敏麗の決断
「敏麗様、敏麗様」
敏麗が目を覚ますとそこは軍の訓練所の医務室だった。
「舞蘭?」
傍らには舞蘭がいた。
「良かったです。無事に目が覚めて。」
「舞蘭、どうして貴女がここに?」
「川島先生が知らせてくれたのです。」
自分は街中でデモを起こした学生と対峙していたのだ。その中に瑛林がいて彼らの仲間に加わった。
(確か素行の悪い旧友に唆されてそれから)
敏麗は自身の記憶を掘り起こす。
「川島先生の部下が倒れた敏麗様をここまで運んできてくれたのです。」
「わたくしが倒れた?」
敏麗は瑛林が髪を切って自分よりデモの仲間を選んだところまでしか記憶にない。
「はい、でも無事で良かったです。」
「舞蘭、わたくしの鏡と鈴はあるかしら?」
「宮殿になら。」
敏麗は舞蘭に取ってきてほしいと頼む。
「分かりました。」
「ありがとう。」
舞蘭が医務室戻ってきたのは1時間後のことだった。
「敏麗様、こちらで宜しいでしょうか?」
舞蘭は鞄から鏡と鈴を取り出す。
「いいわ。ありがとう。」
敏麗は起き上がり壁に掛かっている絵を外すと代わりに鏡を掛ける。予言はここでやるつもりだ。鏡の前に立つと敏麗は鈴をシャンシャンと鳴らしながら舞を踊る。
「瑛林」
鏡には瑛林の姿が見えた。短髪にみすぼらしい姿で銃を手に持ち野山を歩いている。月乃や玉李も一緒だ。
「いたぞ!!」
彼らは日本兵に包囲され一戦を交える。
敏麗は再び舞う。場面は代わり上海の街中だ。
「芳子様!!」
敏麗はその場に膝をつく。
「敏麗様?!」
舞蘭が支え起こしてくれる。
「ありがとう。大丈夫よ。」
「敏麗様、鏡に何が映ったのですか?」
舞蘭には鏡の中は見えず舞を踊る敏麗とそれを見ている自分の姿しか見えなかった。
「舞蘭、今すぐ田中中佐の元へ行くわ。」
敏麗が田中のいる執務室に入ると芳子がいた。
「敏麗、今は大事な話の最中だ。」
「田中中佐、こちらも大事な話がございます。新しい皇后の事で。」
「何だって?いい候補でもあるのか?」
「はい、わたくし音敏麗でございます。」
敏麗は自らが皇后に名乗り出る。
『何だって?!』
芳子と田中が口を揃えて尋ねる。
「わたくしが次期満州国の皇后になると申し上げました。」
「満蘭の新入生はどうなったんだ?」
田中が尋ねる。
「あの娘はもう駄目ですわ。わたくし達の敵になりました。」
「だけど敏麗、お前は宮中巫女だ。誰が宮中の行事事を取り仕切るんだ?」
「田中中佐、それについては後任が降りますわ。」
「失礼致します。」
部屋に舞蘭が入ってきた。
「彼女ですわ。」
舞蘭は田中に会釈する。
「そしてわたくしが即位したあかつきにはもう1つ。」
今度は芳子と方を向く。
「川島芳子、貴女に国外追放処分を言い渡す
。」




