満蘭の問題児
「目覚めたか?」
瑛林は目を覚ますと保健室のベッドの上にいた。
「川島先生」
ベッドの傍らにいたのは芳子だった。瑛林はダンスの授業中立ち眩みでそのまま意識を失った。芳子が保健室まで運んできてくれたのだ。
「こないだもだが無理してないか?」
瑛林はうつむいたまま何も言わない。
「僕で良ければ力になりたい。瑛林ちゃんは僕の妹のようなものだ。」
「お姉様が」
瑛林が話そうとした時授業開始を告げるベルが鳴った。
「ごめんね。もう行かなくちゃ。話はまた聞くよ。」
芳子が保健室から去っていく。
「あの先生行った?」
芳子が出ていくと同時に隣のベッドのカーテンが開く。
「月乃さん!!」
隣のベッドから月乃が現れた。
「なんでいるの?」
「だるいから授業休んでた。」
「だるいって何考えてるのよ?」
「ぼいこっと。だってダンスやフランス語なんて必要ないもの。」
月乃はたまに教室から姿を消す時がある。こうして保健室にいるのだろうか?
「貴女無理しすぎよ。顔にかいてあるわ辛いって。あの宮中巫女のお姉様と喧嘩でもしたの?」
瑛林が敏麗の妹だということは生徒も教師も皆知っている。瑛林は月乃の問いかけに何も返さない。
「言いたくないならいいわ。」
月乃は立ち上がると瑛林の手を取る。
「ちょっと出かけない?」
「えっ?!」
「気分転換。気持ちいいよ。」
瑛林は月乃に連れられこっそりと学校を抜け出す。脱獄する囚人のようなすりるを味わっている気分だ。
「乗って」
月乃は校舎裏に自転車を置いていた。彼女はいつも自転車で通学しているのだ。月乃が股がると瑛林は自転車の荷台に腰掛ける。
「しっかり捕まってないと振り落とされるよ。」
瑛林は月乃の肩に捕まる。自転車は速度をあげて進んでいく。
「着いたよ。」
月乃が自転車で連れてきたのは海岸だ。自転車を止めると浜辺に横たわる。
「貴女もやって見なさい。気持ちいいよ。」
「だけど制服が。」
瑛林が着ている制服はお気に入りのピンク色だ。汚すのに躊躇っている。
「余計な事気にしすぎなのよ。優等生は。」
「貴女が問題ばかり起こしてるんでしょ。」
「口ばかり達者なんだから。」
月乃は横たわったまま瑛林の腕を引く。瑛林も月乃と同じ体制になる。
「どう?」
瑛林の周りを海風が吹き付ける。
「気持ちいい。学校とか習い事とかどうでも良くなる。」
「習い事?」
「お姉様が勧めてくるの。フランス語にテーブルマナー、お茶にお華。学校終わって家に帰ると何らかの先生が待ってるの。楽しくないわけじゃないけどたまには自由な時間が欲しいわ。それなのにお姉様は私に着付けを習わせようとするのよ。ってあれ?」
瑛林はいつのまにか敏麗の愚痴をこぼしていた。
「ねえ、今から私の兄に会いに行かない?」
月乃は立ち上がり新しい提案をする。




