瑛林の失踪
敏麗が巫女達と舞の稽古をしていたとき
「失礼致します。」
1人の軍人が稽古場へとやって来た。彼は宮中の護衛だ。
「敏麗様に面会人がございます。」
「わたくしに?今行くわ。」
敏麗は舞の稽古は舞蘭にお願いして軍人と共に応接間へと向かう。
「失礼致します。敏麗様を連れてきました。」
軍人が扉を開け敏麗が中へ入る。
「敏麗ちゃん。」
面会人というのは軍服姿の芳子であった。
「芳子様、今日は軍の本部で乗馬訓練では?」
芳子は満蘭で教師の仕事がない日は軍の訓練所で指導にもあたっている。
「座ってくれ。」
敏麗が着席すると軍人は失礼致します。と言って部屋を出ていく。
「単刀直入に聞く。瑛林ちゃん家にいるか?」
「分かりませんわ。昨日今日と宮中務めでしたもの。」
連日で仕事がある時は敏麗は宮中にある宿舎に泊まっている。家に帰るのは非番の前日ぐらいだ。
「実は2日前瑛林ちゃんが授業中に倒れて保健室に運んだ。」
芳子は授業があるからと言って保健室を出たがその後様子を見に行ったが彼女の姿はなかったという。
「翌日も学校に来てなかったんだ。敏麗ちゃん、何か知らないか?」
「わたくしは何も聞いていないわ。だけどあの娘がそんなことするかしら?」
瑛林はどんなに習い事で疲れていても学校はしっかり行っている。
「芳子様、学校に外部の人間は立ち入りはどうしてますか?もしかしたら誘拐の可能性もありますわ。」
瑛林は敏麗の妹だというのは学校関係者は周知の上だ。身代金目的だけでなく日本人を良く思わない中国人の仕業ということも考えられる。
「敏麗ちゃんそれはない。」
芳子が否定する。
「4年前にどこかの霊能者を無断で引き入れた生徒がいてそれ以来守衛を置くことにした。不審な人物がいれば守衛が気付いて止めるだろう。」
どこかの霊能者とは敏麗のことだ。
敏麗は心当たりのある場所を探しに行くことにした。芳子も訓練が終わったら合流すると言っていた。
まず最初に向かったのは瑛林の通う満蘭女学校だ。
「あの方敏麗様じゃない?」
女学生達が敏麗に視線を向ける。敏麗は毎年入学式と卒業式に呼ばれ舞を披露している。生徒達は皆敏麗の事を知っているのだ。
「敏麗様、本日はどうされましたの?」
女学生の1人が声をかける。
「今日は妹の事で。」
「1年生の瑛林ちゃんの事ですか?」
敏麗が瑛林の姉ということは学校中誰もが知っている。
「ええ、あの娘昨日から家にも帰ってないようで。」
「私あの娘見ましたよ。」
隣にいた生徒が声をあげる。
「確か同じ級の娘と一緒でした。確か月乃でしたっけ?制服着て来ないし授業も脱け出したりしてるみたいで浮いてる娘なんです。」




