鈴花の仇打ち
「母の仇、覚悟!!」
鈴花が大島目掛けて短剣を振り下ろす。その時
「きゃあ!!停電よ。」
辺りが真っ暗になる。敏麗が蝋燭の火を消したのだ。
「もしかして霊の仕業か?」
「灯りはまだか?」
灯りはほどなくして付く。
「きゃあ!!」
会場にいた出席者の女性の1人が悲鳴を上げる。敏麗はテーブルに突っ伏し鈴花が大島を刺している。
「嘘?!」
大島は一切出血をしていないのだ。
「鈴花、そこまでだ。」
田中が部下を率いてやってくる。大島は部下に連行されていく。
「皆さん、驚かせて申し訳ありません。」
田中は出席者達に頭を下げる。
「こちらは皇后様が考えた余興でございます。」
田中は一礼するとロビーを後にする。
「あら、全てお芝居でしたのね。」
「幽霊も嘘ってことなのね。」
女性達は安堵の笑みを浮かべる。
「でも皇后様は霊感がおありで宮中に入られたのでは?」
「あら、それも演技じゃないの?」
赤いドレスの少女が呟く。先ほど溥儀をダンスに誘った少女だ。
「あの田中中佐。」
田中を追って鈴花がホテルの玄関口に姿を見せる。
「鈴花、どうした?」
「何の真似ですか?復讐に協力してくれるのではなかったのですか?それにこの短剣。」
鈴花が見せたのは大島を刺す時に使った短剣だ。
「これ小道具じゃないですか。」
鈴花は短剣で自分の手の平を刺すが出血はしない。
「どうだ、よくできてるだろう。」
「協力するとか言って結局身内を庇うんですね。」
「まあ、鈴花。話を聞け。」
田中は鈴花をホテルの中へ連れていく。
鈴花が連れていかれたのは控え室にしている客室だ。ベッドでは敏麗が眠っている。
「とにかく座れ。」
田中は鈴花をソファーに座らせる。
「君に黙って小道具の短剣を渡したことは謝る。許してほしい。」
田中は頭を下げる。
「だけどそれは分かってほしかったんだ。復讐しても君の母は戻って来ないと。仮に復讐が成功しても殺人罪で投獄される。そんな事母が望むわけないだろう。」
「お母さん言ってたわ。」
眠っていた敏麗が目を覚まし体を起こす。
「自分は大島とその部下に殺された。だけど鈴花が無事で良かったと。鈴花には復讐なんて考えず今ある幸せを大切にしてほしいと。」
「大島は軍が処分する。だから鈴花は前を向い生きてけ。」
「はい。」
鈴花は敏麗と田中の言葉に頷く。
「ところで敏麗さん、イアリング片方どうしたのですか?」
鈴花に言われ姿見に写る自分の姿を見る敏麗。右耳に付けたはずのイアリングがなくなっている。
「きっとロビーのどこかで落としたのね。わたくし探してくるわ。」
敏麗はドレスの上に白いボレロを羽織ると部屋を後にする。




