プロローグ ここは一体どこ?
「さて、帰ろっと」
学校の門を閉じて外に出る男は一人で帰路についていた。
「少し寒いな、流石に9月の中旬に上下体操服はないわな」
彼はそう言いながらバックから上下の体操服を出した。
「はよ帰ってご飯食べよ」
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「ただいま〜」
「おかえりなさい、ゆうちゃん、ご飯できてるから食べちゃって」
優しい声で迎えてくれたのは賢雄の母である凪月香里奈である。
「帰りが遅いぞ息子よ」
そう後ろから陽気に話しかけてくるのは今年で37歳にもなるのに落ち着きがまたくない父である凪月悠人である。
「研究をしてたんだ、別にまだ7時だろ、健全な高校生にしては早い方だろ」
「言い訳は聞かん、早く手を洗ってご飯を食え、母さんの美味い飯が冷めるぞ」
「あいあい、分かりましたよ〜」
ハキハキと喋る父に少し気だるそうに答える賢雄は荷物を置いに2階にある自分の部屋に向かう。
「ゆうちゃん、洗濯物はさっさと出しちゃってね〜」
優しい声で言う母に「はーい」と少し大きな声で答える。
「はよ荷物置いて飯わねぇと親父に怒られる」
だるそうにしながら部屋のドアを開け、中に入りながら照明をつけようと壁に手を向けると…
「あれ?」
その手は壁に触れることなく空を切った。
「やっと来たわね」
女の声だった、賢雄は咄嗟に振り向くとそこはどこまでも暗い虚無の空間だった。
「誰だ?あんたは…」
「私は----よ」
賢雄にはノイズが混じって聞こえなかった。
「私の名前はヘルメスよ、女神ヘルメス」