学生達の反乱
「月乃、早く!!」
「瑛林、そんなに急がないで。」
ここは北京。月乃と瑛林は街の広場にやって来た。彼女達の周りには同年代の若者が集まっている。
「そろそれね。」
「瑛林ったら。」
広場に設置された壇上には1人の青年が立つ。
「諸君、私が今日ここにやって来たのは他でもない。皆に知ってもらいたいのだ。今大陸で何が起こっているのか。」
「月乃、あなたのお兄さん昨日よりも随分気合いが入っているわね。」
壇上の青年は月乃の兄玉李である。昨日も兄は大学の講堂で演説を行っていた。月乃に連れられて講堂へ向かった。玉李の演説の虜になった瑛林は月乃に頼んで今日も聞きに来たのだ。
「大陸での日本人の横暴は見るに絶えない!!ここは誰の国だ?」
玉李は群衆に問いかける。
「中国人よ!!」
瑛林は立ち上がり問いかけに答える。
群衆達の視線が一気に瑛林に向けられる。
「この土地は私達中国人の物よ!!」
「そうよ!!ここは私達の土地。」
「彼女の言う通りだ!!ここは日本人の土地なんかじゃない!!」
群衆は皆口々に瑛林に賛同する。
「では我々はどうする?」
再び玉李が問いかける。
「土地を取り戻そう!!」
「どうやって?」
「日本軍を大陸から追い出そう!!」
「そうだ!!戦おう!!」
玉李に続き皆が戦いの意志を示した時。
「瑛林!!」
瑛林を呼ぶ声がした。
「お姉様」
純白な巫女装束姿の敏麗だった。
「瑛林、あの人確か入学式で。」
「私のお姉様よ。月乃」
(月乃?)
それは敏麗が満蘭で生徒から聞いた名前だ。瑛林の口からも以前その名を聞いたことがある。
敏麗は舞蘭に近づく。
「貴女が月乃?」
「はい、そうです。」
ピシッ!!
月乃の頬にビンタが走る。群衆達はざわつきはじめる。
「貴女ね?わたくしの妹を悪い道に誘おうとするのは。」
「待ってお姉様!!」
止めに入る瑛林。
「お姉様、私がお願いしたんです。デモに連れて行ってほしいと。月乃は何も悪くないんです。」
「瑛林、よくお聞きなさい。貴女は満蘭を卒業したらこの国の皇后になるのよ。民と触れ合う事も大切だけど宮中で必要な事を学ばなければならないの。こんな事をしている時間はないのよ。」
敏麗が次期皇后に推薦したのは瑛林だった。彼女は自分の妹を宮中に入れ王族とのパイプにしようとしたのだ。
「お姉様、皇后なんて私聞いてません。」
瑛林は首を横に振る。
「何が不満なの?皇后なんて名誉な事じゃない。」
「お姉様は横暴過ぎます。」
「皇后になれば華やかな生活が送れるのよ。」
「日本軍に撃たれて死んでいく人達がいる中でですか?私は彼らと共に日本軍を打ち倒します。」
「駄目よ!!女の子が戦うなんて。危険だわ。」
「お姉様の好きな川島先生だって女ですよ。」
「芳子様は別だわ。断髪して男として生きる決意をしたのだから。」
「そう。」
瑛林は納得してくれたのか。敏麗は安堵するが
「月乃、鋏ある?」
「ええ」
月乃は筆箱から鋏を取り出す。それを受けとる瑛林。
「君、何してるんだ?!」
周りの群衆が瑛林に問う。しかし瑛林は答えずに自身の髪を切り続ける。




