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婉容の道

「芳子、敏麗!!」

満蘭女学校設立から4年が経った1937年。

芳子と敏麗が皇后婉容の部屋に呼ばれていた。

「さあ、お座りになって。」

婉容に勧められ2人はソファーに腰を下ろす。

「皇后様、本日はいかがされましたか?またヨーロッパからお菓子が届いたのですか?」

婉容が2人を呼ぶ時はイギリスから取り寄せたお菓子が届いてお茶会をしたいときです。

「ええ、勿論それもございますわ。」

メイドが3人分のカップに紅茶を入れてテーブルに運んでくる。

「ありがとう。敏麗、芳子こちらはロンドンから取り寄せましたのよ。そしてこちらも。パリの新しいお店のですの。」

続いてメイドがケーキを乗せたカートを運んできた。こちらは3人分ではなくいくつも置いてある。

「さあ、好きなものをお選びになって。」

苺のショートケーキにタルト、ティラミスにアップルパイ、チーズケーキと種類は豊富である。

「わたくしは苺タルトにするわ。」

「僕はティラミスで。」

敏麗も芳子も自分の気に入ったものを選ぶ。

「今日は敏麗と芳子をお呼びしたのはお茶会だけではないの。」

婉容が改まって口を開く。呼び鈴を鳴らすとメイドがやってくる。

「あれをお願いね。」

「かしこまりました。」

メイドは婉容の寝室に向かうとドレスがかかったハンガーラックを引いてやってきた。

「こちらは私がデザインしたものですの。」

ドレスは19世紀イギリスで流行ったバッスルスタイルや刺繍の入ったチャイナドレスもある。

中にはスイスの民族衣装のようなエプロンドレスもある。満蘭女学校の下働きの女性達の制服に似ている。それも婉容がデザインしてくれたのだ。

「私パリに行くことにしたの。服飾の専門学校へ留学するの。」

婉容のデザインした制服は生徒にも勿論下働きの女性達にも大人気。見栄えの華やかさだけでなく機能も重視していた。フランス人の外国語教師が気に入り彼女の友人の夫が経営する専門学校を勧めたのだ。

「これは私からの選別。お好きなのを1着いかが?勿論鈴花ちゃんのもよ。」

「皇后様、留学の間のご公務はどうされるおつもりでしょうか?」

「実は私帰国の予定はありませんの。」

「嘘?!」

婉容の発言に芳子もは驚きを隠せない。婉容は王室を離れてパリに永住するという。

「陛下とは既に離婚調停も済んでますわ。敏麗さんも仲介に入って下さったの。」

最初に相談されたのは敏麗だ。敏麗は鏡で婉容の未来を予言した。ファッションデザイナーとして活躍する婉容の姿を見てパリ行きを進言した。


「失礼致します。」


その時巫女装束の舞蘭がやってきた。彼女は満蘭女学校卒業後宮中入りし敏麗の片腕として働いている。

「敏麗様、陛下がお呼びです。」 

「ありがとう。今行くわ。」

敏麗が舞蘭に連れられて向かったのは祈祷で使っている部屋である。

「陛下、敏麗様を連れて参りました。」

部屋には溥儀の他にも田中がいた。吉岡は敏麗暗殺未遂で失脚。田中が後任として溥儀の側近になった。最初は婉容の王室離脱に反対していたが敏麗の進言で納得した。

「陛下、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「要件なんて1つだろう。」

代わりに田中が答える。婉容の離脱により新しい皇后が必要なのだ。

「それでしたらご心配ありません。わたくし1名当てがございます。」

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