17.模擬試合
「ライトとやるのも久しぶりだな。一回戦ってみない?」
「おいいね。アイクさんどうですか。やってもいいですか」
「いいんじゃないか。どっちが勝つのか楽しみだ」
「なら勝ったほうと私で勝負しましょうか。」
久しぶりの一緒の鍛錬で、ライトに勝負を持ちかけたらみんなノリノリで初めてしまった。護身術程度を5年くらいやってきた人と特化してこれまでやってきた人どちらが勝つのか。父は心の中でライトが負けたら鍛錬量を倍にしようと密かに思っていた。
「じゃあ私が審判をやろう、準備もあるから少し後にやろう準備ができたら言いなさい。だけど故意に遅延させるのはダメだぞ。いいね」
「はい(はーい)」
「「準備できました。」」
「分かった。ではお互い離れて…始め」
「うおおお」
気合の入った声と共にライトが上段から振り下ろしてきた。
それを余裕を持ってよけ距離を取ろうとする。
それを追いかけるようにライトが踏み込んできたためすぐに切り替え自分も踏み込む。そうしたことでライトは驚くような表情をしたが胴に向けて放った一撃は防御されてしまった。
しかし体勢が崩れたためそのまま振り下ろしで追撃をかける。剣を横にして防御したがそのまま足でライトの足を払い地面に仰向けにさせ剣を突きつけた。
「どうだ」
「まいった。」
「くっそ、簡単にヤラレっちまった」
「ライトどうゆうことよ」
「ライト、まだまだだな。鍛錬5倍くらいにしたほうがいいか?」
「ひっ、それは勘弁してください」
「なんでだ?気がついたら体勢を崩されてたんだが」
「内緒だな。あとは僕は姉ちゃんみたいに剣の技術はないから違う方面で攻めるしかないんだよ」
「カミトじゃあやるわよ」
「やらないって選択肢は」
「ないわ」
食い気味で答えられた逃げ道はなさそうである。
「分かったよ。でもちょっと休ませて」
「いいわよ少しだけね…まだ?」
「いやいや少しすぎるでしょ」
待ち始めて数秒で言われるもんだから反射で突っ込んでしまった。
「はいはい」
「しょうがないないいよ」
「よしやるわよ」
「準備はいいか」
「「はーい」」
「…始め」
始めの合図とともに距離を取る2人、そこから少しずつ移動しながら隙をうかがっている。
「カミト来ないの」
「いったらやられるじゃん」
「じゃあ私から行く、ぞ!」
我慢の限界というよりは試すような感じを出しながら鋭い踏み込みをして剣を振り下ろしてきた。ライトよりも格段に鋭い振り下ろしでであった。その振り下ろしを大きく引いて避けると追撃するように下から剣を振り上げてきた。上げ切ったことで空いた胴に横なぎに剣を振るが、柄で防がれてしまった。一歩間違えれば指が飛んでしまうがそれだけ実力差があるのだろう。負けじと何度も何度もリンと打ち合う。
「はぁはぁ、少し手加減してくれてもいいんじゃないの」
「あははは、勝負に手加減は良くないんだよ」
「無茶言うなよ」
様子を伺いながらどうしようかと考えながら返答をする。
「いくよ」
その掛け声と共に走り出すカミト、剣を振り上げ振り降しの体勢を作ると対応しようとしたのでもう一歩踏み込み体当たりをする。勢いをつけているため姉は後ずさった。そのまま横振りで剣を振るう。避けられたがこのまま体が流れないよう脇腹に力を入れ切り返しながら振るう。剣を縦にして防がれる、その勢いを殺さないよう反転しながら回し蹴りを放った。
「うお」
「視線外してどうするの」
視線を外したことで姉を見失ってしまいそのまま最後まで主導権をとれずやられてしまった。
「まだまだね」
「くっそーいけると思ったんだけどなー」
「姉弟でどんな闘いしてんだよ。俺もリン姉ちゃんとそんなに戦えないのに。」
「ライトはまだまだ鍛錬が必要って感じだな。カミトも途中までは良かったが、横振りを防がれた時点での回し蹴りは良くなかったな。あそこでは1回距離を取るか足を使うのであれば前蹴りでもいいな」
「そうなんだけどさ、そのほうが勢いがつくと、その時は思ったんだよ。予想外の動きをしないと勝てないじゃん」
