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霊の正体

「私が敏麗さんの元でですか?」

舞蘭は敏麗の申し出に耳を疑った。

「敏麗さんの元であの舞を教えて頂けるのですか?」

入学式の時に敏麗の舞に魅了されたのだ。

「ええ、貴女が望むのなら。」

舞蘭が敏麗に是非と返事をしようとした時


「敏麗ちゃん」


目の前に敏麗の愛しき人が立っていた。

「僕の生徒を弟子に誘う前にまず言う事あるんじゃないのか?」

「芳子様、なぜこちらに?」

「僕が勤めてる学校だ。いるに決まってるだろう。逆になぜ君がいるんだ?」

芳子の傍らには鈴花がいる。

 霊を退治すると敏麗と舞蘭はその場で倒れ込んでしまった。途方にくれた鈴花は急いで芳子を呼びに行き二人を保健室まで運んだのだ。

「ありがとう。鈴花ちゃん、芳子様。」

「まずどうして忍び込んだりしたんだ?」

「それは」

「私がお願いしました。」

敏麗が答えるよりも早く舞蘭が答える。  

「以前ダンスの授業の時鈴花さんを突き飛ばす女の姿が見えて」

(あの時か)

芳子には心当りがあったようだ。

「舞蘭ちゃん、僕は徐霊や侵入に対して責めてるんではない。敏麗ちゃんどうして僕に相談してくれなかったんだ?」

敏麗は一瞬俯くと口を開く。

「ごめんなさい。芳子様に話せば止められると思って。」

「止めはしないよ。それが君の仕事だろう。だけど僕に一言話していれば校内立ち入り許可できたかもしれないだろう。敏麗ちゃんの役に立ちたいんだ。それに君を失いたくない。」

芳子は敏麗の手を握る。

「舞蘭さん」

その様子を見ていた鈴花は舞蘭に声をかけ保健室から出ていく。綾も舞蘭の後を着いていく。

「ちょっと鈴花さん、どうなさったの?今日は学校お休みなんだから急いで帰って仕度する必要もないじゃない。」

「舞蘭さんったら鈍いわね。せっかくいい雰囲気だったのだから二人にして差し上げたのよ。」

「敏麗さんと川島先生ってそういう関係でしたの?」

「そうよ。」 

舞蘭は気付いていなかったようだ。


「舞蘭ちゃん」  


廊下を歩く鈴花と舞蘭に背後から敏麗が声をかけてきた。

「敏麗さん」

「わたくし1つ聞きたいわ。貴女が広間で唱えていたお経どこで覚えてきたものですの?」

「私の家族がお世話になっている日本人の僧侶が唱えていました。」

舞蘭家族は日本人僧侶のいる寺院と交流があり祈祷や親族の葬儀で寺院を訪れた事がある。

「あの女の霊は日本人の霊だったということかしら?でもどうしてそれが?」

「私もよく分かってないのです。あの時は無我夢中で。」

舞蘭にとって読経は一か八かの賭けであった。

「ありがとう。舞蘭ちゃんのおかげで助かったわ。」

「あの、敏麗さん。敏麗さんのところで巫女の修行しても宜しいですか?」

「ええ、勿論ですわ。宜しくね。」



 帰りは芳子の馬車で舞蘭を送っていった。

鈴花は疲れたのか眠っている。

「芳子様、昨晩対峙した霊なのですが舞蘭ちゃんが日本人から聞いたお経が聞いたおかげで徐霊できました。あの霊は日本人の可能性があります。」

満州国が建国されて1年。未だに建国に反対している中国人の話は耳にしている。

「もしかしたら中国人に殺された日本人の霊かも知れませんわ。」

「ありがとう。気にしておくよ。」

芳子は敏麗の方を向いてお礼を言うが眠っている。徐霊で体力を使いきったのだろう。

「だけどくれぐれも無理はしないでくれ。」

芳子は敏麗の唇に口付ける。

次回からまた連載スタートです。

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