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Face to the truth,Face is the truth

作者: qwertyu

たった一か所欠点がるだけで、世の中は過ごしづらいのです。



 私立華々尾高校はカップル率が高いことで知られる学校だ。有名私立大学や難関と呼ばれる国立大学への進学実績を残しつつ、恋愛までも謳歌しているとは不届き千万である。

 俺は中学三年時にこの学校への進学を決めた。やれ遊びだ部活だとそそくさ動き回る同級生。しかし彼らを目にも入れず、机と椅子と筆記用具だけを友人にして一年過ごし、合格した。

 そんな経緯からか、入学時に俺のコミュ力は無きに等しいものだった。女子と話すことはおろか、男子とですらまともに会話が成立しなかった。

 俺は話すことを忘れていた。しかし、それ以外は何も失っていなかった――たとえば、部活。まだ皆が部活を決めようとあちこちへ見学言ってる間に、俺は入部する部活を決めていた。いや、決まっていた。帰宅部。帰宅する速さを競う部活だ。こんな俺だが、脚力には自信がある。そういえばジョギングしながら英単語を覚えたこともあったな。とにかく、速攻で決まった。

 五月も半ばを迎えたころ、蒸されるような気候の中でテストが始まった。都会の夏は気持ちが悪い。ぬるい風になめられながら、俺は全教科で満点を取った。

 この高校では成績優秀者が廊下に張り出される。休み時間にそこを通ると、聞こえてくるのは大体「誰こいつ」である。大方、二位以下の学生A,B,C……(以下続く)の話だろう。

 ちょうどこのころ、体力測定があった。俺は女子と男子が同じグラウンドで測定をする日に、50m走で陸上部のイケメンをぶっちぎり、長距離で先生が目を離したすきに、誰にもわからないような絶妙な足技で野球部のやつを転ばせた。二人とも、女子に笑われていたようだ。教室に戻ったら着替えがなかったが、先生に説明してその後の授業は体育着で受けた。三日後、そのイケメンが彼女らしき人物と登校しているのを目にした。もちろん転ばせた。

 六月、体育祭。祭と銘打ってはいるが、所詮「うんどうかい」の延長線上でしかない。真剣勝負の『帰宅』と比べたら、御遊戯同然だ。クラスから代表を出して走らせるリレーがメインの種目となっているようだったが、俺は出場を打診されても断ると決めていた。ちなみにこの月の俺の会話回数は家族との4回のみである。

 七月、プール開き。水泳はあまり得意ではない。とりあえず水泳部を失脚させることに俺は徹し、無事溺れかけさることに成功した。完全に殺らない、というのがポイントだ。むせかえる姿はひどく醜い。その姿を同じプールにいる女子に見させることで、水泳部の評判は地に着いた。

 夏休みを迎えて、いよいよ俺は虚しさを覚える。今までやってきた数カ月はなんだったのだろうか――部活がない日常は、こんなにもさびしいのか、と。帰宅力が落ちてはいけないと思い、毎日学校へ通った。

 九月、文化祭というものがあったが、あまり記憶にない。ただ、模擬店を出したウチのクラスの食品から食中毒が発生したり、美術部よりもはるかにうまい絵が飾られていたりした。

 十月、学校へ通う道の並木の色が、だんだんと透けてくる。肌寒いのは嫌いではない。このころから、まったく言葉を出さない日が増えた。

 十一月、アドレス帳に一件目のアドレスが登録された。

 十二月、二十四日深夜に俺は出かけ、繁華街にラジカセを置いてきた。ざっと五十台。日付変更とともにモスキート音を発する。ところが、俺はとある女子に呼び出され、その繁華街にいたため自分もその音を聞く羽目になった。

 一月、新年早々俺は若いやつらが集まってそうなところで、クリスマスにしたことと同じことをした。

 二月、十四日に俺は校庭の真ん中へ呼び出された。(くだん)の女子だ。どうやらチョコレートを渡したいということらしい。なぜ校庭で渡す必要があるのか疑問だった。案の定、群衆――野次馬がうるさい。囃したて、楽しそうな声をあげている。いったい何がおかしいのか。まったく理解できない。そして、一人が手拍子をたたきながら「こーくはく!こーくはく!」と言い出した。日本人特有の超能力である『空気を読む(リーディングジエアー)』が発動し、

瞬く間に校外へ響くほどその声は大きくなった。「や、やめてよ!」とは女子の言葉だ。群衆は一瞬ざわめき、騒ぐのをやめた。

「あの……これ受け取って……」差し出された紙袋を俺は右手で受け取る。「それから……えっと……。付き合って、ほしいんだけど……」付き合う?俺は考えた――男女交際。コミュ力ゼロの俺が?無理に決まっている。しかし、相手は悪くない。受けてもいい。けど、俺は話ができない。無理だ。でも、付き合ってみなきゃ分からない。無言で育つ愛があるかもしれない。よし、決めた。――二秒間で。

「うん、付きa「キメぇんだよ!!!!!!!!!!!!!!!」

勢いよい張り手が俺の頬を撫でる。

「だれがテメェみてぇな根暗障害顔面崩壊屑ゴミ野郎と付き合うかってんだよ!しね!いますぐ死ね!のたうちまわれや腐れカス!」

一字一句、き れいに か けた の、き ょうのに きは れでおし い 。

――自殺した生徒の日記より抜粋――


もうちょっと女の子のセリフに勢いがほしいですね。


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