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【第1話】 運命が始動する日

 朧げな朝日が部屋に差し込む。その部屋に住んでいるロビンは重い目蓋をゆっくりと持ち上げる。最初に目に入ったのは散らかった自分の部屋だった。ここ最近はあまり部屋の掃除ができておらず、衣服やゴミが床や机に散乱している。彼自身が怠惰というわけではないく、単純に忙しいだけである。

「…やばい。」

ロビンは自分のだらしなさに睡魔と戦いながら口を開く。彼は仕事の関係ですでに2日連続で徹夜している。そのせいで掃除はおろか、普段の生活すらままならない。ロビンは鏡の前で顔を洗う。水滴が自身の青い髪に付着する。

「まずは朝飯だな……。」

水滴をタオルで拭い、ロビンはキッチン向かって冷蔵庫の中を見る。

「……何もない。」

食材がないことに気づく。

「……買いに行くのかよ……。」

ロビンは眠い体を無理やり動かして買い物に向かっう。

 店頭に着くと本日のおすすめの品が書いてあった。

「卵10個入り200円」「牛乳2リットル150円」

いつもより2割ほど安く、内心驚くロビン。これはチャンスだと思い買い溜めしようと思った。

 入店すると、早朝にもかかわらず沢山の人が買い物に来ていた。だが少し多すぎるような気がした。レジから入口付近まで列が続いている。ここまでの列は感謝祭などでしか見たことがない。しかし、今のロビンはそんなことは気にも留めなかった。

「買うものは卵と牛乳、あと豚肉と野菜類も欲しいな。」

早足で食材のある場所へと向かった。この人数で、尚且つ割引されているので売り切れていそうで心配なのである。


「危ねぇー、あと5個ぐらいしか残ってなかった。」

ロビンの手には卵のパックがあった。

「牛乳はどこだ?あと野菜と肉も。」

そう言ってあたりを見渡す。少し離れたところに見覚えのある後ろ姿が見えた。ロビンは近づいて声をかける。

「アリス、お前も買い物に来てたのか。」

「え?あ、おはよう。あなたがこんな時間にここにいるなんて珍しい。」

彼女はアリス。ロビンの幼馴染みだ。背中まで伸ばした赤い髪と透き通った青い瞳、変に曲がったアホ毛が特徴だ。学生の頃からの付き合いで、かなり親しい存在だ。早朝だからなのか、かなりラフな格好をしている。

「急いでるのか?」

「なんでわかったの?」

「お前がそんな軽装をしているときは、だいたい急いでるときだからな。」

「バレたか……。」

「それで、何を買いに来たんだ?」

「友達との約束があって、昨日買いに行こうと思ってたら忘れちゃって…。」

「何が必要なんだ?」

「え?手伝ってくれるの?」

「まあ、帰っても暇だし。困ってるなら手伝うのが友人だろ?」

「ありがとね。買うものはこれに書いてあるよ。」

アリスはメモ帳を取り出し、ロビンに見せる。


必要なもの

 果物(できるだけ多く) 小麦粉 砂糖 牛乳 卵 


「…前3つはいいとして。」 

「卵と牛乳はどうするんだ?牛乳はわからないが、卵はもう売り切れてるぞ。」

その言葉を聞いて、アリスは頭を抱える。

「これだけの人の数だから仕方ないか……。最悪別の場所に買いに行く。」

「買えるものだけ買おうぜ。こんなところで考えてて他のも買えなかったらそれでこそ最悪だ。」

「確かにね。行こ。」

2人は小走りで向かった。


「あー良かった、まだ売り切れてなくて。」

2人の籠には牛乳が入っている。

「まさかここまで疲れるなんて…。それに、卵もまだない。」

アリスは意気消沈する寸前だ。問題は卵だ。あのメモ帳を見る限り、間違いなくケーキの材料だ。ロビンの籠には卵がある。素直に欲しいと言えばあげれるロビン。しかし、アリスは人からものをねだるようなことはほとんどしない。

「…これいるか?」

「えっ?」

ロビンの言葉に驚くアリス。ロビンは手に卵を取ってみせた。

「それはあなたが手に入れたものよ。私がもらうことはできない。」

「気にすんな。俺は別のとこで買う。」

「あ、ありがとう。」

アリスは申し訳無さそうにお礼を言う。

「買いたいものはこれで全部か?」

「一応、これで全部よ。」

「それじゃ、レジ行くぞ。」

2人はレジへと向かう。


 レジにつくとそこには長蛇の列があった。入店してからかなりの時間が経過しているはずだ。それなのに、人は減るどころかどんどん増えている。

「これ…大丈夫か?あふれるんじゃないか?」

戸惑う2人などお構いなしに、人がどんどん入ってくる。

「ちょっと待て、どんだけ入ってくるんだ?!」

「この量……流石にまずい気が。」

「あのぉ、すいませ……うおっ!」 

ロビンは声をかけようとするが勢いにおされてしまう。

「……あっ……!」

ロビンはあることに気づく。入ってくる人がまるで何かに操られているような行相をしていたのだ。

「きゃっ!!」

アリスが声をあげる。

「どうした?!」

駆け寄るロビン。

「今何かが足下を通ったの!」

さっきの人の行相といい何かがおかしい。

「それはどこに向かった?」

「あっちよ。」

アリスは店内の奥の方を指差す。

「わかった。ちょっと待ってろ。」

「あ、ちょっと待って。」

ロビンはアリスに籠を預けて店内の奥に向かう。

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