15.練習の成果
午後からライトとミトも交じっての鍛錬が始まった。
「はあ、はあ、お前たちいつもこんなことしていたのかよ。素振りとかだけじゃなかったのかよ。」
「……パタリ」
「ミトー、大丈夫か」
「もうダメかもしれない」
「だらしがないわね」
ライト、ミト、自分、姉の順番である。普段は剣の鍛錬を一緒にしていただけだったので気が付かなかったようだが、走ってみると3歳4歳からずっと基礎トレーニングしていた2人についていけるはずもなく、まずは1週間基礎トレーニングを中心にしていこうという話しになった。
「1週間走りと、筋トレか、頑張ろうなミト」
「頑張る…けどもう挫けそう。」
「早いなおい」
「カミト、魔法使いになるにもこんなに走る必要あるの」
「お母さんに言われたんだけど、魔法使いでもある程度動けないとお荷物になるんだってさ。逃げなきゃいけない時に走れませんじゃどうなるかわかるだろ」
「そっか、少しでも走れないと生き残れないんだ」
「守ってもらうだけじゃなくて最低限は自分でも守れるようにならないとな」
「頑張る」
「ライトほら剣の鍛錬に行くわよ。私たちはこの2人を守らないといけないとだから動けませんじゃみんな死ぬわよ」
「うげ、もう体が動かないんだが」
「はぁ?」
「はい、すぐ動きます」
姉に凄まれ動けないと言っていたのにキビキビと動き出すライト。そのまま扱かれるのだろう頑張れとエールを送った。
「さあカミト、ミトちゃんこっちにきて魔法の鍛錬をするわよ」
「「はーい」」
「カミトにとっては2回目になるけどおさらいの意味も込めてしっかり聞きなさい」
「はーい」
「さあミトちゃん。自分の魔力は意識できてる?」
「お母さんに教えてもらって多少は。」
「なら放出する魔力の量を増やしてみなさい」
「…こんな感じでしょうか」
「まあ悪くはないわね。ただ放出するのに時間と集中力を割きすぎているわね。カミトやってみなさい」
「はいできた」
「はやい…」
「このくらい早く自然にできれば十分ね。なぜそうしなければいけないと思う?」
「えっと。発動に時間がかかるからでしょうか」
「それもあるけど1番ではないわね。カミト説明しなさい」
「はーい。ミト魔物と戦う上で1番気をつけないといけないことは何かわかるか」
「魔法を外さないこと?」
「それもあるけど1番は、魔物から視線を外さないこと。複数体いる場合は全体が見えるようにできると1番いい。じゃその理由は?」
「えっと。わからない…です」
「さっきミトがしていたように、魔法を唱えるとしたらどうなる?魔物から視線が外れたり追えなくなるだろ。特に複数体いた場合前衛に指示も出さなきゃいけない、そんな時に魔法を発動するたびに魔物を見失っていたらどうなるかわかるだろ」
「そっか。全体を見なきゃいけない立場なのに見れなかったら前衛が困るよね」
「しばらくはお父さんお母さんがいてくれるから大丈夫だけど他の人と組む時に困るよね」
「私カミトくんたち以外で組むことはないよ?」
「もしもの話だよ」
「はいはいそこまで。ミトちゃん分かった。魔法を発動するのに集中しすぎていたら良くないってことよ。あとは魔力を抑えることはできる?」
「はいこんな感じでしょうか」
「抑える方が得意そうね。魔力を感知する魔物もいるから抑えられるといいわよ。あとは魔力を抑えながら魔法を放てるようになればいいわね。魔法を放つ時に魔力が発生するからバレる可能性はあるけどそれまでは気づかれずに済むから」
「はい」
「じゃあしばらく放出と抑える練習をしましょうか」
「はい」
ミトはカミトと一緒に少しずづ練習はしてきたが意味などは理解していなかったようだった。カミトも親から教えてもらうもんだと思っていた内容だったため聞かずにいたが、親によって差があるようだった。少しでもわかりやすく説明できるよう洋司の頃の知識が活用された瞬間でもあった。
「じゃあカミトは次の段階ね。
「今度は何するの?」
「今度は私が指定した箇所の魔力を放出して」
「分かった」
「右手…左足…頭…両脚……できるじゃない」
「練習したからね」
「なら次は、指定した部位に魔力を集めなさい。」
「はーい」
「……これもできるのね、気がつかないうちに上達したわね」
「ずっと練習していたからね」
「なら今度は放出したら移動、放出したら移動ていう感じで練習してなさい、ずっと棒立ちだといい的になってしまうから」
「はーい」
すでに歩きながら放出割合を変えれるようになってきているため。走りながら放出割合を変えれるように練習していこうと思うのであった。
「2人ともお疲れ様。初めて一緒に鍛錬してみてどうだったかな。」
とライトとミトは父の労いとともに質問されていた。
「えっと、正直きつかったです。リン姉ちゃんは平気でずっとやっているしついていけるのかなって思いました。」
「私はそこまで動いていないのでなんともいえませんが、頑張ろうと思いました。」
「これは基礎の練習でもある。これを飛ばしてしまうと剣だろうが魔法だろうが習得には時間がかかってしまう。命をかけているから余計にだね。ただ慣れていないうちはキツイかもしれないけど慣れてくれば当たり前にできるさ。リンやカミトだって最初はヘロヘロだったんだから」
「そっか。始めたのが違うもんな、でも早く同じぐらいにならないとダメなんだろ」
「そんなことないさ。リンは同年代でもかなりいい線いってるし、魔物を倒してみんなよりレベルアップしているからね。そら強いさ」
「ということはそれについていけてるのがすごいってこと?」
「そういうことになるな。カミトは昔っから体を動かすことに関してはすごいからな。効率的な動きをわかっているかのように走ったりするから。でも剣を振るのはまだまだだけどな」
「それを言わないでよ」
父に褒められていると思ったらいじられたカミトは照れながら返答した。
「カミトくんにも苦手なものがあるんだ。」
「そりゃね、完璧超人なんてこの世にはいないのさ」
「かんぺき…何ていったの?」
「ええとなんでもできる人はいなくて欠点は誰にでもあるっていったのさ」
咄嗟に日本での言葉を言ってしまい拾われて困ってしまう。言っている意味は通じたようなので問題なしなのである。
「じゃあ2人とも気をつけて帰るんだぞ。また明日な」
「「また明日」」
話していると暗くなってしまうと思い話を切り上げた。
夕ご飯を食べている時…
「それでお父さん、お母さん、ライトとミトはどう」
「まだ初日ではなんともいえないぞ」
「そうねぇまだ様子見の段階だし」
「続ければ確実に強くなる。お前たちのようにな、ただ続かないのであれば諦めてもらうしかないな」
「2人の両親から許可はもらったけど確実に連れて行くとは言っていないわ。見込みがなかったらまた説明しに行きましょう」
「無理にというか行きたいって言っているから連れていけばいいのに」
「リン、連れて行くのにも限度があるんだぞ。強くなろうとしない人を仲間にするというのをどう思う」
「ムカつくわね」
「そうだな、怠けているのに自分と同じ分前だったり命を預けたいと思わないだろ。お前は身内に甘くなってしまうタイプだから気をつけろよ。」
「分かってるわよ聞いてみただけだし」
根は優しい姉のことだからどうにかして連れて行ってあげたいという気持ちがあったのだろう。しかし自分や他の人にまで迷惑がかかることに気がつき思い直したのであった。
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