守護霊
敏麗と芳子と瑛林の3人は客間で奏を待つことになった。花柄のソファーに赤い絨毯、暖炉まである。壁には古い時計がかかっている。
「敏麗ちゃん、待たせたね。」
部屋に入ってきたのは青い中華服に髭を囃した50代半ばの男性だ。
「それにこちらの方は?」
奏は芳子に目をやる。
「川島芳子です。」
芳子は日本名を名乗る。
「芳子さん、男装の王女様ですね。お噂は聞いてますよ。」
「先生、今からお祓いをお願いできますか?」
敏麗は単刀直入にお願いする。
「お祓い、何があった。」
敏麗はこれまでの経由を話す。級友に廃墟に連れて行かれたこと、そこが悪霊の溜まり場であったこと、そこで軍の任務で来てた芳子と出会ったこと、そして級友達は取り込まれてしまったこと。
「廃墟って山の中腹にある大きなお屋敷か?」
「ええ、確か白い屋根で2階建てでしたわ。」
「やっぱりか。」
あの場所は霊能力者の間で有名な廃墟で有能な霊能者が束になってかかっても敵わないという危険な場所であった。
「奏先生」
芳子が声を挙げる。
「軍があの屋敷を調べたら事故も事件もありませんでしたよ。なぜ?」
「廃墟というのは成仏できない霊が集まりやすいんだ。それにしても芳子さん、貴女には相当強い守護霊が憑いてますね。」
奏は芳子の後ろに旗服の女性が見えるという。
(女性?!)
敏麗は屋敷の中で助けてくれた貴婦人を思い出した。
「奏先生、わたくし会いました。その方に赤地にピンク色の花柄の旗服で髪に花の髪飾りに王冠をつけていた貴婦人に。」
敏麗は貴婦人の特徴を説明する。
「そうだ、その方だ。」
「わたくしその方に言われました。顕シを助けてと」
「芳子さん心当たりはありますか?」
芳子は過去の記憶を振り返る。
「お母様!!」
少し考えてから口を開く。
「お母様だ。」
芳子の実の母だと言う。芳子は6才のときに日本人の養女になり日本で暮らしていた。日本人川島芳子として。
17才のときに実の父でもある清の国王が死去。芳子が大陸に戻ったときは母もすでに父の後を追っていた。芳子は天涯孤独になってしまった。
「きっと亡くなってからも貴女の事を見守っていたのでしょう。」
「お母様」
芳子は涙を流す。
「お兄ちゃん大丈夫?」
瑛林が優しく声をかける。
「ありがとう。大丈夫だ。」
芳子は瑛林を抱き締める。
その後3人別室で奏の霊視を受けた。悪い霊は着いてこなかったようだが念のためお祓いもお願いした。お祓いが済むと3人は芳子の馬車で帰路に向かう。
敏麗はぐっすりと眠っている。芳子にもたれ掛かってきた。
「お姉様、強い霊と対峙した後はいつもすぐに眠ってしまうの。」
瑛林が話す。
「徐霊も体力がいるのか。ありがとう敏麗ちゃん。今日は君のおかげで助かったよ。」
芳子は敏麗の髪を撫でる。