「それにしても視線を外したから私はやりやすくなったのよ、また私の勝ちね。」
「ライト分かったか、僕はみんなみたいに剣だけでは戦えないから足とか体とかいろいろ使うんだよ」
「いいのかそれ」
「ああいいんだよ。魔物は待ってくれないからね、剣を持っていない敵もいる。そんな時に剣だけで戦っていては対応できないから。なんでもありだぞ」
「そっか」
「それに分かったと思うが体勢を崩すなどのことをすればそれだけ戦いやすくなるんだ。ただそれにはステータス次第の部分も出てきてしまうことがあるけどな」
「よし、明日から試してみるぞ」
「ただライトは基礎からやったほうがいいからな。しばらくは剣を振れないかもしれないな」
「えぇぇーーー」
そんなこんなもあり剣の鍛錬は終わった。試合を見学した後にみんなと一緒に型の練習を行なっていた。
「カミトくんすごいね専門でやってないのにライトくんに勝っちゃうなんて」
「まあ普段のお遊びではあそこまでやってなかったからな、初めてある程度ちゃんと戦ったんじゃないか」
「あれである程度なの」
「剣を使う限界ではあるな」
「剣を使う限界?」
「あぁ僕やミトの本職はなんだったけ」
「あ、魔法使い」
「そうだから10歳になったら魔法を使っての勝負もするだろうからそこからお姉ちゃんにも勝てるようにするんだ。ミトも発動時間を短縮すればいい勝負できるようになるんじゃないか?それぐらい魔法はすごいもんだと俺は思っているんだ」
「カミトくんはすごいな私も頑張らないと」
「そうだな一緒に頑張ろうな」
それからというものライトの鍛錬のメニューは5倍とはならなかったが2倍相当になり最初の頃のようにヘロヘロなことが増えてきた。姉はというと時間を見つけてはスライムやゴブリンを狩に父と一緒に森に入って実戦訓練を積んで行った。
「なあお姉ちゃん」
「んどうしたの」
「あれからレベルアップってしてるの?」
「してるわよ。魔物も少しずつとはいえ狩ってるんだから。本格的に狩るのは誕生日が最後のミトがEランクになってからになるわ。カミトもライトもそうなるよ」
「そっか、この辺にはダンジョンはないの」
「ないみたいね。その辺は迷宮都市の方に行かないとダメみたい。でもランク自体はダンジョン外の方が上がりやすいみたいってお父さんが言ってたよ」
「なるほど、ダンジョンの魔物ばかり狩られて多くなりすぎても良くないからか」
「お父さんたちもダンジョンに潜っていたそうだからある程度の強さになったら移動するんじゃない。」
「その前にミトの親御さんとの約束を守らなきゃな」
「その辺どうなのよミトは強くなれそうなの?」
「まだなんとも、だって魔法を覚えていないから強くなるかなんてわからないよ、けど放出と抑えるのは早くなってきたからな。もしかしたら発動も早くなるかもしれない」
「訓練すれば詠唱って短くできるの」
「いやいやわからないって。魔法覚えてないんだから。お母さんに聞いてよ」
「お母さんはスキル持ってるから短くて済むのよ。お父さんはスキル持ってないからちゃんと詠唱しないといけないようだし」
「お父さんて詠唱してたんだ。聞いたことなかったからわからなかった。」
「そういえばあなたが来る時にはお母さんも来てたから私もお父さんも魔法を使わなくても良かったんだ。お母さんがいない時のイエンスは寒すぎて凍えちゃうお父さんや私の魔法を使って暖を取ってたのよ」
「なるほどそうだったんだ。なら魔法を取った後で練習してみようかな。無詠唱で魔法は使いたいし」
「できるようになったら私にも教えてね。戦闘中に魔法が使いたくなっても詠唱してる余裕はないだろうし」
「了解。ミトにも協力してもらって研究してみるよ」
「よろしく」
こうして姉とも相談や話し合いを進めて冒険者になるための準備を進めていくカミトであった。
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