屋敷の令嬢
「皆地味な格好をしてらっしゃるのね。」
敏麗は辻馬車から街の人々の様子を見ている。以前芳子と共に日本を訪問した時はもっと洋装や振り袖の女性達が街を行きかっていた。しかし今は違う。女性達は炭にまみれた汚いブラウスやモンペといった質素な装いばかりだ。
「仕方ないな。日本はアメリカと戦争初めたから。」
2週間前日本軍はアメリカの真珠湾を攻撃しアメリカ大陸までもを侵略しようとしているのだ。
「馬鹿なの?日本軍は。」
芳子の説明に敏麗が呆れ返る。
「おい、俺の前でそれ言うか?」
隣で聞いていた田中が問いかける。
「相変わらず敏麗ちゃんらしいな。僕と初めて会った時と同じ事を言ってる。」
馬車はほどなくして屋敷に止まった。軍はこの屋敷の倉庫を食料庫として使っている。
「やっぱり入れないか。」
田中は屋敷の扉のドアノブを回すがびくともしない。
「敏麗も芳子も離れてろ。」
田中は拳銃でドアノブの真下を撃つ。貫通したところに手を入れ中から鍵を開ける。
3人は屋敷の中へと入っていく。中は埃だらけだ。長い廊下を歩くと居間に通じる。ソファの裏は螺旋階段だ。
「ふふふ」
長い黒髪の振り袖の少女が螺旋階段の上から3人を見下ろしている。
「お前どこから入った?降りてこい。」
田中が少女に銃を向ける。
「田中中佐、あの娘が見えてるのてすか?!」
「見えてるも何も今あの場所にいるだろう?なあ芳子。」
田中が芳子に話を振る。
「ああ、不法侵入者か。もしかしたら僕や佳代子ちゃんのように食糧を盗みに来た人間かもしれないな。」
少女は今度は2階から手招きをしている。
「着いてこいって言ってるのか?」
「田中さん、行ってみましょう。」
田中と芳子が階段を登ろうとした時
「お待ちになって!!」
敏麗が止める。
「ここはわたくしが1人で行きますわ。とてつもなく嫌な予感がします。」
敏麗は鈴を手にし旗服姿で階段を登っていく。少女は手招きをしながら移動していく。
敏麗は少女の姿を見た時ただならぬ霊気を感じた。霊感のない田中や芳子にも見えたのだ。相当念の強い霊だろう。
少女は角を曲がると一番奥の部屋へと入っていく。敏麗も部屋に入る。そこには天葢付きのベッド、可愛らしいピンクの箪笥にピンクのクローゼット、木でできた机、それからピンクのテーブルクロスが引かれたテーブルと周りにいくつか椅子が置いてあった。床は白い百合の渋滞がひいてある。
(ここは彼女の部屋かしら?)
その時大きな物音と共に箪笥にから何かが落ちた。敏麗は近づいて拾う。写真立てだ。
「これが貴女なの?!」
写真には長い黒髪に白いフリルのワンピースの少女が写っていた。佳代子の家で見た霊と一緒だ。
ギー!!
敏麗の背後の扉が風もなく閉まる。




