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戴冠式

 ここは上海港町。大陸は満州国の新皇后誕生のニュースで賑わう中港で船を待つ者が1人。スーツにトレンチコートを羽織り港に立っていた。

「芳子、ここにいたのか?」

その人物は名前を呼ばれると振り返る。

「田中さん、こんなところで何をしてるんですか?」

芳子に声をかけたのは上官の田中だ。

「何って見送りだ。日本に帰るんだろう?」 芳子は日本へ向かう船の到着を待っていたのだ。

「戴冠式はどうした?」

「敏麗が行けって。」

「僕と日本にか?僕を貴方に譲って他の男と結婚だなんて。彼女は何を考えてるんですかね?」

敏麗とは新しい皇后だ。彼女の名前を聞いた途端芳子の機嫌が悪くなる。

「そうイライラするな。俺が来たのは見送りだ。それからほら。」

田中は芳子に一枚の封筒を渡す。 

「船室の中でても読め。」

その時日本行きの船の到着を知らせるアナウンスが流れる。

「僕はこれで行くよ。それから」

芳子は田中の耳元に顔を近づける。

「お見送りありがとうございます。」

耳元で囁くと到着した船に向かって歩いていく。







 時を同じくして皇帝溥儀の住む宮殿の広間では新皇后との結婚式兼戴冠式が行われていた。

皇后になった敏麗は赤地に金の刺繍の入った旗服に白蘭の髪飾りを付けながら夫である溥儀の隣に立つ。これが大陸の伝統的な婚礼衣装である。溥儀が敏麗の左手の薬指に嵌める。続いて新しい巫女である舞蘭が部下を連れてやってくる。

舞蘭が参列客に一礼すると玉ぐしを片手に舞を舞う。建国式の敏麗はように。

舞が終わると部下が持っている王冠を敏麗の頭上に被せる。参列客からは拍手が起きる。敏麗は新皇后として承認されたのだ。

 その夜王宮の広間で祝賀会(レセプション)が行われた。関東軍の上層部の人や大陸内で会社を経営する富裕層の日本人の姿もあった。

敏麗は赤い端服から白いドレスに着替え皇帝と共に玉座に座っている。

「敏麗皇后様」 

1組の夫妻が敏麗の元にやってきた。

「鈴花?!」

妻の方に目をやる。彼女は以前芳子の家で召使いをしていた鈴花であった。彼女は満蘭を卒業生した後日本人のホテル経営者と結婚した。

「お久しぶりですわ。敏麗様。」

「敏麗様なんておやめになって。貴女は今まで通り敏麗で構わないわ。」

「はい、敏麗さん。」

「そうだわ、舞蘭にはお会いになって?」

敏麗が舞蘭の姿を探そうと辺りを見回す。その時だ。

「敏麗様、皇后就任おめでとうございます。」  

1人の日本軍の男が敏麗に挨拶に来た。彼は大島と名乗った。

「そこの君、」

大島は通りかかったメイドの少女を呼び止める。

「はい?」

少女の持つトレイからワイングラスを2つ取ると1つは敏麗に渡す。

「皇后様一杯いかがですか?」

「ありがとうございます。頂きますわ。」

敏麗が大島とグラスをかかげ乾杯し口にワインを口に入れようとした時

「駄目!!」

鈴花が敏麗の手からワインを取り上げ床に放り投げる。

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