もう1人の転生者
敏麗はイアリングの片割れを探しに行こうと舞踏会が行われたロビーへと戻る。先ほどまで溥儀と敏麗の座っていた玉座や降霊に使ったテーブルや椅子は撤退され元のホテルのロビーに戻っている。
「どこに落としたのかしら?」
敏麗は床に手と膝をついて探すがそれらしき物は見つからない。
「皇后様?!」
敏麗は声をかけられ立ち上がる。目の前には溥儀をダンスに誘っていた赤いドレスに薔薇の花のコサージュをつけた少女がいた。
「李栄羅と申します。」
「栄羅さん?ごめんなさいね。見苦しいとこれをお見せしてしまって。イアリングを落としてしまったようで。」
「イアリングってこれですか?」
栄羅の手の平には白い蘭の花の形をしたイアリングがある。敏麗の左耳にあるものと同じ物だ。
「まあ、こちらはわたくしのだわ。ありがとう。」
敏麗が栄羅の手から受け取ろうとした時
「あら、手が滑ってしまいました。」
栄羅はイアリングを頭上のシャンデリア目掛けて投げる。イアリングはシャンデリアに引っ掛かって取れそうもない。
「別にイアリングの一つぐらい大したことないでしょ?皇后様」
栄羅は敏麗に顔を近づける。
「いえ、福田鈴さん。」
敏麗は転生前の名前で呼ばれ一瞬顔を強ばらせる。逆行転生してきた事は芳子と鈴花にしか話してないはずだ。なぜ彼女が知ってるのだろうか?
「うふふ、その顔なぜ私の転生前の名前を知ってるの?って顔ね。」
栄羅は敏麗の心の中を読み取る。
「満蘭の制服に校風。確か王子様を待つ庭園でしたっけ。どこかで聞いた事がある話だと思ったら突然思い出したのよ。前世の記憶。貴女の事もね。そしたらプリティーズなんて言うからね。これはもう決まりだわって思った。だってこの時代の人間がプリティーズなんて知ってる訳ないもの。」
「一体貴女は誰なの?」
敏麗は鈴時代のクラスメイトを思い返すが全く見当がつかない。
「分からないわよね。貴女はいつも教室の隅で本を読んでたから。男子に囲まれてた私とは無縁の存在だったものね?」
「ひょっとして貴女西園寺さん?!」
敏麗の脳裏に1人の少女が過った。
鈴だった頃。高校2年生の時同じクラスに男子とばかりつるんでる娘がいた。正直鈴は彼女に苦手意識があった。
「正解。」
「わたくし行くわ。貴女に付き合ってる暇なんてないの。」
敏麗がロビーから客室に戻ろうとした時
「待って。」
栄羅が敏麗の腕を掴む。
「私福田鈴には用はないの。だけど敏麗皇后にはあるわ。」
「どんな要件ですの?」
「貴女に死んでもらいたいの。」
栄羅はドレスの中からナイフを取り出して敏麗に向ける。
「何をなさるの?」
「貴女は私達中国人の敵、日本の手先。」
栄羅はナイフを持ったまま敏麗に近づいてくる。
「辞めて、わたくしが何をしたというの?」
「私達中国人の女の子を日本人の男に差し出すなんて卑劣だわ。」
栄羅がナイフを敏麗目掛けて振り下ろそうとした時
「そこまでだ。」
溥儀が栄羅の腕を掴みナイフが床に落ちる。
次回新章突入します。




