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【第3話】 匿名の連絡

 帰宅したロビンは部屋の掃除をしていた。掃除を最後にしたのは2週間ほど前である。

(夜は何にしようかな~。)

そんなことを考えながら黙々と掃除をする。


 1時間ほどで掃除が終わったため、自分のスマホを見る。1通のメールが届いていた。しかし、送り主がわからない。内容は、

「明日の18時、駅で君を待ってる。服装は好きにして構わない。それと、このことは内密にお願いする。」

あまりに不審なメールに疑問を覚えるロビン。

「魔道士の知り合いなんてアリスと同期以外にいないはずだけど……。」

内容を見るに、魔道士が送ってきたのはわかる。ロビンはソファに寝転がり、スマホのセキュリティを確認するが、システムに異常はなかった。

「考えるだけ無駄だ、風呂入ろ。」

ロビンは着替えを持って浴室に向かう。



「あー、いい湯だった。」

髪を拭きながらリビングに戻るロビン。スマホに目を落とすと更にメールが届いていた。

「明日の夕飯、食べたいものはあるかい?なんでもいいよ。」

ロビンは一言、寿司と入力する。すると「了解。」と返事が返ってきた。不信感を抱きながらも、ロビンはベッドへと向かう。今日はいろんなことがあり、かなり疲れが溜まっている。そのせいか、寝転んだ瞬間に深い眠りについた。



 翌日、朝日がロビンの顔にあたり、うめき声を出して目を覚ます。

「眠っ……。」

ロビンは布団からなかなか出られない。スマホをが鳴った。設定したアラームの音が部屋中に響き渡る。ロビンはアラームを止め、キッチンに向かう。


朝食は白米と味噌汁に目玉焼きという質素なものだ。しかし、ロビンにとっては丁度よかった。

(やっぱこれぐらいの飯が一番落ち着くぜ……。)

ロビンはそんなことを考えながら箸を進める。


朝食を食べ終えたロビンはソファに飛び込む。昨日の疲れが残っており体を動かす元気がない。そんなかんじにゴロゴロしていたら眠りについてしまった。


「ふあ……」

ロビンは目を覚ます。時計は正午をさそうとしていた。

「ヤッベ、もうこんな時間かよ。」

ロビンは昼食を作りにキッチンへ向かう。先程まで眠っていたためさほど空腹にはなっていない。作ったのはキャベツやハムを挟んだ簡単なサンドイッチだ。

(我ながらうまくできたほうだな。)

ロビンは心の中でそう思った。

 昼食後、ロビンは日差しに当たる。やることがないからだ。

(暇だな~。)

そんなことを考えながら日差しを浴びていると、ロビンのスマホが鳴る。アリスから電話が来ている。

「どした?」

「ロビン、助けて!」

アリスは叫ぶように助けを求めてきた。

「何があった?」

ロビンは驚きながらも、冷静になる。

「説明してる暇はない。時間は稼ぐから駅に来て。早く!」

電話が切れた。

「時間を稼ぐ?いやいや、考えてる時間はない。」

ロビンは服を動きやすいものに着替え、家を出て駅へと向かう。


 

 駅へ向かう道中、街灯や建物が倒れている。

「何があったんだ……。」

走っていると、遠くから爆発音が聞こえる。音のするほうを見ると煙が立ち上っている。駅の近くだ。

(頼む、持ちこたえてくれ。)

ロビンは急いで向かう。



「くっ……」

同時刻、駅の付近ではアリスを含む数名の魔道士が巨大な魔獣と対峙している。

「ふぅー、ふぅー。」

(ヤバい…魔力が…もた…な…い。)

アリスは意識が朦朧としてきた。魔獣がトドメを刺そうと腕を振り降ろすが、魔獣の視線がアリスの後ろに向かう。後ろを振り返ると誰かが走ってきた。

「ロビン!」

「アリス…、やっと見つけたぜ!」

ロビンはアリスの前に立つ。魔獣を見上げると、その大きさがよくわかる。

(でかっ?!どうなってんだこれ……8メートルはあるな。)

ロビンは魔獣の放つ威圧感を肌で感じた。

「この威圧感……上級か?」

「多分…、そうだと思う。」

ロビンの質問にアリスが答える。横を見ると負傷した団員や一般市民が数多くいた。

「ここは俺が引き受ける。お前は市民や他の団員の救助を。」

「1人で敵う相手なの?」

「知らねえ。けど、やるしかない。」

「……わかった。だけど、無理はしないでね。」

アリスは念を押して救助にまわる。

(さて、どうしたものか…)

ロビンは上級との戦闘経験はない。魔道士に階級があるように、魔獣にも"危険度"と呼ばれるものがあり、下級→中級→上級の順に強くなる。中級の魔道士が上級に勝てるかと聞かれると、首を縦には振れない。討伐報告はあるが、かなり少ない。そのうえ、同じ上級でも強さにはかなり個体差がある。ロビンが負けるかと言われると、素直にはいとは答えられない。個体差があるので相手によっては討伐は可能だ。しかし大半が討伐不可能なものであり、大怪我を負うか、最悪、殉職する可能性が高い。

