大学進学率と就職率でそれなりの実績を上げているという。部活動などでは目立った成績は無し。生徒数も多い方ではない。設備はそれなりに備わっているそうだが、特に個性がないというかなんというか、なんとも評価しにくい感じの高校だな。
男子は学ランで至ってシンプルだが
女子はブレザーで人気が出そうな程、可愛いらしいデザインだ。
早く制服を着た女の子を見たいな。明日という日が待ち遠しい。
河ノ浦高校は河ノ浦町のど真ん中に位置し学校から駅も近く、周りに色々とお店もあるので下校時に立ち寄れそうだ。
それでは、本日のメインイベントの高校付近の探索といきましょうか。
俺は高校付近を自転車で一周した後、お店チェックを始めた。
最初は本屋を見つけよっと。本を読むことが好きだし、休日はよく本屋巡りをしてから、どこよりも一番に気になるんだよね。自分、暇さえあれば本ばっか読んでる、読書オタクっスから。…それは言い過ぎか。
むむっ、高校からちょっとした所に小さな本屋を発見!!辺りの自然にとけ込んでいてから、なかなか気づきにくかったぞ。
それに近くでみたら建物が古いせいかボロボロだ。
大丈夫かなこの店…
ふーん、「木林本館」っていうのか。なんか聞き覚えがあるな……あっ、教科書を頼んだ所か!!
一応、営業はしているようだし、とりあえず、中に店に入ってみよう。
カランカランッ
客が入店したことを知らせるベルが鳴る。
「いらっしゃいませ〜」
元気な店員の声が迎えてくれた。
中は見かけによらず、なかなか広く、まるで映画に出てきそうな感じの内装だった。壁や本棚は古いがどこを見てもホコリやシミ一つない。商品の本も全く痛んでなくて、とても綺麗だ。
さらに、ここ品揃え結構いいぞ。
この本屋を人間に例えると…顔はブサイクだけど、性格と頭が凄くいい人 みたいな感じ。この例え、ちょっとわかりにくいかも。
ただ言いことは、この本屋 外見はあれだが、中に入るとクレーマーも文句のつけようがないほど、バッチグー だということ!!
おっと、感動してたら結構時間が経ってたな。
そろそろ他を探索しないとな。
今日の記念になんか一冊買っておこっと。
俺は会計をするためレジに足を運び
「すみません…これお願いします。」
店員さんにスッと本を差し出す。
『はい、こちらお会計630円になります。』
店員さんは手慣れた手つきでレジを打ち、笑顔で答えてくれた。この声はさっきの声の人か。
おぉ…メチャクチャ可愛いなこの人。
見た感じ、俺と歳は変わらないと思うけど、バイトさんかな?
ジロジロと見てると、店員さんもこっちの視線に気づいたみたいで、微笑えんでくれた。
必殺、天使スマイルが炸裂
グハッ 織斗は999のダメージを受けた。心に致命傷を負った。
ってこんなことやってる場合じゃない。会計の途中だった!!
おろろ?…小銭切らしてた。
「んじゃ千円で」
『かしこまりましたお釣り370円です。』
「あ、どうも」
受け取ろうと手を伸ばすと、小銭を渡される瞬間、店員さんの指先が俺の手のひらにチョンッと当たった。
『ありがとうございました。また…いらしてくださいね?』
店員さんはちょっと上目遣いで俺に言ってきた。
(うごあぁぁぁ〜む、胸が、胸が苦しい。
指先がちょっと触れただけなのにものすごく動揺してしまったし。)
まったく、なんという威力なんだ!!
一体この感情はなんなんだ?
はっ!?まさか俺はこの人に恋を?……冗談ですけどね。
でも、俺がこの店を気に入ったのは確かだ。居心地がいいし、しかも店員の女の子は可愛いいときた。
今度からはここを、ぜひとも愛用させてもらおうじゃないか。
さて、次の店を探索しに行きますか。
お店を出るため入り口向かう。
『またのご来店お待ちしております』
店員さんの声が俺の後を追うように聞こえた。
うん。また来るよ。絶対来る。明日辺りに来るかも。いや帰りに寄ろうかな。と店員さんに心の中で答える。
長居はいけないので俺は惜しみつつもお店を後にし、自転車で高校付近をまた走り出す。
それから2時間程、見て回った。
この町には安いスーパーマーケットもあるし暇な時に寄れるゲーセンもある。ちょっと遠いがデパートもあった。それなりに揃ってるな。
だいたいここら一体の地図は覚えたし、5時半くらいだから、そろそろ家に戻らないとな。
ふと今日一日を振り返ってみると。恥ずかしかったことや、良かったことが鮮明に思い出される。
色々あったけど、明日から高校生か〜
楽しい高校生活が送れるといいな。
よーし明日に備えて、帰ったらすぐ寝よう。
俺は夕日 めがけて自転車を漕いだ。