広間に現れるもの
「鈴花ちゃん、急いで芳子様と田中中佐を呼んできて!!」
敏麗は鈴花にお願いする。
「敏麗さん、相手は幽霊です。だから敏麗さんにお願いしたのではないですか。」
「舞蘭ちゃん、入学式の時にその霊はいた?」
「いえ、いませんでした。」
「やっぱり。相手は幽霊じゃないかもしれないわ。」
敏麗はずっと違和感を感じていた。広間には入学式の時にも足を踏み入れている。しかしその時はまだ霊の気配は感じなかった。もしかしたら満州国建国に反対している国民党が霊を装おって女学校を襲撃しているのではないか。婉容を護送した時のように。
「急いで!!」
「はい。」
鈴花が広間を出ようとしたとき
バタン
突然広間のドアが閉まる。
「誰よ?いたずら?」
鈴花が取っ手を引くが扉はびくともしない。
「きゃあ!!」
「舞蘭ちゃん上!!」
シャンデリアが天井から落ちてきた。
「お姉ちゃん達逃げて!!」
綾が敏麗と舞蘭の二人を突き飛ばす。
「ちっ外したか。」
どこからか低い女の声が聞こえてきた。目の前に黒髪の女が立っていた。敏麗は塩を女目掛けて投げる。
「効いてないなんて?」
塩は黒く変色していく。女学生の頃廃墟で遭遇した霊に投げた時のように。
「うっ」
綾が女に首を閉められる。
「苦しい」
綾は気を失ってしまう。霊でも対抗できない霊というのはよほど力を持っているのだろうか。
「貴女は誰?」
敏麗は問いかけるが女は答えない。
「致し方ありませんわ。」
敏麗は鈴を手にして舞う。入学式の時のように。敏麗が一挙一動する度に鈴がシャンシャンと音を鳴らす。
「きゃあ!!」
鈴は突き飛ばされる。敏感が飛ばされた鈴を取りに行こうとするが
「来ないで!!」
「鈴花ちゃん?!」
女は鈴花の元へと歩いていく。塩で応戦しようとするが残りがもうない。
弾き飛ばされた鈴を手に取り鈴花の元へ向かおうとするが
「うっ」
女が鈴花の首を締める。
「たすけぇてぇ びんれぃさん 」
鈴花は弱々しい声で敏麗に助けを求める。
再び鈴を手に舞を踊り始める。
シャン シャン
鈴の音が広間に響き渡る。しかし女に変化は見えない。
(徐霊できない?!)
「びんれぃさぁん」
鈴花は敏麗に助けを求めている。その時
「舞蘭ちゃん?!」
舞蘭がお経を唱えている。
「うっっ」
女は苦しみだし鈴花の首から手を離していく。舞蘭のお経が聞いているのか?
「今です、敏麗さん。」
舞蘭の合図に敏麗は再び鈴を手に舞を始める。
「ぎゃあ!!」
女は断末魔を上げながら消滅した。
「敏麗さん、敏麗さん。」
敏麗は自分の名前を呼ばれ意識を取り戻す。
目を開けるとベッドの上だった。隣のベッドには舞蘭が横たわっている。
「貴女のおかげで助かったわ。ありがとう。」
敏麗は舞蘭にお礼を言う。
「だけどどうしてお経を?」
舞蘭は幼い頃地元の寺院で勉強を教わっていおり祈祷にも参加していた。僧侶が唱えているのを聞いて覚えたのだ。
「それにしても貴女度胸があるわ。良かったらわたくしの元で修行してみる気はなくて?」




