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婉容の帰国

「皇后様、お久しぶりですわ。」

満州国の宮殿にいる敏麗の元に婉容が訪れた。宮殿にいたころの旗服とは違い丸襟にドットのワンピースという洋装である。

「お久しぶりね、敏麗。この部屋も随分と変わったわね。」

婉容が通されたのは敏麗の部屋だ。かつて皇后であった婉容もこの部屋を使っていた。

「ええ、自由に使わせてもらっていますわ。」 

カーテンの色は赤から淡いピンク色に家具の椅子は清朝の象徴である竜の柄から薔薇、天井からはシャンデリアが吊るされ西洋風の部屋になっている。

「貴女らしいわね。私こういうの好きよ。」

「皇后様に気に入って頂けて光栄ですわ。」 

「敏麗、今の皇后様は貴女よ。私の事は名前でお呼びになって。」

「うふふ、そうでしたわね。婉容様。」

敏麗は笑い出す。

「敏麗皇后、頼まれていた物持って参りましたわ。」

婉容は鞄からデザイン画を取り出すとテーブルの上に置く。

「まあ、これ全て婉容様が?」

敏麗はデザイン画1枚1枚に目を通す。

「なかなか斬新なデザインもあるのね。現代的な。」

ドレスは19世紀に流行ったクリノリンスタイルの物の中に裾がマーメイドなどの裾に広がりのない物もある。

「パリは常に新しい物を求める流行の溜まり場のような場所ですわ。私も毎日刺激を受けているわ。」

「素晴らしいじゃない!!きっと中国の女性達も気に入ると思いますわ。満蘭の制服だって気に入ってくれたのだもの。」 

中国大陸ではヨーロッパの祖界も多く多民族が暮らしている。しかし現地の中国人達は独自の文化に拘り西洋人達を受け入れようとしない。妹瑛林のように。敏麗は少しでも中国人が大陸の日本人や西洋人との距離を縮めるきっかけになればと思っている。

「ところで敏麗、芳子は元気?」

婉容の口から芳子の名前が出ると敏麗は黙り込む。

「芳子様は日本に帰りましたわ。」

「日本に?てっきり敏麗が皇后になったって聞いたから芳子が皇帝に即位したのかと思ったわ。」

「日本に帰ったというより私が帰したという方が正しいわ。」 

「どうして?貴女は芳子のこと好きなんじゃなかったの?」

「好きよ。今でも。」 

「だったらどうして?」

「だからよ。」

その時

「敏麗、入るぞ。」

部屋にやって来たのは皇帝溥儀であった。

「陛下?!」

「婉容?!」

婉容はかつての夫と突然の再会を果たす。

「わたくしが呼んだわ。少しお話したら?」

敏麗は婉容からデザイン画を預かりこれから生糸工場に行くと言って部屋を出る。

部屋には溥儀と婉容の2人だけが残される。

「久しぶりだな。」

溥儀が婉容の向かいのソファーに腰をかける。

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