表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才的だけどコミュ障な女子高生が、数学部で仲間たちと切磋琢磨しながら過ごす3年  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/124

“答え”がすべてじゃない冬

12月の教室──期末考査目前

ホームルームが終わると、

あちこちの机の上に参考書と赤シートが並ぶ。

「点数を取るための空気」が、教室を満たしていた。


紅葉もまた、問題集をめくっていた。

でも、その手はどこかぎこちない。


(これは“覚える問題”。

どれも、“すでに誰かが決めた正解がある問題”。)


そんなとき、隣から葵がそっと声をかける。


「……つまんない?」


紅葉は少しだけ笑った。


「“頭の運動”にはなるけど、

“考える喜び”はあんまり感じなくて」


数学部──テスト期間の静かな部室

活動自体は自粛中だが、勉強部屋として開放されている。

紅葉、葵、日下の3人は、それぞれ黙々と自習中。


しばらくして、紅葉がふとノートから顔を上げた。


「……“問い”って、

“答えを出すため”だけにあるわけじゃないと思いませんか?」


日下は目を上げ、しばし沈黙したあと口を開いた。


「まぁ、“答えが出なくてもいい問い”ってやつもあるわな」


葵もペンを止める。


「それってさ、“問いが好き”ってことじゃない?」


紅葉は少し照れながら頷いた。


「わたし、

“どうして?”とか“なぜそれが美しい?”とか……

そういう、“答えの形が決まってない問い”が、好きかもしれない」


翌日・期末考査当日(数学)

テストは、典型問題のオンパレード。

紅葉は落ち着いて、正確に解いていく。

でも、どこか「作業」のように感じていた。


正解は出る。

でも、その先の“どうして?”には、今日は誰も答えてくれない。


考査最終日──放課後の帰り道

冷たい風が吹く中、葵と紅葉が並んで歩く。


「数学、できた?」


「うん、たぶん。でも……」


「でも?」


「“わたしが解いた”というより、

“みんなと同じ正解にたどり着いた”って感じ」


「それ、ダメなこと?」


紅葉は考え込む。


「……ううん。悪いことじゃないけど、

“自分の思考”をもっと使いたかった気がする」


葵は優しく笑った。


「紅葉は、“正解”より、“考える過程”の人なんだね」


紅葉のノート・その夜の記述

点数の出る問題も大事。

でも、わたしが本当に心を動かされるのは、

“自分の問い”に向き合ってる時間だった。


答えのない問いは、不安だけど自由。

そして、どこまでも深く潜っていける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