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10.日常

「カミト遊ぼうぜ」


「いいよ、今日は何する?」


「勇者ごっこなんてどうだ?」


「いいよ、ライトは何役やる?」


「もちろん勇者だ!」


「姉ちゃんは?」


「私も勇者ね!」


「おいおい俺と被っちゃってるじゃん」


「うるさいわね。私の方が年上なのだから譲りなさい」


「リンお姉ちゃんは聖女とかどうなの?」


「ミト、私は剣士になりたいのよ!だから聖女より勇者なの!」


カミトは8歳になった。村の中を動き回るようになり話せる友達も増えてきた。今話しているのはライトとミト、特に仲良くなり最近は常に一緒に遊んでいる。


(勇者ごっこかぁ、今の時代に魔王っているんだっけ?)


疑問に思いながらも成長した体で木の棒を持ちチャンバラごっこをしていく。


「カミトはどうするんだ?」


「俺?もちろん村人Aだよ」


「え?魔王の成り手がいないんだけどやってくれよ」


「えー魔王ってやられる役じゃん嫌だよ」


「お前以外にやれる奴がいないんだ頼むよ」


「仕方がないな…」


ライトの言葉に嫌々ながらも頷くカミト、もちろんごっこということで勇者一行と魔王の最終局面からスタートだ。


「魔王カミト残ったのはお前1人だ覚悟しろ」


「「カミト覚悟するんだな」」


「ふはははは、勇者一行よく来たな噂に違わぬ強さ私に見せてみよ」


「いくよみんな」


「「おう」」


「は、と、ふ」


「おっと、なんの、勇者よなかなかやるではないか」


「トドメだ、覚悟」


「やられるかー」


子ども同士の楽しいチャンバラに思えるだろうが、かなりガチでやっている。現に魔王の役をライトがカミトに押し付けてきたのは、リンがめちゃくちゃ強いからでありそれに対抗できるのはカミトしかいないからであった。時には魔法使いになるからなどなんとか回避しようとしているのだがなかなか逃してもらえないのが現状であった。


「姉ちゃん強すぎるんだよ。もう少し手加減してくれよ」


「私は勇者よ。そんな手加減なんてして負けてしまったらどうするの」


「いやいやこれは遊びなんだからもう少し手加減してくれても、それにライトもミトも攻撃してくるから防ぎきれないよ」


「でもいつも思うけどお前ってすごいよな3対1である程度は防げるんだから」


「本当それ、後ろに目があるんじゃないかってくらい反応がいい時もあるし」


「防ぐだけなら誰だってできるよ攻撃ができないんだよ。現に姉ちゃんが1人の3対1だったら逆にやられちゃうじゃん」


「それもできない俺やミトはどうなるんだよ」


「3人とも鍛錬が足りないわね、そんなんじゃ強くなれないわよ」


なんとも理不尽である。9歳になったリンはここら辺では負け知らずの女帝となっていたが天狗になることもなく鍛錬を毎日欠かさずにやっていた。体力に関してはカミトには勝てなかったが、剣術は父に迫る勢いで上達しており、スキルがないのにすごいなと常に言われていた。魔法に関しても一緒にトレーニングすることはあるがそこまで差があるようにも感じずこれが天才かと心の中で震え上がっているカミトであった。


「カミトこれからお父さんを呼んでランニングするわよ」


「わかったじぁ訓練所に一緒に行こうか。ライト、ミトまたな」


「「じゃあね」」


遊びもほどほどにしてトレーニングをするために訓練所へ移動する2人。剣を扱う鍛錬では訓練所を使うことも多くなってきたのだが、ランニングに至っては村の周りを走るのを続けていた。時間は計れないがどこまで走ったのかが一目瞭然のため自然とこの形になってきている。もう少しでもう少しで村1周できそうなのだ。


