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黒い髪の毛

「佳代子」

「何?父さん。」

佳代子は北川の娘だ。

「肩に何かついてるぞ。」

佳代子の右肩に長い黒髪がついていた。

「あら、抜けてしまったのね。」

佳代子は目の前の姿見に自分の姿を映す。彼女はお団子に一纏めにしているため髪の毛が落ちてくることはない。

「きっと芳子さんのだわ。」

小屋の中でずっと芳子に背後から抱き締められ息を潜めていた。その時に抜けたものが佳代子の肩に落ちたのだろう。佳代子は髪の毛をゴミ箱に捨てる。

「皆、お風呂沸いたわよ。」

居間にやって来たのは佳代子の母であり北村の妻だ。

「分かった。芳子さん一緒に入ろう。」

芳子は顔を真っ赤にする。

「芳子さん、どうしました?女同士なんですから恥ずかしがる事ないじゃないですか。」

「そうだな。」


 芳子は一度部屋に戻りスーツのジャケットを脱ぎ洋装から和装に着替える。

 タオルを持って浴室に向かうと髪を降ろした佳代子がいた。肩につかないくらいのゼミロングだ。その瞬間芳子の背筋にとてつもない悪寒が走る。

「佳代子ちゃん!!」

芳子が佳代子の腕を掴む。

「芳子さん?」

「佳代子ちゃん、今すぐお祓いに行こう。あの長い髪の毛肩につくぐらいの長さだっただろう。」

佳代子の髪は肩にはつかず芳子は短髪だ。佳代子の背筋にもゾッとした悪寒が走る。小屋て身を潜めている間ずっと棚の隙間からあの女に覗き込まれていたのだ。その時


バンバンバン


浴室の壁を叩く音がした。

佳代子が芳子の腕を掴みながら浴室の扉を開ける。

「いや!!」

小屋で見た女が格子から手を伸ばしている。

「入ってこようとしてるのかしら?」

「塩だ!!台所から塩を持ってきてくれ。」

芳子は以前敏麗と廃墟で出会った時塩を撒いて追い返してるのを思い出した。

「きゃっ」

「佳代子ちゃん大丈夫か?!」

佳代子は転倒して腰が抜けて立てない。

「佳代子ちゃん」

芳子が庇おうとした時。

「待て!!来るな!!」

女が格子をすり抜け入ろうとしている。しかし女はスッと体を引っ込めて消えていく。

「僕達助かったのか?」

芳子が唖然としていると外から読経が聞こえてくる。

「ぎゃあ!!」

続いて女の断末魔のような叫びが聞こえる。

「裏の路地からよ。」

芳子は佳代子を連れ外に出ると家の裏の路地にまわる。

「誰?!」

先ほどの女の前に白い旗服の女性が対峙している。女性は読経をしながら鈴をシャンシャンと鳴らしている。黒髪の女は消えていった。

「敏麗ちゃん?」

芳子が旗服の女性に声をかける。

「お久しぶりですわね。芳子様。」

女性が振り向く。彼女は芳子の恋人であり満州国の現皇后敏麗であった。

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