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皇后の初仕事

「敏麗、何言ってるんだ?」

「何って聞こえなかったですこと?舞踏会をやると言ったのですわよ。皇后としての初仕事だわ。」

敏麗は鈴花の夫が経営するホテルで未婚の平民女性を招いて舞踏会をやろうというのだ。

「それが鈴花の話とどう関係があるんだ?」

「田中中佐」

敏麗は田中の耳に口を近づけ何か呟く。

「お前本気か?」

「ええ、本気ですわ。あの大島とか言う男の左手の薬指には何もなかったわ。恐らく独身ですわ。」

「敏麗さん、何をする気ですか?」

鈴花は話が読めずにいる。

 敏麗は表向きは平民の独身女性に日本人の官僚や軍の上層部の人間を宛がい玉の輿の機会を与えるというものだ。

「鈴花、貴女も舞踏会に参加するのよ。」

「だけど私は悠平さんが。」

鈴花は慌てる。悠平とは鈴花の夫の名だ。

「うふふ、そんなことは100も承知だわ。貴女はホテルのオーナーの夫人として参加するの。ホテルには屋上はあるかしら?」

「はい、あります。」

「ならいいわ。」

敏麗は鈴花の耳元で囁く。鈴花は青ざめた顔をしている。

「どうなさったの?怖い?怖じ気づいた?」

鈴花は口を開かない。

「敏麗、待て。」

代わりに田中が口を開く。

「公務を1人の国民のために利用するのか?俺は好かんな。」

「あら、決して公務を利用してるつもりはないわ。平民の女性達に玉の輿の機会を与えるのも事実ですわ。それにドレスや靴も用意するのに人も必要。楽団だって生演奏のがいいわ。」

敏麗はドレスの縫製は失業者を雇い入れ楽団は大陸で活動する音楽家を集めるという。

「当然有名な奏者ではなく本業だけでは食べていけない人達よ。」

敏麗は舞踏会は女性達の玉の輿の機会を与えるだけでなく貧困者の救済も兼ねているという。

「お前にしては考えたな。それなら協力してやらんこともない。」

「でしたら話は早いわ。田中中佐、後は鈴花をお願いしますね。」

敏麗は田中に大島の調査と鈴花の剣の特訓をお願いする。

「敏麗さんは何をするのですか?」

「わたくしは他の仕事があるわ。」



 


 あれから2週間した頃パリの婉容の元に一通の手紙が届いた。

「婉容皇后様、お久しぶりです。本日は相談がありまして手紙を書きました。わたくしは今貴女の後任として満州国の皇后に就任しました。 

 初公務として満州国では平民の独身女性を招待して舞踏会を行う予定です。ドレスは全て新着する予定です。宜しければ婉容皇后様にデザインして頂きたいのですが、お願いできますか?

     1938年2月10日 愛新覚羅敏麗 」


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