「ふぅ……。」

ロビンは覚悟を決め、戦闘態勢に入る。魔獣もそれを見て詠唱を始める。大量の大きな氷柱がロビン目掛けて飛んでくる。氷柱があたったところが凍りつく。

「ちっ、邪魔だ!」

ロビンは自らの拳で氷柱を砕く。かなり脆いため破壊するのは簡単だ。しかし数が多い。

「駄目だ、キリがねぇ。」

(一気に近づくしかないか。)

ロビンは地面を蹴り、魔獣の近くに飛び込む。魔獣は足を使い反撃する。ロビンはそれを上手く躱す。隙を見て自分の拳で殴りつけるが効果はない。

「弱点はどこだ?」

魔獣を観察して弱点を探す。しかし、魔獣は待ってくれない。すぐに次の攻撃がくる。魔獣が腕を振り下ろし、凄まじい地響きがあたりを襲う。ロビンはなんとか振動を回避する。

(くっそ、弱点を探す暇もねえか。こうなったら1つずつ潰していくしかねぇ。)

大量の氷柱と魔獣の手足の攻撃を躱しながら、ロビンは果敢に攻める。攻撃自体は遅いため、油断しなければ被弾することはない。しかし弱点を見つけなければ今のロビンに倒すのは難しい。その為、時間との勝負になっている。

「あとは頭だけか……。」

ロビンは一通り魔獣の体を攻撃した。しかし効果はない。残るは部位は頭だけとなった。

(腕をつたえば行けそうだな。)

魔獣は腕を振り下ろす。振り下ろされた腕にロビンは飛び乗り、そのまま頭に向かって走り出す。魔獣も頭部に行かせまいと氷柱で反撃する。

「くそっ……」

態勢を崩すがすぐに立て直す。その甲斐あって、なんとか肩まで到達する。

(あと少し。)

ロビンは足元を思い切り蹴り、魔獣の頭に飛び乗る。突然、魔獣が暴れだす。ロビンは必死にしがみつくが、魔獣が頭部を何度も壁にぶつける。

(くっ……!ヤバい、絶対骨折した……。)

ロビンの脇腹に激痛が走る。魔獣が暴れるのをやめ詠唱を始めた。下を見るとアリスや他の団員が魔法を使い、魔獣の気を引いている。

「……サンキュ。」

ロビンは目を閉じ、精神を集中させる。目を開けると手に『』魔力が纏わりついていた』。

(なんだ…これ?)

魔力を纏う、こんな現象は見たことがない。しかし、力がみなぎってくるのを確かに感じた。

(これなら…)

ロビンは魔獣の頭部に拳を振り下ろす。

「グゲエェァァア!」

(効いてる!)

ロビンは連続で頭部を殴りつける。少しずつだが、魔獣の動きが鈍くなっている。しかし相手は上級。この程度で倒れるはずがない。魔獣は体を大きく震わせる。

「ちょまっ、ヤベっ!」

ロビンは頭から落ちる。魔獣はその隙を逃さず、腕を振りロビンを吹き飛ばす。

「がっ…!」

「ロビン!」

ロビンは建物に打ち付けられ、地面に落下する。

「はぁ……おぇ……。」

(頭が…痛い…意…識……が。)

ロビンは意識が朦朧としている。おまけに口から血を吐いた。魔獣がゆっくりと近づいてくる。腕を振り上げ、ロビン目掛けて振り下ろす。

「くっ…」

ロビンは死を覚悟する。しかし、自身に魔獣の腕が触れることはなかった。

「……っ?!。」

ロビンが目を開くと、1人の男が魔獣の攻撃を刀で受け止めている。

「目が覚めたかい?その怪我だ、休んでおくといい。」

(誰…だ?)

「どこへ行こうというんだ?君の相手は僕だよ。」

魔獣は男を避けようとしている。

「まさか、僕の実力を見抜いたのか?流石は上級と言うべきだ。だからといって、僕の敵ではないけどね。」

男はそう言いながら刀を構える。銀色の刀身が日の光を反射する。

「グルアァァァ!」

逃げられないと悟った魔獣は、先程よりも力強く腕を振り下ろす。今まで以上の地響きがあたりを襲う。建物が崩落し、砂煙が立ち上る。砂煙が消えると、そこに男の姿はなかった。

「消えた?」

魔獣も男を探している。

「ここだよ。」

声のする方を見ると魔獣の肩に男が立っていた。

(いつの間にそんなところに……!早すぎて見えなかった。)

「この被害……上級の称号は伊達じゃないね。だけど……少しワンパターンすぎる。」

男は挑発しながら魔獣から飛び降りる。魔獣は詠唱をして氷柱を飛ばす。

「へぇ、面白いものを持ってるじゃないか。」

男は落下しながら大量の氷柱をすべて切り捨てた。ロビンは空いた口が塞がらない。男は自分たちとは比べ物にならないほど強い。

(なんだこれ……人ができる動きなのか……。)

他の団員も目の前の光景に呆気にとられている。

「そろそろ終わりにしようか。」

男は刀をしまい魔力を集中させる。刀が『魔力を纏っている』。魔獣は男に勢いよく殴りかかる。

「はっ!」

男が刀を抜く。しばらく沈黙が続いたのち、魔獣が悶え始める。

「グゲエェァァアガァァァァァァア!」

魔獣の断末魔があたりに響き、魔獣の体が少しづつ塵となった。

「さて、怪我人の治療をしよう。」

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