「お父さん、一緒に走って。」


「おうわかったちょっと待っててな」


「2人ともほぼ毎日鍛錬を続けていて偉いな。ライトにも見習わせたいよ」


そう呟いたのはライトのお父さんであった。ライトのお父さんも自警団に入っており普段から父と仲良くしており家族ぐるみの付き合いだ」


「ライガさんこんにちは、早く強くなってお父さんと冒険したいんです。」


「こんにちは、お父さんに早く勝ちたいの」


自分姉の順番である。姉は最近父に勝ちたいらしく、こればっかり言っている。


「はははそうかそうか、アイクが羨ましいな。ライトは最近サボっているからな。見習わせたいよ」


「いやいやライトも私たちと一緒に鍛錬している時もありますからね。」


「分かってはいるんだがあいつには基礎が足りてない。地道な基礎トレーニングを続けてこそ剣の鍛錬に役立つというものだ」


「そうですね」


そう姉は答えていた。ライトは、ごっこ遊びでも剣を使うため姉や自分と一緒に剣の鍛錬をすることはあってもランニングなどのトレーニングは見ているばっかであった。最近はその姿にも見慣れており何もいうことはなかったのだが姉は少し思うところがあるようだった。ミトは魔法使い志望で剣はあまりやらないが、トレーニングはできる範囲で参加しようとしていた。昔からやっている姉や自分とは最後までできていないが少しずつ回数も増えてきたところだった。


「今日は、一周できるように頑張るんだ」


「私もできる限りカミトについていけるようにするわ」


「よし2人とも頑張るんだぞ、よーいどん」


最初の頃は危なく両親がそれぞれについていたが今となっては村に逃げ込むくらいはできるだろうと父が一緒に走るだけになっていた。たまに母が体力維持のために参加してくることはあったが4日に1回程度であった。


「やったーやっと走り切れたー」

やっとのことで村一周を走り切ることができた。5年目にしてやっと走り切ることができた。雨の日も風の日も暑い時も寒い時も走り続けた甲斐があった。一番の敵は筋肉痛であったが。


「舗装されているわけではないから怪我しないようにするのも大変だった。無理のないようにただ追い込めるようにするのもやっぱり気持ちだよな。何度負けそうになったか」


「はあ、はあやっと終わった。カミトはどうだったの?」


「走り切れたよ」


「さすがね私もあともう一歩なんだけど追いつけなかったわ」


「お姉ちゃんもお疲れ様」


「カイト頑張ったな、リンもあと少しじゃないか。諦めるなよ」


「もちろんよ、次は手合わせね。お父さんお願い」


「分かった。カミトはどうする」


「じゃあ少しだけやる」


「よしリンから来なさい」


「いくわよ!」

激しい撃ち合いが目の前で繰り広げられている。先ほどまでの撃ち合いは防戦しかなかったが今は攻防を激しく入れ替わりながら打ち合っている。父はスキルがある分手加減している様子であるがそれでも9歳の動きにたまに翻弄されていることもある。対応されているがとてもスキル取る前だとは思えない動きをしていた。


「やめ。リンはさらに強くなっているな。これは将来父さん以上の剣士になるぞ」


「もちろんよ頑張る」


「次はカミトの番だな。」


「よし、いくよ」

(ここをこうして、ここ。くそ次だ…)


「おお惜しいな」


カミトはリンのような動きができるわけではないので搦手多めにしている。姉の奇抜な動きに対応しているだけあってカミトの動きにも対応されてしまう。それでも諦めずに毎回毎回考えた動きをやっている。


「よしここまでにしようか」


「はあはあ分かった」


「カミトはもう少しフェイントを大きくしてもいいかもしれないぞ。」


「小手先に頼るなってこと?」



「そうじゃない低ランクの魔物は細かい動きとか見ていない場合もあるしなもちろん上位に行くほどそういう動きも必要であるがまずはしっかり振れるようになってからだな。」


「なるほど、でもお姉ちゃんほどではなくとも振れるようになってきたと思うんだけど。」


「確かに振れるようにはなってきたが2人ともまだまだだぞ、継続して頑張るぞ」


「「はーい」」

お読みいただきありがとうございました。

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